●近年、医学教育の基本的考え方・教育手法・評価法が大きく変わってきている。これは医療や社会のあり方、人々の考え方の変化などが背景にある。本稿では医学教育の変遷と現状、今後について概説する。医療に唯一解がないのと同様に、医学教育にも絶対的に正しい方法があるわけではないが、医学教育の現状を知っていただき、医療人が協働して次世代の医療者を育成する契機となれば幸いである。
●プロフェッショナリズムは、一般社会・住民・患者から信頼を得るために医療の専門家(プロフェッショナル)・専門家集団(プロフェッション)が備えるべき資質・価値観・倫理感・態度・一連の行動の総体のことである。プロフェッショナリズムの要素の一つとされる社会的説明責任に特に注目したい。公共の善のために尽くすという社会的目的の意識を備えていることが、激変する日本の医療環境の中では特に求められるであろう。そのためには、医療の最前線で生じている複雑・曖昧な様々な課題に泥臭くも何とか対処していくという省察的実践家としての取り組みが求められる。
●熊本県保険医協会では、4人の役員が熊本大学の全学部1年生を対象とする教養講座「現代社会と地域医療〜医療現場からのメッセージ」の講師を務めている。1997年に始まり、近年は毎年約200人が受講。2018年度から県庁職員も講師に加わり、日本における医療制度、特に地域医療について、医療現場や行政担当者の視点から概観し、現状と問題点等を学んでいる。
●鹿児島県保険医協会では会長が鹿児島大学医学部で、私が同歯学部で年に1回、学生を対象にわが国の医療制度に関する講義をしている。
●医学部・歯学部には医療制度に特化したカリキュラムはなく、また卒業後の生活に直結する内容であるだけに、学生には非常に好評である。
●本稿では講義の後に提出してもらう学生の感想やレポートを中心に報告する。彼らの素直な感想や意見に触れていただきたい。
●2018年末、厚生労働省の毎月勤労統計調査についての不正が明らかになり、この統計による数字がアベノミクスの成果を示すものとして大々的に報道されてきただけに、大きな衝撃が広がった。さらにそこから派生して、改定を隠れ蓑にしたGDPのかさ上げについても注目が集まっている。本稿では、統計調査の不正とGDPかさ上げによって何がどのように「偽装」されたのかを述べるとともに、アベノミクスの失敗を明らかにする。
前回は味覚障害と唾液の深い関係について述べた。唾液は味覚に限らず、摂食、咀嚼、嚥下、発音など口腔機能の維持に必要不可欠である。近年、唾液分泌低下による様々な症状を訴える患者は増加しているが、ドライマウスに対する的確な診断と治療を担う専門医は少ない。唾液分泌をつかさどる唾液腺として、大唾液腺がよく知られているが、ドライマウス症状には大唾液腺からの分泌量よりも小唾液腺からの分泌量の方が強く関わる。小唾液腺からの唾液分泌を促進させる方法として、うま味刺激を用いた味覚−唾液分泌反射の活用が有効である。
上下顎の臼歯部歯牙の疼痛や違和感が主症状であり、歯科(当院)を受診したのち、脳神経外科と連携して治療を行った三叉神経痛症例について報告する。日常の歯科診療では、歯髄炎や歯周炎といった拍動性疼痛を起こす歯疾とよく遭遇するが、三叉神経痛のような歯疾が原因でない疼痛も念頭に置いておく必要がある。
・ ビタミンEはラットの「抗不妊因子」として発見され、第3の油溶性ビタミンと認められたが、当初はヒトにおける有用性に疑問が持たれていた。しかし、生体内において強力な抗酸化作用を発揮して、細胞の膜構造の安定化、代謝によって生成されるフリーラジカルの除去などに働くことが明らかになった。
・ 第4の油溶性ビタミンは血液凝固に関与することからビタミンKと命名された。この発見をきっかけに血液凝固の複雑なメカニズムの解明が進んだ。さらに、拮抗因子の発見がワルファリンその他の血液凝固阻止剤の開発につながった。