【談話】軍事力拡大に突き進み、医療・社会保障費抑制に固執する 「骨太の方針2022」に抗議する

※保団連は骨太の方針2022に対し談話を発表しました。PDF版はこちら

                            2022年6月8日

全国保険医団体連合会

会長 住江 憲勇

 

軍事力拡大に突き進み、医療・社会保障費抑制に固執する

「骨太の方針2022」に抗議する

 

政府は6月7日、2022年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。当初、新自由主義からの転換を掲げていた岸田首相だが、「骨太の方針」では、物価上昇や企業成長を重視するアベノミクスを踏襲した上、更に5年以内の防衛予算倍増を念頭に「防衛力を抜本的に強化する」方針を打ち出した。また、国民が切実に求める賃金増ではなく、資産所得倍増として国民の預貯金を元本割れリスクをはらむ資産運用などに投げ込むよう促している。総裁選での眼玉公約であった、大株主ほど税負担が軽くなる金融所得課税の見直しは棚上げされている。岸田政権が掲げる「新しい資本主義」とは、大企業の成長重視に偏重した新自由主義の焼き直しと言わざるを得ない。

 

「骨太の方針」では、医療・社会保障について、様々な負担増を盛り込んだ「改革工程表」を継承した上、2023年度政府予算でも社会保障関係費の自然増を高齢化の伸びに留める方針を続けるとしている。長引く新型コロナウイルス感染症拡大の下、医療・社会保障の脆さが浮き彫りになっているにもかかわらず、これまで同様、医療・社会保障抑制を続ける政府の姿勢は到底認められるものではない。

重大なのは、患者・国民が特に望んでもいないマイナンバーカードの保険証利用(オンライン資格確認)について、23年4月より医療機関にシステム導入を原則義務化する方針を打ち出した上、今後保険証の原則廃止まで示したことである。不要不急のマイナ受付体制の未整備を理由に、地域において公的保険医療が確保できなくなる事態にもなりかねない上、国民には事実上マイナンバーカード取得の義務化を強いる形となるものであり、断じて容認できるものではない。

 

また、「骨太の方針」では、医療提供体制に関わって、「国民目線での改革を進める」として「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」を盛り込んでいる。「かかりつけ医」のあり方に関わっては、既に財務省財政審「建議」は、医療費抑制を念頭に、かかりつけ医機能の要件を法制化した上で、これらの機能を備えた医療機関をかかりつけ医として認定する制度の創設(利用希望者は事前に医師を登録)を提案しているが、フリーアクセスを制約し事実上一人の医師や一医療機関が一人の患者に対応するような仕組みでは、患者の疾病管理・健康確保などは困難なのが現状である。登録制や認定制度などによるのではなく、プライマリケア機能を発揮し地域で身近で頼れる診療所に向けて、マンパワー確保や設備改善などへの手当てとともに診療報酬改善、後方病床確保などきめ細かな支援こそが必要である。同様に、対面診療を間引くことを奨励するリフィル処方箋整備、オンライン診療促進や病床削減を進める地域医療構想推進などは「骨太の方針」より削除すべきである。

われわれは、軍事力拡大に突き進む一方、医療・社会保障費の抑制に固執する「骨太の方針」の閣議決定に強く抗議するものである。