2020・No.1324
月刊保団連 5
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「道」
新型コロナ危機・医療崩壊から何を学ぶのか
──最大のピンチを最大のチャンスに
本田 宏
特集
真に持続可能な社会に向けて
──SDGsと日本の現状
〈対談〉SDGsが目指すもの
 2030年までに達成すべき目標として国連が掲げる「SDGs(エスディージーズ)(持続可能な開発目標)」。すべての人に健康と福祉を保障し、貧困や格差をなくすこと、住み続けられるまちづくりや、公害・環境・エネルギー問題、ジェンダー平等や平和など、全国保険医団体連合会(保団連)がこれまで取り組んできた課題と共通する点も多い。SDGsに関する情報発信に注力するキャスターの国谷裕子さんと、住江憲勇・保団連会長が、SDGsが描きだす世界、そして保団連が目指す社会について意見を交わした。
国谷裕子、住江憲勇
持続可能性の危機にある地域社会と再生への展望
 政府は2019年12月20日、第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定した。「ローカル・アベノミクス」として位置づけられた2015年から5年間の第1期に続き、第2期では「新しい時代の流れを力にする」という項目が設けられ、そこで「地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくり」を推進するという。地方の実態や持続可能性について、地域経済学の視点から長年にわたり実態調査し、政策提起してきた岡田知弘さんに聞いた(聞き手:編集部)。
岡田知弘
膨大な貧困層の広がりと「全世代型社会保障」の問題性
●「全世代型社会保障改革」は、「少子高齢化」に対応して、社会保障制度の「維持」を主眼として打ち出されたが、全世代に負担と我慢を要請する内容である。国民生活の実態はそれを受け止められるような状態ではなく、全世帯の4分の1、単独世帯の半数、ひとり親と未婚の子の世帯の40%前後が貧困状態にある。社会保障財源の長期的な推移を見ると、1997年以降は事業主負担の抑制と被保険者負担増、消費税、積立金の不安定な運用となり、社会保障への国と企業責任の後退が顕著になっている。
石倉康次
待ったなしの気候変動
●2019年の日本の年平均気温は統計開始以来最も高い値となった。二酸化炭素の排出が続いており、世界平均気温はさらに1℃の上昇は必至で、2℃上昇の可能性も高い。熱波や大雨などの極端気象が増えており、今後の気温の上昇に応じて、災害のリスクがさらに増えることは確実である。二酸化炭素の排出を抑えられないと適応不可能な気候変動が起こる。二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出削減が急務である。
鬼頭昭雄
廃プラ等海ごみ問題の科学的考察と対策を
●プラスチックごみ等海ごみ問題は、深刻な実態を明らかにすることが重要であるとともに、現在すでに存在している海ごみの回収や処理、海ごみの発生抑制など、海ごみ問題の解決への課題を明らかにし、対策を実施していかなければならない。そのためには、廃棄段階だけでなく、製造段階から流通、消費段階を含めた海ごみ問題についての科学的考察が必要である。
磯部 作
論考
顔認識の香港
──監視カメラ、AI、そして民主主義の危機
●顔認識や行動追跡の技術は今や社会にあまねく普及している。新型コロナウィルス関係では、自分がいつどこで感染者と濃厚接触したか確認できる「感染アプリ」が出回り、香港のデモにおいても、参加者の個人同定に顔認識の技術が活用された。こうした個人認識の技術は、医療──特に予防・診断、防疫やセキュリティを含む社会制度の行く末にまで、大きな影響を持つ。さらに言えば、プライバシーと民主主義の根幹にまで、インパクトを与えかねない。
●本稿では、@顔の知覚・認知の心理学、神経科学、A画像処理・AIの技術進化、B民主主義とプライバシーの政治的側面──の3つの観点から現状を掘り下げ、近未来を占いたい。
下條信輔
診療研究
関節リウマチの治療経過中に起きた重症呼吸器疾患
●関節リウマチ(RA)には様々な関節外病変を生じるが、呼吸器合併症は重篤となり得る。経過中に起きた重症肺疾患4例を、剖検2例を含め報告する。症例は60歳代2例、80歳代2例の女性であった。ニューモシスチス肺炎が1例、間質性肺炎が3例で1例は感染性肺炎を合併した。RA治療の進歩は目覚ましいが、重篤な呼吸器合併症を起こし得ることから、充分な注意と慎重かつ迅速な対応が大切と思われた。
加藤康夫
口腔がんの早期発見と病診連携
第3回(最終回) 放射線治療・がん化学療法
●前回は、口腔癌の治療の中心となる診断と外科的治療について述べた。本年4月の診療報酬改定で、以前に述べたベルスコープをはじめとする口腔内蛍光観察装置は舌癌における手術使用で保険導入された。本腫瘍の早期発見と治療成績の向上につながり、国民への恩恵となることは間違いない。しかし、多くの患者は手術のみで対応できるほど口腔癌の治療は容易ではない。おおよそ30〜40%で頸部リンパ節転移を引き起こし、その1/3が遠隔転移を発症する。そこで今回は、このような患者に施行される放射線治療・がん化学療法について説明する。
●さらにわれわれ歯科医師は治療の多くが補綴という再建治療を担っている。頭頸部癌患者に対しても同様で、われわれの外来で進めているインプラント義歯を用いた摂食機能再建(広範囲顎骨支持型補綴)の実際を供覧する。
野口一馬
文化
江戸のお医者さん
第5回 落語に見る江戸の町医者たち(その2)
●前回に続いて、テレビやラジオではあまり聞くことができない「医者ネタ」の落語をいくつか紹介しよう。
●江戸の医者は「ヤブ医者」ばかりでない。家伝の漢方医学をみっちりと仕込まれた伝統を誇り、幕府や各藩の医学校で学んだ御殿医たちなどがいたし、町医者でも先進的な医師の私塾で研さんを積む、あるいは長崎まで出向いて蘭学を修めた蘭方医たちなど、すぐれた医師も存在していたが、彼らは落語にはほとんど登場しない。
笠原 浩
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 476
提出した確定申告書を訂正する場合
益子良一
雇用問題 220
36協定の様式変更で時間外労働の上限を規定
曽我 浩
会員
ドクターの課外活動
第5回 泡盛と島唄、抜群の相性で身も心もほぐれ
横田 泉
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉植竹団扇
VOICE
─3月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内