今こそ「お互い様」の社会の実現を
コロナ危機下の自殺者数があぶり出した脆弱性
清水康之
社会が見過ごした子どものつらさ
──「コロナ×こどもアンケート」より
●国立成育医療研究センター「コロナ×こども本部」が実施した、新型コロナ流行下における子どもと保護者の生活と健康に関する「コロナ×こどもアンケート」の調査結果を報告する。医療者として把握しておきたい子どもたちの現状(日常生活の変化、コロナへの不安・偏見、ストレス反応とその対処方法、ニーズ)を中心に取り上げた。環境変化や制限の中でも子どもたちが本来の力を発揮するために、周囲の大人が子どもの声を聴いて尊重し一緒に考えることが重要である。
澤田なおみ
コロナ禍のシングルマザーと子どもの暮らし
──家計と健康への影響
●多くのひとり親世帯がコロナ禍の影響を受ける中、母子世帯への影響を示すデータの収集を目的にシングルマザー調査プロジェクトを開始した。これまでの調査から、休業要請や出勤制限・解雇など就労への影響が確認され、ライフラインや食費に関わる支払いが難しい状況が見えてきた。医療費の捻出もままならない状況である。さらに、子どもの体重減少など健康を脅かす状況も明らかになった。一刻も早く、有効で恒常的な支援策の実現が求められる。
五十嵐 光
学校行事を復活させる感染対策と医療専門職の役割
●コロナ禍において多くの大人が混乱し、社会は動揺している。それに巻き込まれるように子どもたちの生活は制約の多い非日常となった。大人はゼロリスクを求め、多くの行事を中止したが、その代償は大きい。一刻も早く子どもたちの日常を取り戻すには教育と医療の連携が欠かせず、協力して行事を復活させていかなくてはいけない。社会と信頼関係を築くことができれば、非現実的な「ゼロリスク思考」に陥ることはなくなるはずである。
種市尋宙
コロナ前後で子どものネット利用はどう変わったか
──2万人調査から分かったこと
●コロナ前後で子どもたちの生活は大きく変わり、家でも学校でもインターネット漬けである。私たちは大阪府の小中高校生約2万人を対象に「ネット依存」に関する調査を行った。男子は小学生の1割が「ネット依存」の疑いがあり、女子は高校生の3割が「病的利用」とされた。コロナ前と比べて「病的利用」は急増しており、ネット利用の低年齢化も見られる。これまで日本のネット対策は、基本的に「制限、禁止」だったが、これからの子どもたちには「正しく怖がり、賢く使う」ことを求め、そのための考える機会、考える材料の提示が大人には求められる。
竹内和雄
コロナ禍で受診控え、症状悪化も
「2020年学校健診後治療調査」より
●2020年に日本全国でも感染拡大した新型コロナウイルス感染症は、全国で実施されている学校健診にも大きな影を落とした。保団連は新型コロナ感染症拡大後の子どもたちの健康状況を調査するため、「2020年学校健診後治療調査」を実施した。
●2020年春の全国一斉休校を受け、各学校の健康診断は延期され、その後も健診の実施に至るまでに時間を要した。その間の健康状況や休校終了後に実施された健診後の受診行動について尋ねたところ、視力の低下、肥満や不登校の児童・生徒が増加した他、「受診による新型コロナ感染」を恐れて、要受診とされているにもかかわらず必要な受診ができていないことが明らかとなった。
全国保険医団体連合会地域医療対策部
新型コロナ後の医療再建と財源問題
社会保障充実、景気回復に向けて
●コロナ収束後は、医療・社会保障の再建と財政再建が焦点となる。先進諸国では、コロナ危機を通じて、大企業や富裕層に応分に負担を求める潮流に変わりつつある。日本も、法人減税、雇用の規制緩和など新自由主義的路線からは決別し、消費税増税ではなく、大企業・超富裕層に対する応分の税負担、医療・社会保障の充実、雇用の改善という三位一体の改革路線を進めて、医療・社会保障財源の確保を図っていくべきだ。
竹田智雄
頭痛診療のコツ
〜一次性頭痛を中心に〜
第1回 病歴聴取のコツ
●頭痛診療では「受診の目的(困っていること)」をうまく聞き出し、頭痛の「ABCDE」分類を利用して頭痛診療の入り口とする。一次性頭痛では薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)を満たす頓挫薬を内服していないか確認し、次に片頭痛があるのか、緊張型頭痛があるのか、さらに他の疾患があるのかなどを診断していく。一次性頭痛であれば、複数の頭痛がないか問診でうまく診断するが、「いくつのタイプの頭痛がありますか」と聞くのもよい。頭痛診断の最大のポイントは問診である。
橋本洋一郎
歯周組織再生剤リグロスを中心とした再生療法の臨床(1)
●歯周組織再生療法とは、失われた歯周組織を再生させるための歯周外科手術法で、骨移植術、多血小板血漿(Platelet Rich Plasma : PRP)、Guided Tissue Regeneration(GTR法)、エムドゲイン®ゲル、リグロス®を応用した方法等がある。歯周組織の創傷治癒の特徴は、歯肉、歯根、歯槽骨、歯根膜など、それぞれの組織の治癒速度および治癒形態が異なるとともに、歯周ポケットや歯根表面に歯周病原細菌およびその産生物が存在すると、創傷治癒過程が影響されることにある。
小方ョ昌
こんな時どうする? 心電図ワンポイント
診断の実際B(最終回)
三原純司
疫病の文化史
第6回 甘いわな=梅毒
●性行為によって感染する疾患は少なくない。かつての性病予防法では、梅毒、淋病、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫症の4種が指定されていた。近年ではクラミジア感染症、ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、HIV感染症(エイズ)なども問題になっている。抗生剤が登場する前は、多くの新生児を失明させた風眼(産道感染による淋菌性結膜炎)や入浴施設での接触感染などで、淋病の蔓延が公衆衛生上の重大問題となっていた歴史があるが、今回は紙幅の関係で梅毒に的を絞った。
笠原 浩
続・まなざしの力
第9回 佐木隆三
茶目っ気たっぷりの笑顔
渡辺 考
雇用問題 236
不採用通知は相手の落胆を思うとつらい。どう伝えればよいか
曽我 浩