歯科医療充実に全力 国民との幅広い連帯を決議

歯科全国交流集会を開催

10月30日、第17回保団連歯科全国交流集会が、東京の半蔵門・全国町村議員会館で開催された。会場とウェブを合わせて全国43協会から160名を超える医師・歯科医師が参加し、オンライン資格確認の義務化撤回の運動推進や歯科医療費総枠拡大の取り組み強化など旺盛な議論が交わされた他、特別報告として民医連から「歯科酷書第4弾」の報告があった。

参加者からは、オンライン資格確認義務化撤回の運動強化に係る発言が多数出された。集会の最後には、歯科医療の充実を求め、患者・国民と要求実現のために全力をあげる決議を行った。

 

1.基調提案

今次改定の問題点と2024年改定に向けた課題を提示  田辺隆 保団連副会長

田辺隆副会長は基調提案で、2022年度歯科診療報酬改定の問題点を指摘し、2024年度改定に向けた課題を示した。今次改定の解説の中で、初・再診料が3点ずつ引き上げられたこと、この点数引き上げは、P基処廃止による財源が振り向けられたことを解説。コロナ禍で疲弊した歯科医療界の立て直しのためには、このような点数操作では、歯科医療機関の経営状態の根本的な改善につながらないこと、今こそ歯科医療費の総枠拡大が必要と述べた。

金パラ「逆ザヤ」問題については、制度改善の他に、代替材料の保険導入を併せて求めていくことが必要と訴えた。この他、新規技術の保険導入には、各学会の医療技術提案も鍵として、学会への働きかけを強化するとした。

また、この間、政府が強引に進めているオンライン資格確認義務化問題について、医療機関での対応が政府の想定通りに進んでいない状況や日本歯科医師会が厚労大臣に対して、やむを得ず対応できない歯科医療機関への配慮を求めたことなども紹介。患者・国民、医療機関の実情を無視したオンライン資格確認義務化施策に対して、現場の声をもとに徹底して撤回を求めていくことを強調した。

今次改定の状況を把握するために実施した歯科会員アンケートの中間報告も行った。コロナ禍を受けた経営の見通しについては、「見通し立たない」と回答した割合が昨年(16.5%)よりも増えて20%となったこと、「閉院を考えている」との回答が149件あったことにふれ、続くコロナ禍で歯科医療機関の経営状況は、回復するどころか、深刻さを増していることが明らかになった。

 

2.報告  歯科医療改革提言改訂について   馬場淳 保団連副会長

馬場淳副会長は、この間、改訂の議論を進めている歯科医療改革提言の内容について報告を行った。

検討中の提言には、歯科医療のニーズの変化やそれを踏まえた歯科医療提供体制の充実、予防の重要性などが盛り込まれ、2040年を見据えて保険でより良い歯科医療を目指すことなどが語られている。馬場副会長は、それらの実施には歯科医療費の総枠拡大が必須であることや、そのための財源は運動によって勝ち取っていくことなども語り、署名活動や自治体への意見書送付など、行政などに対して諦めずに働きかけていくことを訴えた。

 

3.特別報告 「全日本民医連『歯科酷書第4弾』(仮)」 全日本民医連副会長(歯科部長)

 岩下明夫 氏

全日本民医連副会長・歯科部長である岩下明夫氏からは、この間発行された『歯科酷書第4弾』の報告が行われた。

今回の歯科酷書では、コロナ禍で集約された47の困窮事例の特徴を報じている。岩下氏は、若年者の困窮が目立つことや、歯科受診につながった経緯として、行政だけでなくインターネットを通じて受診につながった事例の増加などを報告し、無料低額診療事業などの社会資源の更なる活用が求められていることを述べた。また、集約事例のうち44%が治療中断となっていることも指摘し、困窮者に対する継続的な治療実施の困難さも語った。

 

4.各地域で「保険で良い歯科医療を」連絡会の立ち上げと、「保険で良い歯科医療の実現を求める」署名の取り組みを   宇佐美宏 保団連歯科代表

集会の最後には、宇佐美宏歯科代表が、この間に行った全日本民医連との懇談の内容を紹介。「保険で良い歯科医療を」全国連絡会で来年1月から取り組む署名運動への協力を呼びかけた。さらに、歯科医療費総枠拡大のためには、歯科医師含む医療関係者だけでなく、患者・国民を巻き込んだ運動が必要であるとし、各地域での「保険で良い歯科医療を」連絡会の立ち上げなども訴えた。