2018・No.1283
月刊保団連 12
PDF内の写真・文章の無断転載を固く禁じます。
「道」
災害時、人は「情報」だけでは動かない
元吉忠寛
特集
睡眠と医療
睡眠障害の鑑別診断と治療
 ─薬物療法を中心に─

●睡眠障害は7系統、約80種類ほどに分類される。各睡眠障害に特有の治療法があり、的確な診断のもとに治療設計を行う必要があるが、多くの睡眠障害では不眠症状(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難)、過眠症状(日中の眠気)が共通して認められるため、鑑別診断を行うことは必ずしも容易ではない。本稿では、代表的な睡眠障害の診断の流れ、主要症状、および治療について概説する。

三島和夫
睡眠障害が身体に影響を及ぼすメカニズム
●ヒトの睡眠は、生体に備わった生物時計機構と恒常性維持機構という2つのシステムが相互に協調して、良質な睡眠を取れるように調整されている。現代社会においては、生物時計と生活リズムの不一致(脱同調)により生じる睡眠障害が正常な生理機能を破綻させ、心身の健康に悪影響を及ぼすことが明らかになってきた。睡眠障害を予防するには、睡眠に深く関わる生物時計の性質を理解し、生物時計の特性を考慮した生活リズムおよび生活環境を整えることが重要である。
山仲勇二郎
睡眠呼吸障害に対する歯科的アプローチ
●閉塞型睡眠時無呼吸症の発症に関与する要因として、肥満、小下顎、加齢、扁桃肥大が挙げられる。治療法は、経鼻的持続陽圧呼吸療法や口腔内装置などの保存療法が主体となるが、顎骨が頭蓋に対して後方位にある患者では、上下顎骨前方移動術が根治的な治療法に成り得ると考える。閉塞型睡眠時無呼吸症に対する予防戦略としては、小児期からよく咀嚼して顎の発育を促進し、顎発育異常を誘発する因子を排除して、正常な咀嚼機能を維持し肥満を防止することが有効と考える。
小林正治
働き方改革と睡眠不足の解消

●日本人の睡眠が不足し疲れがたまる大きな原因は、長時間過重労働にある。働き方改革で成立した改正労働基準法では残業上限が原則月45時間となった。限界もあるが、これらも活用し、医療現場も含め働く場から長時間過重労働の是正を進めていきたい。医師の過労はとくに深刻で、過労死も後を絶たない。医師自身の命と健康のためにも、患者の安全のためにも対策が急がれる。その際には、マクロ要因として、医師不足と診療報酬抑制の問題にも目を向ける必要がある。

北 健一
睡眠障害関連交通事故の特性と予防

●交通死亡事故につながる原因は漫然運転が最も多く、その中には居眠り運転が含まれる。居眠り運転の主要原因である睡眠障害関連の交通事故を低減させるには、まずは運転者の睡眠障害を早期に発見して介入し、重度の睡眠障害患者が運転を控えるようにすることが重要である。自覚症状が乏しい患者もいるため、事業者による職業運転者に対してのOSA検診の義務化、車両の安全装置の向上や、社会をあげての対応・対策などを行い事故の低減に努める必要がある。

森口真吾、一杉正仁
論考
高薬価対策としてのアカデミアの役割

◆わが国でも、5000万円を超える白血病治療薬が、薬事承認される可能性が出てきた。バイオ新薬を中心とした超高額薬剤への対応は、わが国の保険制度の根幹に関わる最重要課題である。このような高薬価は、製造価格を反映したものではなく、製薬企業が投資ファンド化し、マネーゲームの結果もたらされたものと見られる。諸外国では、薬剤の開発を企業に委ねるのではなく、アカデミアが新薬を開発し、安価な薬剤を自施設の患者に提供することができる。新薬の高額化に対するひとつの処方箋である。
小島勢二
子どもの精神発達と社会

第3回 発達の道筋と発達のおくれ

◆乳児の認知世界は直接的な感覚世界で混沌性が高いが、おとなとの関わりを通した探索活動によって「意味」や「約束」で秩序づけられた認識世界へと発展する。その関わりを支えるのが「愛着(アタッチメント)」である。個体差として愛着力が弱く関わりの発達が遅れれば、社会性の遅れだけでなく、感覚世界の整理や秩序づけにも遅れが生じ、それが感覚過敏として現れる。
滝川一廣
診療研究
口腔がん患者の顎補綴による顎口腔機能回復
─ 20年間の経験から(3)
●口腔衛生環境を整え、咀嚼機能が回復したことにより、同じ患者であることを疑ってしまうほどの変わりように、私どもスタッフや施設の看護師も驚愕した。生理学、細菌学、免疫学的な点からも大変興味深い症例である。
●口から食することの大切さと、歯科医療の果たす役割の大きさを改めて考えさせられる。
木村利明
アムロジピンによる口唇腫脹および歯肉肥大
浮舟宣武、藤原秀臣
文化
まなざしの力
第12回  涙の理由

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 460
税務調査の終了
益子良一
雇用問題Q&A 204
所定労働時間内なのに従業員が残業代を請求してきた
曽我 浩
会員
文化・交流 各地の文化活動 
 きまっし!北陸〜 輪島温泉と金沢歴史の旅
緒方一昌
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
総目次
VOICE

─10月号を読んで─

詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内