児童文学のテーマに子どもの貧困
弱い人間の複雑さと尊い部分に光を当てて
安田夏菜
虐待はなぜ起こるのか
──その心理的メカニズム
●厚生労働省の『子ども虐待による死亡事例』報告書によれば毎年50余人の命が虐待によって失われています。実態はその3倍以上と言われています。なぜ虐待が起こるのか、虐待する親の心理的メカニズムについては専門家の間でもあまり論じられることがありません。一方、現場で事例を詳しく検証すると虐待には必ず原因があることが分かります。親の側の原因(心理的メカニズム)は大きく分けて3つです。これらの原因を理解すれば子どもの支援方法も変わってきます。
高橋和巳
虐待の急増で限界に来ている児童相談所
●虐待死が起きるたびに、矢面に立たされる児童相談所。虐待の通告を受けると、限られた時間と情報の中で速やかに通告の真偽を見極めることが求められている。しかし、児童福祉司の人数に対して児童虐待対応件数が激増しており、人員不足が大きな問題になっている。また、多忙で過酷な労働環境を背景に職員が定着せず、経験豊かなベテランが育たないため、現場の経験知が蓄積されにくくなっている。本稿では、困難な状況に置かれた児童相談所が十分に役割を果たすために何が必要か、医療との連携も含めて考える。
川蕪三彦
医療者として子ども虐待に早期対応するために
●医療関係者が虐待の事例に直面する可能性は低くないのにもかかわらず、医療機関から児童相談所に通告された相談件数は全体の2%にすぎない。その背景には、医療者として親の加害を疑うことへの抵抗感のほか、通告にともなう書類の作成やケース検討会議への参加といった負担が増えることなどがある。本稿では、医療従事者の立場に立って、こうした虐待事例に関わる上での様々な問題点を解消し、スムーズに関係機関につなげるためのポイントを述べる。
山田不二子
歯科医療現場で気付く子ども虐待のサイン
●歯科医療現場では、口腔顔面の損傷や病態に対応する。口腔顔面は生活環境や生活習慣が反映される部であるため、虐待やマルトリートメントの診断、対応が行える。また、重篤な状態に陥る前の子どもを発見し、取り返しのつかない状態に陥る前に、養育者等に対してサポートも行える。虐待でなかったとしても、これら口腔顔面にあらわれるサインは、受傷や罹患の再発防止や予防、健全な成育のための助言を含め、子どもと養育者、社会へ還元できる重要な情報である。
岩原香織
孤立する加害親をどうケアするのか
目黒・野田事件の2つの命から託された課題
●本稿では、虐待の加害者である親に対するケアについて述べます。子ども虐待とは、これまで人として尊重されなかった痛みや悲しみを抱える大人が、子どもに対して怒りの形で爆発させる行動です。虐待の加害者を対象にした「MY TREEペアレンツ・プログラム」はその感情、身体、理性、魂のすべてに働きかけるプログラムで、木や太陽や風や雲からも生命力の源をもらうという人間本来のごく自然な感覚を取り戻します。さらに自分の苦しみに涙してくれる仲間がいるという、人とつながることの喜びは、本来誰でもが内に持つ健康に生きる力を輝かせます。
森田ゆり
かかりつけ医は生活習慣病を管理することで
認知症の予防や進行を防止できる
●かかりつけ医は、患者が「認知症を発症する場面」に日常的に遭遇している。今回「当院に慢性疾患で通院している75歳以上の患者」を、長谷川式検査を指標として2年間追跡し認知症の進行度を検証した。この結果を「年齢階級別の認知症有病率」(全国平均)と比較すると、認知症の進行度が有意に低下していた。現在「認知症予防」について諸々の試みがあるが、かかりつけ医が原則的に生活習慣病を管理することが有効であることが改めて実証された。
堂垂伸治
口腔がんの早期発見と病診連携
第1回 口腔がんとは
●口腔癌は希少がん、すなわち患者さんの数からするとマイノリティーだが、口腔が「がん」になると、生命の危険が生じるだけでなく、「食べる・飲む」「話す」「味わう」「息をする」など、人間としての活動・楽しみが障害される、最も嫌な癌の1つといえる。固形癌の最大の治療戦略は早期発見・早期治療であり、医療従事者が「ONE TEAM」になって口腔癌の研究・治療・リハビリ・教育に取り組めるように分かりやすく解説したい。
野口一馬
江戸のお医者さん
第3回 「ヤブ医者」の登場
●江戸時代には、医者となるのに身分や資格はまったく問われなかったから、うまくいけば世間から尊敬され、それなりの収入が期待できると、町医者を開業する者が次々に現れた。彼らの多くは、「診立て=診断」のための医学知識もなければ治療技術もお粗末な、いわゆる「ヤブ医者」そのものであった。
笠原 浩
経営・税務誌上相談 474
事業所得の計算における措置法26条適用の検討
益子良一
雇用問題 218
退職した職員がパワハラがあったと労働局にあっせん申請
曽我 浩