記憶の解凍
                    ―カラー化写真で甦よみがえる戦争の記憶
          
          
                     
          
          
                    ●ニューラルネットワークというAI技術を使って戦時中のモノクロ写真をカラー化すると、凍りついたような過去の画像が生き生きとした色彩をおび、私たちの日常の感覚にぐっと接近してくるような印象を受ける。最新のテクノロジーを活用して戦争の記憶の継承に取り組む渡邉英徳氏が、これまでカラー化した戦時写真の中から見応えのあるものや、大きな反響があったものを厳選して紹介する。
          
          
                    渡邉英徳
          
                 
                
               
                
          
                    それは「志願」だったのか「命令」だったのか
                    ―不死身の特攻兵、佐々木友次という奇跡
          
          
                  
          
          
                  ●特攻に9回出撃して、9回生還した陸軍兵士がいた。名前は佐々木友次。その時、若干21歳。1回目の出撃で、彼は名誉の戦死扱いをされ、軍神となり、天皇にも報告された。けれど、彼は生きていた。以後、出撃のたびに、上官から「次は死んでこい!」と罵倒された。けれど、彼は帰ってきた。どうしてそんなことができたのか。そして、特攻とはなんだったのか。「命令した側」と「命令された側」では、特攻はまったく違う顔を見せる。特攻とは、日本型組織の典型なのだ。
          
          
                    鴻上尚史
          
               
                
          
                    傷ついた人々の希望の砦として
                    ―紛争地における医療活動
                    
          
          
          
          
          
                  
                    ●筆者は国境なき医師団の看護師として様々な紛争地に派遣されてきた。紛争地の惨状と際限なく運び込まれる負傷者を目の当たりにする中で、無力感を覚え引退を考えたこともあったが、戦争への怒りが筆者を踏みとどまらせた。今この瞬間も、紛争地では外から派遣されてきた医療者と現地の医師たちが傷ついた人々のために奮闘している。紛争地で活動する医療者には医療行為にあたるとともに、戦争の恐ろしさや愚かさを伝える使命がある。
                   
          
          
          
          
          
                    白川優子
          
                 
                
          
                    人々は何を求めて戦場に行くのか
                    ―多様化する価値観と空洞化する国家
                    
          
          
          
          
          
                  ●平和的なデモだったシリアの反政府運動は、泥沼の内戦と化し、犠牲者を増やし続けている。SNSの普及によって現地からの生々しい情報が届くようになったが、陰謀論やデマも拡散され、むしろ混乱と無関心を引き起こした。シリアやイラクには世界中のイスラム教徒が義勇兵として集まり、他国に攻め込む米軍には金目当ての出稼ぎ労働者が殺到する。そこでは、国家という単位ではなく、異なる価値観同士がぶつかり合う「世界大戦」が繰り広げられている。
          
          
          
          
          
                    安田純平
          
                 
                
          
                    沖縄地上戦の記憶をたどって
                    ―日本のどこにもなかった戦争
                    
          
          
          
          
          
                  ●沖縄は本土決戦の「捨て石」とされ国内唯一の地上戦が行われただけに、日本の中でも特殊な状況を強いられた地域といえるだろう。また、沖縄地上戦についての数々の記録は、戦場において医療者がどのような状況に置かれるかを考える上でも貴重な事実を伝えている。本稿では、沖縄で語り継がれる戦争の記憶をたどるとともに、戦争の惨禍が今日の沖縄にどのような傷跡を残しているのかを考える。
          
          
          
          
          
                    仲里尚実
          
                 
                
          
                    リアルな戦争の記憶を
                    引き継ぐために
                    
          
          
          
          
          
                    ●長編小説『遠き旅路』は、日中戦争での激しい戦闘や捕虜の斬首・虐殺、兵士の戦争神経症、日本の阿あ 片へん政策の実態などを、一兵士とその恋人の視点で描いた作品である。この論考では、その小説の創作動機、執筆過程などを振り返りながら、戦後生まれの作者がどのようにして作品世界を構築したのかを明らかにする。また、それを通じて、戦争体験を持たない世代が圧倒的多数となった現代社会で、いかにして戦争のリアルな記憶を次の世代に受け継いでいったらいいのかを考察する。
          
          
          
          
          
                    能島龍三
          
                 
                
          
                    冨五郎日記の医学的考察(上)
                    
                    
          
          
                  ●第二次世界大戦末期、激戦が繰り広げられた南洋群島では多くの日本兵が戦闘ではなく餓死によって命を落とした。佐藤冨五郎氏もその一人である。冨五郎氏はマーシャル諸島のウォッチェ島に赴任してから死亡する前日まで克明な日記をつけていた。その日記が70年ぶりに復刻された。日記には日々の食材や刻々と悪化していく病状の変化が正確かつ経時的に記録されている。日記であると同時に医学的資料としての価値も高い。南海の孤島における日本兵の餓死について、冨五郎日記から医学的考察を試みる。
          
          
                本田孝也
          
               
                
          
                    薬剤耐性(AMR)対策と抗菌薬適正使用(2)
                    
                    
          
          
                    
                      ●抗菌薬を使用すると常在細菌叢の多様性が減少し、薬剤耐性菌を選択することになる。実際に診療の現場で抗菌薬が処方されると、その後1年にわたり尿路や呼吸器からの薬剤耐性菌検出が増え、90日間の経過観察中に薬剤耐性菌感染症を発症することが報告されている。抗菌薬処方機会の多い外来診療での抗菌薬適正使用は、日本でも大きな課題であり、厚生労働省からは「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版」が発出された。本稿では、その主な内容である急性気道感染症と急性下痢症における診断と治療の考え方を紹介した。
                     
          
          
                    八木哲也
          
                 
				
				
				
				
				
                
          
                    高齢者の口腔機能管理に必要な基礎知識
                    第1回 超高齢社会の現状
                    
                    
          
          
                    
                      ●超高齢社会において求められる歯科医療とは、「治す医療」から、「よりよく生きるための医療」に変わりつつある。在宅医療において医師が最も連携を求めているのは歯科医師であり、QOLの維持、向上のため、口から食べることへの支援が期待されている。目指すべき途切れの無い医療介護連携の流れの中で、歯科医師の果たす役割はますます大きくなるだろう。そこで、まず日本の高齢化の現状と地域包括ケアシステムの中で求められている、かかりつけ歯科医としての口腔機能管理について考えたい。
                     
          
          
                    煖エ一也
          
                 
				
				
				
				
				
                
          
                    雇用問題 211
                    
                    
          
          
                    契約更新を繰り返してきたパート職員が無期転換を要求
          
          
                    曽我 浩
          
               
                
          
                    書評
					大川史織編『マーシャル、父の戦場 ―ある日本兵の日記をめぐる歴史的実践』
                    
          
          
                    
          
          
                    本田孝也
          
					
					
          
					上月 英樹著『精神科医がつかっている「ことば」セラピー 気が軽くなる・こころが治る』
                    
          
          
                    
          
          
                    佐々木典彦