2021・No.1347
月刊保団連 6
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「道」
「鼻毛」が出たままでもいいですか?
無自覚のまま内面化された差別意識
せやろがいおじさん
特集
がん患者の就労継続
〜With-cancer, Post-cancer〜
多職種連携による就労支援
がんサバイバーシップケアの視点から
●がん罹患率および生存率の上昇により、多くのがん患者は社会生活を送る。しかし、がん患者の中には、治療と仕事の両立は難しいと想像し、治療前に離職してしまう人もいる。治療と仕事の両立には、さまざまな要因が影響するため、医療機関内外での連携が必要となる。本稿では、がんサバイバーシップケアについて国外の取り組みを紹介し、日本における多職種連携による就労支援について解説し、かかりつけ医による就労支援の可能性について検討する。
土屋雅子
患者から見た治療と仕事の両立支援の意義と実際
〜包括的な社会モデルの実現へ〜
●働く世代のがん患者にとって就労は、生きがい、セルフエスティーム、治療継続のためにも重要であるが、今なお約2割の患者は離職している。コロナ禍によって顕在化した日本の働き方の課題を探りつつ、患者、患者支援の立場から、相談支援の流れや時系列に応じた支援や見通し共有の必要性、包括的な社会システム構築の重要性について整理した。課題である早期離職、晩期離職の予防に向けては、現在取り組んでいる企業内ピアサポーターやアライ育成といった当事者活動を紹介する。
桜井なおみ
がん治療と就労の両立支援ツールの開発
●就労世代のがん患者数は増加傾向にある一方、筆者らの大規模コホート研究では、企業が条件を整えれば、2人に1人のがんに罹患した会社員は復職5年後も治療と就労を両立できることが示唆され、がんと就労の両立支援の重要性が確認された。医療側からの両立支援で課題となるのが「疾病性と事例性を分けた対応」である。こうした課題の解決に向け、「就労意見書作成支援ソフト」や、エビデンスに基づく「がん罹患社員用就業規則」モデルなどを開発してきた。さらなるエビデンスの創出と実務的なツールの開発で、治療と就労が両立できる社会にしていきたい。
遠藤源樹
がん関連疲労に対する薬学的介入
●痛覚などとともに身体の不具合を警告する役割を担う疲労は、がん患者において最も頻度の高い症状である。がん関連疲労は「がんまたはがん治療に関連したつらさを伴う持続的、主観的な疲労感または消耗感」と定義され、睡眠や安静といった休息でも回復しにくいのが特徴である。本稿では、これまでに明らかとなっているがん関連疲労の発生要因と疲労改善が期待される薬剤について概説する。
吉澤一巳
産業医としてどう関わるか
主治医との連携に向けた職場づくり
●治療と仕事の両立支援は、働く患者に対する社会的処方として、がんを中心とした慢性疾患の患者で少しずつ広がりを見せている。2018年診療報酬改定で新設された「療養・就労両立支援指導料」は、主治医がSick Note(病休診断書)のみならずFit Note(就業意見書)を作成する大きな動機付けとなり得るが、産業医(職域)との情報キャッチボールが前提とされている。月1回程度の出務頻度となることが多い中小事業場を担当する嘱託産業医に期待される役割と、それを実現する上で必要な職場の体制づくりについて解説する。
武藤 剛
論考
乳腺外科医裁判の真実を追う(上)
●東京都足立区の柳原病院で、乳腺腫瘍摘出術を受けた女性患者が性的被害を訴え、主治医が準強制わいせつ罪の疑いで逮捕・起訴された。2019年の一審の東京地裁では女性患者が幻覚を見ていた可能性があることから無罪判決が下されたが、2020年7月の東京高裁では一転して逆転有罪。弁護団や支援者からは「非科学的な判決」として批判が上がった。本稿では、医療冤罪(えんざい)事件の当事者でもある筆者が、術後のせん妄に伴う幻覚や「被害」についての証言、女性患者の職業的背景など問題点を整理し、逆転有罪に対する疑問点を述べる。
佐藤一樹
診療研究
ポケットサイズエコーを用いたPoint-of-Care超音波(POCUS)
第2回 呼吸器・COVID-19・肋骨骨折
●呼吸器POCUSは前胸部と側胸部の上下4カ所、左右計8カ所で走査する。プローブはコンベックスまたはリニアを用いる。所見はラングスライディング、Aライン、多発Bライン、胸腔内液貯留(胸水)などである。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)での超音波の精度は聴診や胸部単純X線より高い。CTはCOVID-19の早期診断に有用だがPOCUSの方が院内感染を防止しやすい。肋骨ではリニアプローブを用いる。肋骨骨折で超音波はX線より感度が高い。
水間美宏
歯科医院でのCAD/CAM活用のポイント
第2回 安全・快適にIOSを使用するために光学印象前にやっておきたいこと
●前回はIOSの精度とその特徴について記述した。しかし、これだけIOSやCAD/CAM関連機器、CAMソフトが進化しても実臨床での適合不良や術後の不快症状に悩む声をよく聞く。今回はIOSのスキャン精度の向上や術後の不快症状を抑制するにはどういったことに気を付けるべきなのかについて報告する。
北道敏行
文化
疫病の文化史
第3回 ペスト──黒死病の恐怖
●ペスト(英語:plague、ドイツ語:Pest)はペスト菌(Yersinia pestis)による感染症で、ヒトでの死亡率は極めて高く、日本の感染症法では「一類感染症=危険性が極めて高いもの」に指定されている。世界的な大流行を何度も繰り返し、とりわけ14世紀の「黒死病」では当時のヨーロッパの人口を半減させたと言われ、中世社会の崩壊につながった。
笠原 浩
続・まなざしの力
第6回 照屋林賢
沖縄の「レオナルド」
渡辺 考
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 489
新規開業するに当たっての注意点
益子良一
雇用問題 233
パート・アルバイトには賞与・退職金を支払わなくていいのか
曽我 浩
会員
書評
安斎育郎『私の反原発人生と「福島プロジェクト」の足跡』
聞間 元