2019・No.1294
月刊保団連 6
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「道」
男性の家事・育児は本人にも社会にもメリット
藤田結子
特集
食と水の安全を守るために
タネは誰のものか
―種子法廃止、種苗法運用、農薬残留量の緩和

●コメ、麦、大豆を主要な農産物として位置付け、これらの種子の管理を各都道府県に義務付けてきた「種子法」が2018年4月に廃止された。公共の種子を安価で安定的に提供してきたこの仕組みがなくなれば、農家は従来の伝統的な固有種ではなく、民間企業が開発したF1種子を高い値段で買わなければならなくなる。さらに、農薬残留量の規制が大幅に緩和され、種苗法の改正も視野に入り始め、多国籍企業が参入する道が大きく開かれようとしている。本稿では、私たち日本人の食の決定権が脅かされつつある状況について述べた上で、いかに食の安全を守っていけば良いのかを考える。

山田正彦
インタビュー 知らぬ間に脅かされる食と水の安全

●水道事業民営化、種子法廃止、農薬残留基準の緩和、改正漁業法―。私たちの生活の基礎をなしている食と水に関するルールが次々と変えられ、それらに営利企業が参入する上でのハードルが大幅に下げられている。これまで、一定の公共性が社会に広く認知されてきたものを、経済効率を優先する価値観に委ねて良いのか。また、次々と法案が通されていく中で、もはや私たちにはなす術すべもないのか。2018年『日本が売られる』(幻冬舎新書)を出版し、大きな注目を集めている国際ジャーナリストの堤未果さんに聞いた。(聞き手・編集部)

堤 未果
遺伝子組み換え農作物の侵入にいかに備えるか
 ―米国内の動きから
●遺伝子組み換え農作物の安全性を考えるときに、その収穫の際に使用される除草剤の存在を無視することはできない。その主成分である化学薬品「グリホサート」はがんを含め、様々な病気の原因となる可能性が指摘されているため、米国では遺伝子組み換え農作物の安全性を疑問視する母親たちの運動が広がりつつある。有機農産物はグリホサート等農薬を含まず、農薬を含めた毒物のデトックス効果があることも分かってきていることから米国では今、有機農産物ブームが起きている。
吉田太郎
水をめぐる世界の潮流と日本の水道事業の行方
●改正水道法が、「官民連携の推進」が最大の論点となる中で、不十分な議論のまま2018年12月6日に成立した。水をめぐる世界の潮流は、「再公営化」の動きも活発化し、生活に必要なものを自律的に管理することを求める新しい社会運動の様相を示している。国難ともいえる水道事業の課題を解決するためには、コンセッション方式の単純なメリット・デメリット論議に拘泥するのではなく、100年の計に立った「水道事業の基盤強化」に向けて国民の総意で知恵を絞ることが求められる。
仲上健一
私たちの海を売るのは誰なのか
―亡国の漁業権開放と漁協の解体

●2018年12月、漁業法が「改正」により、漁業権の免許において認められてきた地域の漁協を優先する仕組みは解体されてしまった。短期的な利益の最大化を志向する企業の論理が横行すれば、情勢にあわせてファインチューニングしてきた漁協の役割が弱体化し、漁場が荒廃する可能性がある。また、漁業権の取得しやすくなれば外国の資本が参入しやすくなり、日本の国境でもある海の主権が脅かされかねない。漁業法の「改正」は、食だけではなく安全保障上の問題もはらんでいるのだ。

鈴木宣弘
投稿
ワンオペ診療
斎藤 馨
『ルポ保健室』から学ぶ、貧困を抱えた親子への支援
和田 浩
診療研究
糖尿病と膵疾患
〜消化器専門医による糖尿病診療の記録から

●2016年に「糖尿病が強く疑われる者」は約1000万人と推計され、実地医家にとって糖尿病は避けて通れない疾患である。消化器疾患の中で糖尿病に関連した非アルコール性脂肪性肝疾患、膵に関しては糖尿病が膵癌のリスクファクターとして注目されている。一方、慢性膵炎や膵癌に伴う膵性糖尿病は、糖尿病患者のうち0.8%程度である。第一線病院での膵疾患と糖尿病の診療に携わってきた後に、実地医家として17 年に及ぶ糖尿病診療の中で経験した膵疾患について考察した。

綿引 元
Umamiによる味覚障害・ドライマウス治療
第3回 Umamiについて

●「うま味」は甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ基本味のひとつであるが、他の味とは異なる特性と生理学的機能を有している。うま味は持続的に大量の唾液を分泌させ、唾液分泌低下による様々な口腔症状を是正し口腔機能を改善する働きがある。また、うま味は胃液・膵液など消化液の分泌を促進し、胃腸の運動を改善する働きがある。このような特徴を生かして、うま味を医学に応用する試みがある。

笹野高嗣
文化
ビタミン発見物語
第5回 ビタミンB 複合体 −その1−

・当初は単一の物質だと思われていた「水溶性B」がさまざまな必須微量栄養素の複合体であることが判明し、多くの研究者が発見競争に取り組んだ。
・ ビタミンB1(既述)、ビタミンB2、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ビタミンB6、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、ビタミンB12 が発見された。ビタミンB 群に属するとされる栄養素は、これら以外にもいくつか報告されたが、いずれもビタミンとしては認められなかった。

笠原 浩
まなざしの力

第17回 田畑ヨシ 厳しい自然との対峙

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 465
教育資金非課税制度の見直し
益子良一
雇用問題 209
妻が仕事中に大けが。労災保険の適用にはなるのか
曽我 浩
会員
ドクターの課外活動
仏にすがるつもりはなかったけれども…。
関口武三郎
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
VOICE
―4月号を読んで―
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内