2021・No.1357
月刊保団連 12
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「道」
原発汚染水処理は海洋放出でなく代替案の検討を
二平 章
特集
使える! 漢方
●2022年1月に発効するWHOの国際疾病分類第11版(ICD-11)で、「伝統医学」として漢方医学の考え方に基づく疾病が盛り込まれた。
●漢方は「いまいち使い方が分からない」「本当に効くのか」といった声も少なくないが、実は地域医療において活躍の場面が多いという。
●特集では、漢方治療の考え方や副作用などの基礎知識について解説し、地域医療での活用実践を紹介する。
ICD-11収載「伝統医学の章」と漢方の基本
●29年ぶりに改訂された国際疾病分類ICD-11では、補章として「伝統医学の章」が新設された。東アジアだけでなく世界的に普及していることから「伝統医学の章」の第一段として東洋医学が選ばれた。「伝統医学の章」は、伝統医学疾病(disorders)と伝統医学証(patterns)の2つに分けられ、後者に日本提案の内容(寒熱虚実、気血水、六経、経絡、腎気虚など)の42項目がある。ICD-11では西洋医学病名と伝統医学証を組み合わせた記録をすることが求められる。
星野卓之
漢方、はじめの一歩
●漢方薬は効くのか。実際に使い始め、漢方薬の劇的な即効性、予想を覆す不思議な効き方を体験すると、疑念は飛んでしまう。まず使ってみること。そして診療の都度、効果を確かめ、効かない薬はすぐに変更し、確かな効果がつかめるまで薬を探す。未知の世界に挑戦するのだから、悲観せず謙虚に勉強し、目の前の患者さんのために、その苦痛を早く取り除く努力をする。上達するコツはそれだけである。全ての医師が漢方薬を使えるようになってほしい。
●子どもを育てながら、独学で漢方薬を縦横に使いこなせるようになった楽しい体験を、後輩たちに語りたい。「ひるまず、脅えず、勇気をもって、前に進め」と。
益田総子
地域医療でニーズの高い補中益気湯と半夏厚朴湯
1薬1症から一歩前へ!
●筆者は地域医療時代、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)と半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)を頻用した。補中益気湯は生体エネルギーである「気」が量的に不足した気虚に対する漢方薬で、様々な要因から生じる全身倦怠感に用いる。具体的には、急性感染症の治療後、悪性腫瘍などに加え、夏ばて、過労、介護疲れから生じる場合にも活用できる。半夏厚朴湯は気の循環がスムーズでない気鬱(きうつ)に対する漢方薬で、咽喉頭異常感症をはじめ、機能性ディスペプシア、湿性咳嗽、誤嚥の予防、不安感などのメンタルヘルス不調に活用できる。1薬1症から一歩前へ進んだ漢方治療はプライマリ・ケアで必要な心理・社会的アプローチにもつながる。
吉永 亮
不定愁訴は漢方の得意分野
──心療内科での実践
●心療内科外来には多くの不定愁訴患者が受診するが、その治療手段として漢方薬は極めて有用である。不定愁訴には様々な症状があるが、特に倦怠感については、気を補う補気(ほき)剤を用いるべきか、気を巡らせる柴胡(さいこ)剤を用いるべきかの鑑別は重要である。また、ストレス症状に対して頻用する柴胡剤には特徴的な性格傾向があり、これを把握すると処方選択が容易となる。まずは自分の専門領域の不定愁訴患者に漢方薬を試み、治療に習熟するのが良いであろう。
西田愼二
口腔症状と漢方
──保険診療における漢方薬の考え方
●歯科医療の歴史は「歯を抜く」「入れ歯を入れる」「歯を削る」などいわゆる外科的治療である。一方、近年では、口腔内が「痛い」「渇く」「味がおかしい」など多岐にわたる症状を訴える患者が多くなった。従来からの口腔外科的な治療で対応できず、口腔内科的な発想での薬物療法の技術が必要となってきた。そのために、漢方薬の選択を考える医師、歯科医師が増えてきた。現在、漢方薬(漢方製剤)には一般用漢方製剤と医療用漢方製剤の2種類がある。一般用漢方製剤はOTC薬であり、医師の処方箋なしに患者の自己負担で、薬局で購入できるものである。それに対し、医療用漢方製剤は健康保険が適応されており、医師、歯科医師が処方箋によって処方することができる。本稿では保険診療における口腔症状に対する漢方薬の選択方法を多角的に考察する。
王 宝禮
知っておきたい漢方薬の副作用
新井 信
論考
ワクチン忌避行動の心理的メカニズム
●ワクチン忌避(Vaccine hesitancy)とは、意図的にワクチン接種を躊躇(ちゅうちょ)したり拒否したりすることである。なぜ、人はワクチンに過剰反応を示すのか。本稿では、ワクチン忌避行動の心理的メカニズムについて述べる。
八巻孝之
投稿
新型コロナワクチンの温度管理用ソリューション
松波英寿
診療研究
頭痛診療のコツ
〜一次性頭痛を中心に〜
第4回 予防の裏技と新薬使用のポイント
●頭痛治療では頓挫薬とともに予防薬についても検討する。片頭痛発作の発症抑制にはバルプロ酸ナトリウム、インデラル、ロメリジン、ベラパミル、アミトリプチリンなどの従来薬をまず使用する。群発頭痛にはベラパミル、緊張型頭痛にはアミトリプチリンが適応外使用可能である。従来薬が効果不十分あるいは認容性がない片頭痛では、抗CGRP抗体のガルカネズマブ、フレマネズマブ、あるいは抗CGRP受容体抗体のエレヌマブを検討する。
橋本洋一郎
文化
病魔退散
──病と祈りのイマジネーション
第1回 「アマビエ」はどのように誕生したのか
●コロナ感染拡大の中、未知のウイルスは近代医学が発達した現代に生きる私たちにも、少なからず不安や混乱をもたらした。ましてや、感染症についての治療や予防方法が確立していなかった時代、疫病に対する恐れは比べものにならないほど大きかったに違いない。そして、こうした災厄を逃れるための切実な祈りは、豊かなイマジネーションによって表現されてきた。日本人は災厄とどう向き合ってきたのか。今回はこれらの「疫病芸術」から、コロナ禍の中で突如として注目を浴びたアマビエのルーツを探る。
畑中章宏
続・まなざしの力
第12回(最終回) 坪井 直
伝えることを諦めない
渡辺 考
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 495
年末調整とはどういう手続きか
益子良一
雇用問題 239
問題職員が退職届と同時に慰謝料請求をしてきた
曽我 浩
会員
休業保障制度の給付実績から見る新型コロナウイルス感染症
●一般社団法人全国保険医休業保障共済会が運営する、保険医協会・医会会員のための保険医休業保障共済保険(休業保障制度)には、傷病による休業に対し年間延べ3000件以上の給付請求があり、約30億円の給付を行っています。
●2020年度(2020年8月1日から2021年7月31日)決算を踏まえ、給付実績における新型コロナウイルス感染症の状況を報告します。
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉植竹団扇
VOICE
─10月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内