2021・No.1348
月刊保団連 7
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「道」
幸せになる新しい家族のかたち
久保田智子
特集
空洞化する介護保険
介護の社会化は実現されたのか
──介護保険20年の歩み
●介護保険20年の歴史は、一貫して利用抑制の歴史だった。制度はあっても使えない、いわば制度の空洞化の歴史だったと言える。しかし、その下でも現場の経験値と実践は確実に蓄積し、進化してきた。独居の在宅看取り、さらには独居の認知症者の在宅看取りなど、不可能を可能にしてきたのだ。わたしたちには、制度の後退を許さず、高齢者の暮らしを守る義務がある。
上野千鶴子
介護保険からの「卒業」に潜む落とし穴
●増大する介護費用を抑制する「特効薬」であるかのように「自立支援」=「介護保険からの卒業」がもてはやされた。国は法改正を行い、総合事業を通じて全国展開を図ろうとした。しかし、この介護保険からの「卒業」は、市町村の介護保険を歪(ゆが)め、利用者にも被害をもたらしてきた。老化による衰えは自然の摂理であり、要介護状態になっても尊厳が守られ人間らしく生活できるようにすることが自立支援である。介護保険からの「卒業」に潜む落とし穴にはまってはならない。
日下部雅喜
介護職員の担い手をどう確保するか
●介護人材不足が社会問題となって長い月日がたつが、コロナ禍において一層の深刻さがうかがえる。要介護高齢者の生活を守る重要な介護職員は、コロナ禍以前から「3K」職場とも言われ労働市場ではかなりの苦戦を強いられ続けてきた。コロナ収束後においても、このような様相は続き、全ての団塊世代が85歳となる2035年には介護人材不足による「介護崩壊」を招きかねない。本稿では、コロナ禍においてさらに厳しくなった介護人材問題に触れ、その対応策について論じていきたい。
結城康博
家族介護の新たな問題に対応するために
ダブルケアラーとヤングケアラー
●子育て中に親の介護が始まるなど、複数のケアを抱える「ダブルケアラー」が増加しつつある。しかし、縦割りの行政の支援制度からこぼれ落ちてしまい、就労継続などの上で困難を抱えたまま孤立する当事者も少なくない。その一方で、学業のかたわらで祖父母の介護にあたるなど、困難を抱えた若年層として「ヤングケアラー」の存在も顕在化している。これらの問題は表裏一体の関係にあり、ケアの世代間連鎖の中に位置付けて考える必要がある。ケアの社会化を後退させないためにも、当事者を支える支援体制の構築が急務となっている。
相馬直子
毒親介護に翻弄される人々
──複雑化する家族像と介護保険
●暴力や暴言、自己中心的な行動で子どもを傷つける親を「毒親」と言う。そんな毒親が老いたとき、子どもは困難な現実に直面する。介護保険の申請をしたくても、暴力的な親とは会話すらままならない。介護認定が下りても親がサービス利用を拒否するなど介護体制が整わず、仕事を辞めざるを得なくなる。未婚や非正規雇用、引きこもり等で生活基盤がぜい弱な子どもは、「介護と引き換え」で親の年金に頼る場合もある。老いた親への葛藤、自分の将来について不安に苦しむ子世代の実態を追った。
石川結貴
論考
乳腺外科医裁判の真実を追う(下)
●東京都足立区の柳原病院で、乳腺腫瘍摘出術を受けた女性患者Aが性的被害を訴え、主治医が準強制わいせつ罪の疑いで逮捕・勾留・起訴された件について、前回(6月号)は控訴審判決の根拠となる事実認定の不可解な点について解説した。今回は、科学的手法を逸脱してまで犯罪事実を証明しようとした捜査側の問題点と、その事実認定に至る控訴審の訴訟指揮や判断の公正さの欠如について述べる。
佐藤一樹
診療研究
ポケットサイズエコーを用いたPoint-of-Care超音波(POCUS)
第3回 心臓・深部静脈血栓症(DVT)
●心臓では、心窩部で下大静脈縦断面と四腔断面、傍胸骨で左室長軸断面と左室短軸断面、心尖部で四腔断面を走査する。チェックする所見は、下大静脈拡張・虚脱と呼吸性変動、左室収縮能低下・過収縮、右室拡大、心嚢水、僧帽弁・三尖弁・大動脈弁の異常である。深部静脈血栓症では、鼠径部で大腿静脈、膝窩部で膝窩静脈を走査する。明らかな血栓が無ければ、2点圧迫法、すなわちプローブで鼠径部と膝窩部の静脈を圧迫し、内腔が変化しなければ血栓があると判断する。
水間美宏
歯科医院でのCAD/CAM活用のポイント
第3回 修復物の表面処理
●前号では光学印象を正確に採得するための様々なポイントについて述べた。光学印象取得後のステップは@光学印象採得ACAD変換データの確認、修復物設計BCADからCAMへのデータ送信C修復物のグラインディング(ダイヤモンドバー湿式切削)、ミリング(カーバイトバー乾式切削)D修復物の接着といったステップが一般的である。特に接着に対するステップを確実に行うことが重要となる。今回は接着を行うにあたり修復物の表面処理に関して記述する。
北道敏行
こんな時どうする? 心電図ワンポイント
診断の実際@
三原純司
文化
疫病の文化史
第4回 コレラと赤痢──脱水症の恐怖
●「疫病」の多くは、非衛生的な生活環境によって招き寄せられていたと言える。その一つの典型がコレラ、赤痢などの消化器伝染病である。近代医学において治療法が確立されるまでは効果の疑わしい治療法が行われ、中には患者の死期を早めるような行為も見られた。正体不明の恐怖から悲劇が起きることもあった。しかし、そのような時代は、それほど昔のことではなかった。
笠原 浩
続・まなざしの力
第7回 金城 実
ぶれない個
渡辺 考
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 490
開業したとき税務署に届ける書類
益子良一
雇用問題 234
スタッフが突然来なくなり「解雇理由証明書」を請求してきた
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉植竹団扇
VOICE
─5月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内