●コメ、麦、大豆を主要な農産物として位置付け、これらの種子の管理を各都道府県に義務付けてきた「種子法」が2018年4月に廃止された。公共の種子を安価で安定的に提供してきたこの仕組みがなくなれば、農家は従来の伝統的な固有種ではなく、民間企業が開発したF1種子を高い値段で買わなければならなくなる。さらに、農薬残留量の規制が大幅に緩和され、種苗法の改正も視野に入り始め、多国籍企業が参入する道が大きく開かれようとしている。本稿では、私たち日本人の食の決定権が脅かされつつある状況について述べた上で、いかに食の安全を守っていけば良いのかを考える。
●水道事業民営化、種子法廃止、農薬残留基準の緩和、改正漁業法―。私たちの生活の基礎をなしている食と水に関するルールが次々と変えられ、それらに営利企業が参入する上でのハードルが大幅に下げられている。これまで、一定の公共性が社会に広く認知されてきたものを、経済効率を優先する価値観に委ねて良いのか。また、次々と法案が通されていく中で、もはや私たちにはなす術すべもないのか。2018年『日本が売られる』(幻冬舎新書)を出版し、大きな注目を集めている国際ジャーナリストの堤未果さんに聞いた。(聞き手・編集部)
●2018年12月、漁業法が「改正」により、漁業権の免許において認められてきた地域の漁協を優先する仕組みは解体されてしまった。短期的な利益の最大化を志向する企業の論理が横行すれば、情勢にあわせてファインチューニングしてきた漁協の役割が弱体化し、漁場が荒廃する可能性がある。また、漁業権の取得しやすくなれば外国の資本が参入しやすくなり、日本の国境でもある海の主権が脅かされかねない。漁業法の「改正」は、食だけではなく安全保障上の問題もはらんでいるのだ。
●2016年に「糖尿病が強く疑われる者」は約1000万人と推計され、実地医家にとって糖尿病は避けて通れない疾患である。消化器疾患の中で糖尿病に関連した非アルコール性脂肪性肝疾患、膵に関しては糖尿病が膵癌のリスクファクターとして注目されている。一方、慢性膵炎や膵癌に伴う膵性糖尿病は、糖尿病患者のうち0.8%程度である。第一線病院での膵疾患と糖尿病の診療に携わってきた後に、実地医家として17 年に及ぶ糖尿病診療の中で経験した膵疾患について考察した。
●「うま味」は甘味、酸味、塩味、苦味と並ぶ基本味のひとつであるが、他の味とは異なる特性と生理学的機能を有している。うま味は持続的に大量の唾液を分泌させ、唾液分泌低下による様々な口腔症状を是正し口腔機能を改善する働きがある。また、うま味は胃液・膵液など消化液の分泌を促進し、胃腸の運動を改善する働きがある。このような特徴を生かして、うま味を医学に応用する試みがある。
・当初は単一の物質だと思われていた「水溶性B」がさまざまな必須微量栄養素の複合体であることが判明し、多くの研究者が発見競争に取り組んだ。
・ ビタミンB1(既述)、ビタミンB2、ナイアシン(B3)、パントテン酸(B5)、ビタミンB6、ビオチン(B7)、葉酸(B9)、ビタミンB12 が発見された。ビタミンB 群に属するとされる栄養素は、これら以外にもいくつか報告されたが、いずれもビタミンとしては認められなかった。