アルコールとうつ、自殺
「死のトライアングル」に引き込まれないために
●アルコール使用障害は自殺の危険因子であり、うつ病併存時にはそのリスクはいっそう高まる。その意味で、アルコール、うつ、自殺は「死のトライアングル」をなしている。アルコールの自殺への影響の中で特に重要なのが、その直接的かつ急性の薬理作用である。これは、アルコール使用障害に罹患していない人にも出現し、うつ状態や何らかの現実的困難を抱えて悩む人を、瞬く間に「死のトライアングル」に引き込む可能性がある。
松本俊彦
新たな選択肢としての「減酒」
決意が固まらない患者をどう支援するか
●アルコール依存症者にとって断酒が唯一の治療方法とされてきたが、2000年代より各国の治療ガイドラインに断酒以外の治療の選択肢の導入が許容されている。日本でも2018年に『新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン』が公表され、アルコール依存症の治療目標について患者の重症度や希望に応じて飲酒量低減が目標になり得ることが示されている。今後、患者のとりたい方向性をより重要視する動きがアルコール依存症の治療スタイルに浸透していくと思われる。
湯本洋介・樋口 進
なぜ、泥酔すると記憶がなくなるのか
●飲酒時の酩酊はエタノールの脳への薬理作用の結果である。その薬理作用としてギャバ受容体、グルタミン酸受容体を介した神経細胞抑制作用が知られている。飲酒時の記憶がなくなる「ブラックアウト」は、エタノールの血中濃度の高度上昇に伴い海馬の機能が選択的に抑制されるためと推定される。また長期のアルコール乱用は記憶障害を含めた認知症や末梢神経障害などの脳神経系障害を引き起こす。この脳神経系障害の原因にはアセトアルデヒドの毒性が関与している可能性が高い。
真先敏弘
どん底の体験をさらけ出して
アルコール依存症からの回復
●不登校、自殺未遂、対人恐怖症、醜形恐怖症──。生きづらさを抱えていた私は、お酒と精神薬を心の杖として、なんとか生きてきた。そして、お酒に裏切られてアルコール依存症になってしまった。精神科アルコール依存症病棟に3回入院。入院仲間の死に直面して生きる意志にたどり着き、自助グループにつながった。自助グループを心の杖として、生きることをリセットできた今、強く思っている。「本当に、アルコール依存症になってよかった」。もちろん、その心境に至るまでの道のりは平坦ではなかった。
月乃光司
ついつい飲み過ぎてしまうのはなぜか
コロナ禍とアルコール関連問題
●新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが増えている。新たな環境への適応行動からくるストレスや行動自粛制限による運動不足、昼夜逆転の生活、飲酒開始時間が早まること等により飲酒量が増加し、人々の生活や健康問題にも徐々に影響が出始めている。さらに注目すべき点として、ストロング系酎ハイの登場、アルコール問題のある高齢者の孤立化、自宅での「オンライン飲み会」なるものが増えてきたことも挙げられる。本稿では新しいライフスタイルの中で飲酒量が増えてしまう社会背景について考えながら、「しくじらない飲み方」を続けていくためのヒントを提供したい。
斉藤章佳
コンポジットレジン修復の基本と応用
第2回 接着操作と2級修復の要点
●臼歯隣接面のCR修復をマスターすると、診療スタイルは大きく変わる。特に金パラ合金の価格高騰や、COVID-19の感染予防の観点などから、歯の切削量が多く、印象採得、咬合採得などの煩雑な操作を要する間接法修復を減少させることができる。接着材の選択と正しい使用法、隔壁法、CR填塞時の注意点につき、その要点を理解し習熟することで、大型の欠損に対しても、信頼性の高い臼歯直接法CR修復は容易に実践できるようになる。
田上順次
本当はすごい!トイレの力
第4回 多機能トイレが抱える新たな課題
●日本では、車いす利用者が使用できる広さのトイレに、オストメイト用設備やおむつ交換台など、様々な機能を付加してオールインワン型の多機能トイレの整備が進められてきました。しかし、ここにきて新たな課題が浮き彫りになりました。それは「利用集中」です。機能を集中したがゆえに、その機能を必要とする人が数少ない多機能トイレに集中し、その結果、いつも空いていないという事態を招いてしまいました。本稿では、多機能トイレの内容と課題について説明します。
加藤 篤
経営・税務誌上相談 483
年末調整とコロナ関連の各種手当等の取り扱い
益子良一
雇用問題 227
パートにも扶養手当を支払うようになるのか
曽我 浩
ドクターの課外活動
第9回 森羅万象この一管に。尺八の尽きない魅力
長澤 進