2019・No.1300
月刊保団連 9
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「道」
巨大化する台風と災害
安田孝志
特集
女性の医師・歯科医師の活躍を阻むもの
“ガラスの天井”は破れるか
覆面座談会
医療界の“ ガラスの天井”
―背景に根強い「女は家庭」意識
●上司や同僚からの差別や、家庭での家事・育児・介護負担など、女性の医師・歯科医師を取り巻く状況はどうなっているのか。40代〜70代の女性医師・歯科医師に集まってもらい、本音で語ってもらいました。
日本の医学界のジェンダー平等を考える
―「男女共同参画」が陥る二者択一のワナ
●今の医師の労働環境において、多くの女性医師に与えられているのは、「男並み平等」か「女に甘んじての差別」か、という二者択一である。医学界のジェンダー平等を実現する為には、医師の長時間・不規則労働、女性医師の二重負担、そして、女性に対する固定観念・偏見・差別という3つの密接に絡み合った課題に取り組み、こうした二者択一を解消することが不可欠である。
安川康介
"医大・医学部入試における女性差別と
専門・管理職における男女不平等"
●医大・医学部入試における女性差別は法に反するのみならず、合理性を持たない。本稿は「差別容認論」の詭弁性を指摘するとともに、医療分野における男女共同参画社会実現の障害となっている、いくつかの要因を明らかにする。またそれらの事実が日本社会における女性リーダーの欠如の結果の縮図ともなっていることを同時に明らかにする。
山口一男
ジェンダーとは何か
●これまで、身体的な差異であるセックスの上に、ジェンダーという社会文化的差異が構築されていると思われてきた。しかし実際には、身体は場所や時代が異なれば、認識のされ方が異なっている。この認識のありかたそのものは、言語によってなされている。その性別に関する知識や実践をジェンダーと呼ぶ。ジェンダーとは実は、固定的実体的な「男らしさ」「女らしさ」ではなく、私たちが社会で行い、さらにまた社会を生み出す言語的な実践そのものなのである。
千田有紀
なぜ男性はそのセクハラに
気づかないのか
●セクハラ概念が日本に登場して30年、「セクハラはダメ」は常識となったが、しかしセクハラ被害や事件はなくならない。そこにはいったい何がセクハラであるのかについて、リアリティとかけ離れた「常識のウソ」があることを論じ、現実的なセクハラの理解を促す。セクハラの根幹にあるのは、女性を働く人間として尊重しない意識であり、医療機関もその可能性を免れない。結論では、セクハラが起こった場合の有効な解決方法を示す。
牟田和恵
論考
「男性脳・女性脳」説の有害性
●「男性脳・女性脳」という言葉が、書籍やテレビ番組で使われている。男女間で思考や能力が異なるのは、脳が違うからだという説である。本稿では、男女の能力に差があるならば、いかなる差なのか、最新の測定法を用いて見出される脳の性差はいかなるものなのかを概説する。次いで、社会に蔓延するジェンダーバイアスや格差が、「社会」「脳」「能力」の相互作用に及ぼす効果に注目し、「男性脳・女性脳」説の非科学性と有害性について説く。
四本裕子
冨五郎日記の医学的考察(下)
●飢えと闘う佐藤冨五郎氏の症状は海産物の摂取状況と相関していた。ウォッチェ島全体でも魚が獲れなくなった1月から2月にかけての餓死者が最も多かった。マーシャル諸島住民にヨード欠乏症が高頻度に認められたという高橋らの調査結果とあわせると、冨五郎氏は栄養失調にヨード欠乏による甲状腺機能低下症が加わり、心不全を発症して死亡したのではないかという仮説が生まれる。冨五郎日記と残されたウォッチェ島関連資料から仮説を検証する。
本田孝也
診療研究
薬剤耐性(AMR)対策と抗菌薬適正使用(3)

●外来診療において抗菌薬処方に影響する行動科学的因子には様々なものがある。最初から抗菌薬処方をせず経過観察して、症状の改善が思わしくない場合に抗菌薬処方するというDelayed Antibiotic Prescription(DAP)は、外来での過剰な抗菌薬処方を減らす一つの方法である。外来診療での抗菌薬適正使用には、DAPを含めた包括的な取り組みが必要である。診断や予想される経過等について十分に説明を行うことが、患者や家族の不安を減らし満足度を上げると考えられる。

八木哲也
高齢者の口腔機能管理に必要な基礎知識
第2回 高齢者の誤嚥性肺炎予防

●超高齢社会において求められる歯科医療とは、「治す医療」から、「よりよく生きるための医療」に変わりつつある。地域包括ケアシステムの中で、高齢者の誤嚥性肺炎を予防することは喫緊の課題である。そこで感染源、感染経路、感受性の宿主対策の3つに分けて、かかりつけ歯科医として口腔機能管理について考えたい。

煖エ一也
文化
史上最高に面白いエンターテインメント
「ファウスト」を遊ぶ
第1回 身勝手で厚かましいエゴイスト

●ドイツ文学の古典的な名作として知られるゲーテの『ファウスト』。名作であるが故に過剰に権威付けされ、難解なイメージばかりが先行してきた。ところが、ゲーテはこの戯曲を空前絶後のエンターテインメントとして書いており、観衆を楽しませる工夫と仕掛けが随所に盛り込まれていることはあまり知られていない。そんな視点から『ファウスト』を読み返すと、硬直していたイメージが解き放たれ、生き生きとしたイメージが広がってくる。ゲーテひと筋60年のドイツ文学者が、『ファウスト』を存分に楽しむためのポイントを3回にわたって伝授する。(編集部)

中野和朗
まなざしの力

第20回 檀 一雄 見えない糸(最終回)

渡辺 考
シリーズ
経営・税務誌上相談 468
土地や建物の評価方法
益子良一
雇用問題 212
老後不安が高まる中、公的年金の持続性をどう考えるか
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
VOICE
―7月号を読んで―
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内