2021・No.1351
月刊保団連 8
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「道」
沖縄戦、2人のリーダーが今に語りかけるもの
佐古忠彦
特集
「表現の自由」が危ない
芸術・学術における自由保障の意味
──《知》は誰のものか
●近年、芸術・学術の自由度が問われる出来事が度々起きるようになっている。2019年に抗議や脅迫によって一時中止に追い込まれた「表現の不自由展・その後」は、公金を使った表現のあり方について議論を呼んだ。そもそも、なぜ「表現の自由」が保障される必要があるのか、表現活動に公金が支出される意味とは何か、そこで問われる「中立」とは何か──。本稿では、これらの視点を踏まえながら、芸術・学術の《知》の独立と表現の自由を守ることは、熟議を促し、民主主義の基礎体力を形成するために不可欠であることを述べる。
志田陽子
「原爆の図」は何を問いかけるのか
萎縮せずに表現し続けた丸木夫妻
●「原爆の図」という絵画がある。作者は丸木位里(いり)と丸木俊(とし)。原爆投下後の広島で惨禍を目の当たりにした夫婦の画家は、共同制作「原爆の図」を発表した。焼けて剥けた裸の人間群像。俊の筆は人々の肢体を卓越した線描で捉え、位里は墨を流して画面の奥行きを広げた。敗戦後、連合国軍占領下で原爆被害の報道が禁じられていたにもかかわらず、「原爆の図」は大きな反響を呼び、全国各地を巡回して隠された被爆者の痛みを伝えた。その活動は、核の時代の始まりにおける最初の抵抗の一歩であった。
岡村幸宣
「知る権利」の侵害に対抗するため
隠蔽された不都合な事実の可視化
●私たち国民に十分な情報が開示されなければ、様々な問題や課題について理解し、自分の意見を表明することは難しい。「表現の自由」を守るためには「知る権利」が保障されていなければならないのだ。しかし、近年、記者会見や国会答弁において、政府側はまともに質問に答えることがなく、巧妙な論点ずらしも目立つようになっている。また、マスコミ報道では、もっぱら政府と野党の対戦型の図式で報道されるため、論点が見えにくくなっている。こうした「知る権利」の侵害に対抗するためには、私たち国民も主体的に行動することが求められている。
上西充子
氾濫するデマと言論の自由
インフォデミックを食い止めるため
●近年、ネット上に氾濫するデマやフェイクニュースが問題となっており、明らかな嘘だけでなく、中には間違いとは言えないものの人々に誤った認識を抱かせるような巧妙なものも見られるようになっている。こうした不適切な情報を放置しておくと、社会に好ましくない影響を及ぼすことになるものの、過剰な規制は「言論の自由」を損なうことにもなりかねない。表現・言論の自由を守りながら、誤った情報の「感染拡大」=インフォデミックをいかに防ぐべきなのか。本稿では、こうした視点からファクトチェックの取り組みを紹介する。
立岩陽一郎
「学問の自由」と軍事研究は両立するのか
●日本学術会議会員任命拒否は、「学問の自由」に対する重大な挑戦であり、また危機でもある。そこでまず研究者の感覚から、「学問の自由」はいかなる要件を満たしていなければならず、出版や表現の自由とはどこが異なるのかを考える。そして日本国憲法第12条から、もろもろの自由や権利が天賦のものではなく、私たちの節度や努力の上で保持され、公共の福祉のために利用する責任を負っていることを確認する。その上で軍事研究の許容が「学問の自由」を踏みにじることを述べる。最後に、日本学術会議が明確に軍事研究を拒否する声明を出し得ない、現代の社会的・政治的状況と科学者の意識の変化について述べる。
池内 了
診療研究
ポケットサイズエコーを用いたPoint-of-Care超音波(POCUS)
第4回(最終回) 腹部・皮膚/皮下組織
●腹部は、@心窩部縦走査で大動脈・膵・胃、A右肋間走査で肝内胆管・胆嚢、B右側腹部縦走査で右腎、C右腹部横走査で上行結腸、D下腹部正中縦走査で膀胱・直腸・腹腔・小腸・卵巣、E左腹部横走査で下行結腸・小腸、F左側腹部縦走査で左腎・脾臓、G腹部正中横走査で大動脈・小腸を描出する。
●皮膚は、表皮・真皮層、脂肪層、深筋膜、筋肉層、骨を描出する。褥瘡で深部損傷(DTI)があれば毎日の観察を怠らずに行う必要がある。
●実地医家が日常的にPOCUSを行うことを願っている。
水間美宏
歯科医院でのCAD/CAM活用のポイント
第4回(最終回) 接着歯面への処理
●前回では修復物接着被面の処理に関して解説した。今回は接着に当たり接着歯面への処理の実際に対して解説する。
北道敏行
こんな時どうする? 心電図ワンポイント
診断の実際A
三原純司・須藤佳苗
文化
疫病の文化史
第5回 蚊が媒介する疫病
●昆虫は地球上で最も繁栄している動物であるが、温血動物の血液を栄養源とする方向に進化した種属がある。吸血だけでも不快なのに、その際に病原体を媒介することがあるからまさしく厄病神だ。太古から人類を苦しめてきた数多くの吸血昆虫の中で、今回は「蚊」を取り上げてみる。
笠原 浩
続・まなざしの力
第8回 山本美穂
大輪の花のような笑顔
渡辺 考
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 491
住宅に関係する2021年度税制改正
益子良一
雇用問題 235
子供の看護で頻繁に休む職員を解雇できるか
曽我 浩
会員
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉植竹団扇
VOICE
─6月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内