2019・No.1292
月刊保団連 4
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「道」
与えられる休みではなく、自分で決める休みを
西多昌規
特集
「階級化」する社会と働く人々
階級社会化する日本社会
—アンダークラスの登場

●近年、「格差社会」は現代日本を語る上で欠かせない言葉として定着しているが、実は1980年代から格差の拡大は始まっていた。この40年ほどの間に日本社会は大きく変貌しており、もはや、格差という言葉だけでは捉えきれない状況になりつつある。本稿では「階級社会」をキーワードに働く人々を階級ごとに分類し、従来の階級に当てはまらない新たな階級「アンダークラス」が形成されていることを確認するとともに、このままこの階級の拡大を放置することの危険性を述べたい。

橋本健二
「働き方改革」では解決できない労働問題
—「職業の再建」と新しい労働運動のために

●4月から「働き方改革関連法」が施行されるが、これらは労働者の置かれた状況に大きな変化をもたらさないだろう。それどころか、一部ではより長時間労働を蔓延させ、労働者の健康に危険を及ぼす恐れさえある。現在の労働問題を改善するためには、労働市場を規制する力を持った労働運動が誕生し、労使関係を変えていかなければならない。本稿では、労働問題の実態から同法の問題点を指摘するとともに、新たな労働運動のあり方や可能性について検討していきたい。

今野晴貴
働く人々の健康格差を生み出す負のサイクルを断ち切るために
●日本人は健康診断を受ける機会が多いものの、総合健診の有益性に疑問を投げかける報告が出されている。その一方で、英国の減塩キャンペーンや欧州の多くの都市における自転車専用レーンの整備など、環境改善で大きな成果が上げられている。生活習慣や生活習慣病は労働や職業ストレスと強い関連性があるため、一方的に働く人々の自己責任だけに帰することは妥当でない。
健康格差の解消のためには、環境改善とともに健康資源を充実させ、ヘルスプロモーションを強化することが必要である。
服部 真
外国人労働者受け入れ拡大はどのようなインパクトを及ぼすのか
●2018年の臨時国会で、改定出入国管理及び難民認定法等が成立し、今年4月より「特定技能」による外国人労働者の受け入れが始まることになった。本稿では、これまでの外国人労働者受け入れ政策を振り返り、「定住化の阻止」という点で今回の政策が、既存の受け入れと連続性をもつことを指摘する。その上で、「定住化の阻止」政策がもつ意味と、それが外国人労働者と日本社会にもたらす影響について考察する。
熬J 幸
人は何のために働くのか
—ホームレス支援の現場から考える格差解消

●筆者はホームレスの支援を行っていく中で、路上生活を脱出した後も社会的孤立の問題が残ることに気がついた。従来の自立支援は、住宅や就労を確保する「お金」の困窮を解決することばかりに重点が置かれ、「縁」の困窮に対する視点が疎かになっていたのではないだろうか。現在、人々の孤立化が進む時代にあって、改めて「自立」の意味を捉えなおし、従来の問題解決型の支援から、「つながり」に重点を置く伴走型支援に転換する必要がある。

奥田知志
論考
曖昧な「歯科医業」の定義と弊害 (下)
—歯科医師法の改正を—
●医師法により、歯科医師は「医業をなしてはならない」し、医業をなせば「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処」される。
●「歯科医業」は身体の口腔顎顔面を担当する「医業」である。歯科医業は医業に含まれる、と言われることはあるが、法律として歯科医業の範囲を定義したものはない。
●医科・歯科連携の重要性が高まる中、「解釈改正」ではなく、明文改正で歯科医師が医業をなす正当性を担保する必要がある。
横田 晟
診療研究
カラーコンタクトレンズに関する諸問題

・近年コンタクトレンズ、特にカラーコンタクトレンズによる眼障害が多発している。原因としてカラーレンズが粗悪であるという事実があるが、それ以上に入手方法に問題がある。厚労省はレンズ購入時、眼科を受診するよう勧奨してきたが義務化されていないため、誰でも容易にインターネットや雑貨店で購入することができ、そのため眼障害が多発している。医師の処方せんがなくても購入できる現状を改め、眼科医の介在しない販売に対して罰則付きの法律を定める必要があると考える。

辻 俊明
Umamiによる味覚障害・ドライマウス治療
第1回 味覚障害について

“おいしく味わって食べる”ことは人生の大きな喜びであり、そのためには丈夫な歯と顎、そして健全な味覚と唾液が重要である。わが国では、味覚障害者が確実に増加し、その原因のひとつとして唾液分泌の低下(ドライマウス)が知られるようになった。一方、味覚障害およびドライマウスに対する診断と治療は、医科・歯科を問わず十分に普及している現状にはない。本稿では、うま味を用いて味覚障害およびドライマウスを改善する方法について解説する。

笹野高嗣
文化
ビタミン発見物語
第3回 ビタミンAとビタミンD

・ビタミンAは、それが欠乏すると成長停止や夜盲症などの目の機能障害が生じることから、5大栄養素以外の必須微量栄養素として最初に発見された。
・当初は「油溶性A」として単一の物質と考えられていたが、「抗夜盲症因子」以外にも「抗くる病因子」が存在することが明らかにされ、後者はビタミンDと命名された。こうした脂溶性ビタミンについては、現代ではむしろ過剰症が懸念されている。

笠原 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
まなざしの力

第15回 ドナルド・キーン 少年のような、それでいて鋭く

渡辺 考
ドクターのつぶやき川柳 年間大賞2018
〈選者〉 植竹団扇
シリーズ
経営・税務誌上相談 463
消費税増税に対する税制上の減税措置
益子良一
雇用問題 207
患者からの暴力によるケガの治療は健康保険か労災保険か
曽我 浩
書評
服部 真著『働く人のほんとうの健康法 世直し活動は健康にも最高』
大川義弘
櫻井 武著『「こころ」はいかにして生まれるのか』
粥川裕平
VOICE
—2月号を読んで—
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内