2021・No.1346
月刊保団連 5
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「道」
気候変動による降雨量増大
早く流す治水から、ゆっくり流す治水へ
島谷幸宏
特集
森林が育む命と暮らし
自然セラピーの予防医学的効果
●最近のストレス社会において、急速に関心が高まっている森林浴、公園セラピー、木材セラピー、花セラピー等の自然セラピーがもたらす予防医学的効果に関して紹介する。まず、自然セラピーがもたらす予防医学的効果の概念を示した後、私が自然セラピー研究を始めた経緯について言及した。さらに、生理リラックス効果を評価するための計測法を示すとともに、森林、公園、木材、花等の自然セラピーがもたらすリラックス効果関連データを紹介した。
宮崎良文
森林医学の確立と世界的な広がり
●植物の香り成分「フィトンツィト(フィトンチッドともいう)」は1930年、ソ連(当時)で発見された。その後、日本では森林環境における予防医学的効果の研究が進められ、これらの成果を世界中に広く発信するために、筆者らは2011年、国際自然・森林医学会(INFOM)を設立。日本生まれの造語「森林浴」は「Shinrin-yoku」として世界で広く知られるようになった。ストレス社会の中で、森林がもたらす集団を対象とした予防医学的効果の意義はますます大きくなってきている。
今井通子
森林で心がやすらぐのはなぜか
木の香り成分とその効用
●木々の生い茂った森林の中を散策すると気分がさわやかになり、リフレッシュする。それは森林の静かな雰囲気、澄んだ空気、目に優しい木々の緑、都会とはかけ離れた独特の景観など、森林の持つ機能が大きく関わっている。そして木々が放出する香りの作用もその一つである。木の香りの森林内の挙動、からだへの作用の例などから、森林の癒やし効果が明らかにされている。そして柱や板となっても木はその機能を持ち続け、木造りの家の快適さをつくり出す。
谷田貝光克
樹木と「対話」するために
●森林の中にいるだけでも心がやすらぐものだが、樹木のことを知っていれば、森林をより楽しむことができる。また、何げなく見るだけでは気付かないことも、語り合うような気持ちで樹木に接すると、多くの発見も得られる。どうやって樹木の健康状態を判断するのか、人間と樹木はどこが違うのか、なぜ紅葉するのか──。本稿では、物言わぬ生物である樹木と「対話」するためのポイントを紹介する。
石井誠治
日本の森林が壊れていく
人口減少社会と野生動物
●1960年代に始まった過疎により野生動物と対峙(たいじ)していた狩猟や農林業の後継体制が崩れ、2008年をピークに人口減少時代に突入した。人の撤退は自然の回復を意味するのだが、様々な害性リスクが人間社会に持ち込まれるようになった。シカの密度が増加した山では、食圧によって森林が破壊的な影響を受け、生物多様性の消失や災害の増加につながっている。狩猟者不在の時代に移行する中、自然と向き合う新たな体制が必要となっている。
羽澄俊裕
投稿
お互いに高めあった消化管研究の日々
外科開業医56年を振り返り
大岩俊夫
診療研究
ポケットサイズエコーを用いたPoint-of-Care超音波(POCUS)
第1回 総論
●Point-of-Care超音波(POCUS)は、臨床医自らが患者の傍らで、問診・身体診察に引き続き、関心部分に焦点を絞って行うものである。最近では診療所の外来診察や在宅医療でも行われる。在宅ではポケットサイズエコーが便利である。学習には教科書の他、講義とハンズオンの組み合わせが有用である。2020年度の診療報酬改定で訪問診療時に行った場合、心臓超音波検査を除き画像を保存した上で、月1回に限り400点を算定できるようになった。
水間美宏
歯科医院でのCAD/CAM活用のポイント
第1回 IOSの使用方法
●印象採得という医療行為が今世界規模で変化しようとしている。背景にはCOVID-19による感染防止策の一環にIOS(口腔内スキャナー)が使用されるようにも変化してきている。タービンが普及し鋳造歯冠補綴が当たり前になったように、IOSによるデジタルインプレッションも普及すると思われる。ただしIOSは「機械」であり、扱うのは人間である。印象採得という医療行為がデジタル化しただけで大切なのは従来のアナログの技術であることは言うまでもない。
北道敏行
文化
疫病の文化史
第2回 最古の疫病「ハンセン病」
●ハンセン病(Hansen’s disease)は、かつて「癩(らい)病」「レプラ」と呼ばれていたが、「悪行の報い」とか「不治の病」といった偏見や差別の対象とされがちであったので、現在では癩菌の発見者にちなんで、この呼称が用いられる。現代の日本では、ハンセン病療養所(2015年現在で13カ所)に勤務している人以外で、実際にこの疾患の患者を診た医療者は数少ないであろう。しかし、人類の歴史に深い影響を残した最古の疫病として、現代にまでつながる病者差別の実態なども含めて知っておいてほしいことが少なくはない。
笠原 浩
続・まなざしの力
第5回 東大寺・修二会練行衆(2)
太陽の下で闇を憶う
渡辺 考
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 488
新規開業に当たっての心構え
益子良一
雇用問題 232
65歳以降も就業を希望されたが、応じなければならないか
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉植竹団扇
書評
二木 立『コロナ危機後の医療・社会保障改革』
宇都宮健弘
VOICE
─3月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内