2022・No.1361
月刊保団連 2
PDF内の写真・文章の無断転載を固く禁じます。
「道」
暗雲立ち始めた“暴走のリニア計画”
住民からの提訴、コロナ禍による財政逼迫
川村晃生
特集
見えにくい難聴者の困難と支援のあり方
●潜在する軽・中等度難聴を含めると、難聴者は国内で約2千万人いると言われている。ところが、難聴の当事者が支援の対象であることを自覚していなかったり、周囲に明かしていなかったりするために、難聴者の抱える問題は社会であまり理解されていない。
●日常生活での困り事や必要な支援は、聴力レベルはもちろん、難聴の原因や発症時期、両耳か一側性か等の違いによって様々である。
●特集では、見過ごされやすい軽・中等度難聴や中途失聴に焦点を当て、支援のあり方を考える。
「聞こえにくい」ということ
難聴者が直面する多様な問題
●本稿では、難聴の捉え方の違い、聞こえ方の問題の多様さ、支援の必要性について述べる。国内外の難聴についての現状も述べた。発達段階や、入学、就職、子育てなどのライフイベントによって経験する聞こえの問題は異なり、必要な支援も異なる。医学的な支援のほか、心理的支援、福祉的支援、学校や職場での合理的配慮など多面的である。聞こえの問題の対応は長期的な視点から様々な分野が連携して行うことが求められる。
勝谷紀子
インタビュー 漫画で描く「聞こえにくい」世界
●聴覚障害者の世界を描いたドキュメンタリー漫画『淋しいのはアンタだけじゃない』。様々なタイプの聴覚障害をもつ当事者に取材を重ね、漫画ならではの表現で「聞こえにくい」という感覚を描写し、当事者からも好評を集めている。耳の不自由な人々は暮らしの中でどのようなことを感じ、何に困っているのか、作者の吉本浩二さんに聞いた。(聞き手:編集部)
吉本浩二
一側性難聴の特性と支援のあり方
●片耳のみの難聴である一側性難聴は、正常な良聴耳で聴取が可能であり、静寂下での1対1の会話では問題は生じないが、難聴側からの聴取、騒音下での聴取、音源定位といった限られた場面でのみ聴取困難となることに特徴がある。一側性難聴は外見では判断できず、「問題がない」とされることも多い。一側性難聴当事者の抱える状況を概観し、個人および社会的な支援のあり方、医療現場で求められる配慮について紹介する。
岡野由実
聴覚障害をもつ医療従事者の役割と就労支援
●2001年の欠格条項撤廃以降、全国には多数の聴覚障害をもつ医療従事者が就労中である。安定した就労には職場の聴覚障害に対する理解と環境が大きく影響している。聴覚障害者の受療権を守り、医療情報へのアクセシビリティ向上のために、聴覚障害をもつ医療従事者の存在は重要である。聴覚障害者の就労は医療安全の向上につながるが、雇用者の費用負担は大きい。共生社会の実現のためにも聴覚障害者雇用や教育、サポート体制の構築、環境整備に対する公的な支援が望まれる。
関口麻理子
医療機関における難聴の患者への合理的配慮
●難聴の患者が医療現場で直面する困り事の多くは、医療関係者の「合理的配慮」で改善できる。難聴者への合理的配慮には、筆談での対応や口元を見せることのほか、会話内容を理解しやすい環境の整備、難聴への理解と受容的な態度、コミュニケーション法の選択と適切な使用など、様々なものがある。感染症対策が求められる現在では、透明マスク、電話リレーサービスや音声文字変換など新しい方法も積極的に導入しながら、難聴者の受診環境を整え、健康の増進に寄与していく必要がある。
村上旬平
軽・中等度難聴者に対する補聴器購入費助成
●聴覚は、人間が本来持っている能力を構成する重要な要素であり、他者とのコミュニケーションや関わりを持つ上で最も重要な感覚である。幼児期から高齢期まで、どの時点で難聴を患っても日常生活の中での孤独を感じる機会が多くなる。
●日本補聴器工業会が実施した調査では、日本の難聴者の補聴器所有率は14.4%、装用者の満足度は38%と、欧米諸国と比して極端に低い状況にあり、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会は、障害者総合支援法による補装具(補聴器)利用者の視点から、今後も補聴器購入費助成制度等に関する要望活動を展開していく決意である。
宿谷辰夫
【付録】
補聴器購入補助等の改善をはじめ、難聴(児)者への支援の拡充を求める要望書
【付録】
「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)」へのパブリックコメント
診療研究
新型タバコ時代の禁煙・禁煙支援
第1回 日本は加熱式タバコの実験場
●加熱式タバコや電子タバコといった新型タバコが登場し、日本は世界で唯一、加熱式タバコが流行している。「新型タバコ時代」を迎えた日本における禁煙・禁煙支援の本質を理解し、推進するために必要な情報を伝えていく。
田淵貴大
歯科・精神科の連携で著明に改善した非定型歯痛
●歯科・医科(精神科)連携により、著明に改善した「非定型歯痛」「口腔内セネストパチー」の5症例を供覧する。口腔顔面痛学は歯科医学の新しい分野で、専門医の数もまだ少なく、また保険制度上、歯科医師は抗うつ薬を処方できない。しかし、「非定型歯痛」の存在を理解した歯科医師が適切に精神科受診につなげることで、患者を長期の苦しみから救うことができる。
仲里尚実
文化
病魔退散
──病と祈りのイマジネーション
第3回(最終回) 錦絵などに見る疫病の対処法
●コロナ感染拡大の中、未知のウイルスは近代医学が発達した現代に生きる私たちにも、少なからず不安や混乱をもたらした。ましてや、感染症についての治療や予防方法が確立していなかった時代、疫病に対する恐れは比べものにならないほど大きかったに違いない。そして、こうした災厄を逃れるための切実な祈りは、豊かなイマジネーションによって表現されてきた。日本人は災厄とどう向き合ってきたのか。最終回は、感染症についての俗信や対処法が描かれた錦絵などを紹介する。
畑中章宏
Q&Aシリーズ
経営・税務誌上相談 497
電子取引における電子データ保存の義務化に2年間の猶予
益子良一
雇用問題 241
従業員が無視をする。「逆モラハラ」ではないか
曽我 浩
会員
ドクターの課外活動
第10回 野球を通じ、子供たちに生きる喜びと勇気を
三浦捷也
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉植竹団扇
VOICE
─12月号を読んで─
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内