2019・No.1291
月刊保団連 3
PDF内の写真・文章の無断転載を固く禁じます。
「道」
万博開催と大阪経済
——夢にすがってはならない
桜田照雄
特集
医師・歯科医師の
ストレスとメンタルヘルス
医師のストレス・メンタルヘルスの現状

●2008年6月、日本医師会内に「勤務医の健康支援に関するプロジェクト委員会」を設置していただき、病院勤務医のストレス状況を把握するための調査を実施した。その結果、12人に1人が抑うつ状態であり、50人に1人は中等度以上のうつ病と考えられた。
●これらの結果を受けて、日本医師会その他の団体はさまざまな対応をしたが、 2015年にも同じアンケート調査をしたところ、ほとんどの健康にかかる項目で改善がみられたが、引き続きの勤務環境改善が望まれる。

保坂 隆
感情労働とプロフェッショナリズム
医者がムカついてはダメなのか?

●感情のコントロールが不可欠な職業を感情労働と呼ぶが、現代においては医師の仕事も感情労働に相当する。医療現場で発生する陰性感情は、「あってはならないもの」として規制されるため、表出されることなく隠滅されてしまう。感情管理が徹底して、常に「偽りの自分」を演じ続けていると、「本当の自分」の感情がわからなくなり、バーンアウトやメンタル不調が発生する。それを避けるには、自己洞察(self-awareness)により、自分の心と向き合い、医師特有の認知の歪みに気づき、他人からの否定的なジャッジメントを手放す心の姿勢が大切である。

宮崎 仁
医師の自殺の特徴およびその予防
——産業保健活動を介して
●医師の自殺率は、男女とも一般人口の自殺率より高い。警視庁統計手法が2007年に変更となり、医師のみの自殺者数は不明であるが、一般人口の自殺者数の減少が著明になった後も医療保健従事者の自殺は減少傾向が見られない。過重労働対策・メンタルヘルス対策は自殺予防対策でもあるが、医療機関は遅れている。最近の働き方改革の中で長時間労働の改善が産業医活動の強化の下に実行されようとしているが、医師は例外となっている。今後、医師も含めた労働者の効果的な自殺予防対策が必須である。
織田 進
歯科医療従事者の「こころ」のケアと歯科医師の自殺予防
●歯科医療従事者は様々な事情で「こころ」にトラブルを抱えてきている可能性があり、新潟県では歯科医師会会員の自殺死亡率が全国平均の数倍となっている。歯科医療従事者は常日頃から「こころ」に重大なトラブルを抱えている可能性が高いことを認識し、種々のトラブルや自身やスタッフの「こころ」の問題に対してはひとりで抱えず、できるだけ早期に専門機関や相談窓口に相談したりして「こころ」の負担を早期に軽減することが重要である。
佐藤圭一
論考
子どもの医療費助成制度を考える
—安易な受診、コンビニ受診は助長されたか—
◆子ども医療費助成制度の助成対象年齢は年々引き上げられ、2017年には「中学生まで」以上を助成対象とする自治体は全体の86%に達する。2002年から2017年までの15年間に医療費全体は12兆円増加したが、0〜19歳の医療費の増加は0.5兆円にとどまっている。レセプト件数は横ばいで推移し、時間外受診件数はむしろ減少傾向にある。医療費助成制度が拡充したからといって、安易な受診、コンビニ受診が助長されるということはなく、ましてや医療費の膨張をまねくこともない。
本田孝也
曖昧な「歯科医業」の定義と弊害(上)
—歯科医師法の改正を—
◆医業は医師でなければなしてはならないと法律で定めている。よって歯科医師は手が出せない。しかし、今の歯科医業は医業をなさなければ成り立たない。
◆歯科診療報酬には医科点数表の準用が多く存在する。歯科医業の進展で医業との垣根は崩れつつある。かと言って歯科医師が医業全般をなせるはずがない。歯科医師は顎口腔に特化した教育を受けているからだ。だが、歯科医師が医業をなすことを法の解釈、通達、通知によって黙認している。これはいびつだ。法律によって担保すべきだ。
横田 晟
診療研究
多剤処方への対応と留意点
—高齢者の医薬品適正使用の指針

・高齢者では薬物動態や薬物反応性が一般成人とは異なり、また複数の併存疾患を治療するために処方された薬剤同士で薬物相互作用が起こりやすいため、薬物有害事象が問題となりやすい。
・ポリファーマシーは多剤併用が問題というよりは、むしろ不適切処方を含むことが問題であり、それを検出するための様々なツールが国内外で利用されている。
・高齢者におけるポリファーマシーの解消や薬物有害事象の最小化のためには、各医療従事者が正しい知識を身に付けた上で積極的な連携を図ることが重要である。

木村丈司
気管内挿管時の口腔内装置について
—歯科と医科の双方への理解のために

2018年の診療報酬改定において、気管内挿管時の歯の損傷を防止するための「口腔内装置」が新たに収載された。しかしこの装置を作製して使用するには歯科領域と麻酔領域の知識および連携を必要とする。そこでそれぞれの診療科の視点からこの装置の有効性を解説し、作成方法を示す。
さらに特殊な配慮を要する障害者に適用する場合の当院独自の工夫を提示する。この装置を手掛けることは、周術期管理をより充実させ、医科歯科連携をさらに良好にするものと考える。

別府孝洋
文化
ビタミン発見物語
第2回 大航海の病 —壊血病とビタミンC—

・大航海時代の西欧では壊血病で死ぬ船員や水兵が続出していた。
・1753年、英国海軍のリンド軍医は新鮮な野菜や果物に「抗壊血病因子」が存在することを発見した。水兵たちはライムの生果汁で壊血病から免れることができるようになったが、一般人への予防対策は遅れた。
・この「抗壊血病因子」は1920年にドラモントによって「ビタミンC 」と命名された。
その後に抽出・結晶化や化学構造の解明がなされ、アスコルビン酸として化学合成にも成功した。

笠原 浩
まなざしの力

第14回 美空ひばり 涙の向こうに

渡辺 考
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
書評
奥村 歩著『ねころんで読める認知症診療「もの忘れ外来」免許皆伝』
濱田俊政
デイヴィッド・S・ギダー、ノア・D・オッペンハイム著『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』
三原龍介
VOICE
—1月号を読んで—
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内