2020・No.1325
月刊保団連 6
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「道」
街宣とも選挙演説とも違う、新しい政治空間
国会の「やりとり」を多くの人々と共有して
上西充子
特集
高齢ドライバーと医療
日本社会の縮図としての高齢ドライバー問題
──医療・福祉関係者との連携も視野に
●交通は社会の縮図であると言われる。高齢ドライバー問題は、単に高齢者の運転問題にとどまらず、車社会を前提として構築されたわが国の社会構造と深く関わる。それ故に、問題解決には、多職種連携、地域連携が求められ、とりわけ医療・福祉関係者との連携が必須となる。本稿では、この点に問題意識を求め、政府から示された道路交通法改正案の対案となる高齢者講習の変革提言を行う。
所 正文
加齢による運転技能の衰えと医療への期待
●加齢による運転技術の衰えを運転支援技術で補おうという話を耳にする度に、事故と医工学の専門家として違和感を持ってきました。自動車の運転に必要なものは運転技術ではなく、運転技能だからです。「技能」とは人間と一心同体であり、人間が育つと技能も育つといった関係にあります。それでは人間が衰えると運転技能はどのように衰え、どのように対処したらいいのでしょうか。人間の衰えに対峙(たいじ)してきた医療と自動車技術を開発してきた工学の深い連携がカギを握るのではないでしょうか。
伊藤安海
運転免許に関連した認知症診断
●超高齢社会を迎えたわが国において、認知症高齢者は2012年には65歳以上高齢者の約7人に1人であったのに対し、2025年には約5人に1人まで増加すると予測されている。2017年3月に道路交通法が改正されたことに伴い、高齢者の運転免許更新における規定がより厳格となった。かかりつけ医による認知症診断の機会が増えるとともに、認知症の早期発見や早期診断、運転断念後の生活の質の見極め・保障が一層重要となってきている。本稿では高齢患者や認知症の特徴や運転免許に関連した認知症の診断に関して紹介する。
小川純人
高齢者の運転・移動をサポートするテクノロジー
──運転支援と自動運転技術の現状とこれから
●高齢者の交通事故を抑止するために、免許の自主返納は高齢者側の取り組みであるが、後に続く若い世代側の取り組みは、高齢者が安全に運転、そして移動できる車を開発することである。本稿では、高齢者の運転や移動をサポートする自動車技術に焦点を当て、現在実用化されている技術、システムが安全運転責任を負える水準の自動運転技術、今後の自動運転車の進化の方向について解説する。
大前 学
かたくなな高齢ドライバーに運転を断念してもらう方法
●運転技術に衰えがみられる高齢者に免許返納を勧めても納得してもらえない。老親をもつ患者などから、そのような悩みを寄せられることがある。なぜ運転をやめないか、その理由を同定することが運転断念の前提になる。認知症患者は自動車の運転が法律で禁止されている旨を本人に伝える。やめない場合には最寄りの警察署に連絡するか任意通報制度を利用する。運転禁止の診断書を作成しておくことも有効。認知症ではない場合は、運転技能の低下や交通事故の重大さなどを強調して免許証の自主返納を強く勧める。運転をやめさせるだけではなくその代替策を伝えることも必要である。
川畑信也
論考
日米貿易協定で脅かされる食の安全
──コロナ禍で顕在化した危機を克服するために
●2020年1月、日米貿易協定の第1弾が発効した。TPP11に続く貿易自由化をいっそう進めるもので、安い食材の流入を歓迎する声も少なくない。しかし、農薬残留量など、日本は食の安全基準が緩いため、欧米などで禁じられているレベルの危険な食材の流通を促進するだけでなく、安価な輸入食品の流通は安全な国産農作物などへの打撃となり、食料自給率のさらなる低下をもたらしかねない。現在、新型コロナ感染拡大で懸念される食料危機は私たちになにを警告するのか。さらなる自由化が狙われる中、危機的な状況にある食料安全保障をいかに確立していくかを考える。
鈴木宣弘
新型コロナウイルス対策とDV・家庭内暴力
北仲千里
沖縄からCOVID-19対策への緊急提言
徳田安春
診療研究
AMR対策と抗菌薬適正使用
─小児科クリニックにおける抗菌薬適正使用の実践─
第1回 急性気道感染症における抗菌薬の適応
●抗菌薬処方機会の多い外来診療での抗菌薬適正使用が求められている。発熱・症状の反復は、抗菌薬処方を所望される状況のひとつであるが、種々の呼吸器ウイルスの相前後する感染の実態が推定され、原則対症療法で経過を見る。
●抗菌薬の不必要使用を減らすため下気道感染症では、どのタイミングで抗菌薬の出番があるのか考察し、抗菌薬処方を遅らせる(Delayed Antibiotic Prescription;DAP)戦略につながる方法を提示した。
黒崎知道
文化
江戸のお医者さん
第6回 落語に見る江戸の町医者たち(その3)
●一般人には理解できない言葉を用いることが専門家の権威につながるといった考え方が、古今東西を通じて根強く存在している。近代以前の西欧ではラテン語が権威者の証で、聖書をドイツ語に訳したマルチン・ルターやフランス語の外科書を出版したフランソワーズ・パレは、それだけで凄まじい非難の対象となった。わが国の医者たちもご多分に洩れないようだ。
笠原 浩
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 477
新型コロナ感染拡大防止に対応した税務上の取扱い
益子良一
雇用問題 221
コロナ禍で職員を休業させる際の休業補償と公的支援
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉植竹団扇
書評
京都府保険医協会・編著『開業医医療崩壊の危機と展望
──これからの日本の医療を支える若き医師たちへ』
齊藤みち子
VOICE
─4月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内