女性医師・歯科医師「仕事と家事の二重負担」くっきり

開業医の意識実態基礎調査より

2022年3月3日
全国保険医新聞2022年3月5日号より

医科・歯科の開業医会員を対象に行った「開業医の意識・実態基礎調査」を男女別に分析したところ、女性医師・歯科医師が仕事と家事労働の「二重負担」に陥っている状況が浮かび上がった。
医学部入試差別問題が発覚した際、「女性医師が増えると(産休・育休・時短勤務が増えて)現場が回らない」という声があったが、この背景には、過労死ラインを超えるような医師の過酷な働き方に加え、根強い性別役割分業意識がある。
調査では、女性医師は半数が平日も2時間以上の家事・育児・介護を行う一方で、男性医師は半数が「0~30分以下」。実労働時間を見ると、9時間以上の割合は男女で差はなく、夫婦とも医師または歯科医師の場合でも平日家事時間は女性の方が圧倒的に多かった。

    1. 調査の実施時期
      2021年9月1日~9月30日(一部9月末より10月上旬まで)
    2. 調査方法
      ①調査対象…医科、歯科の診療所(有床、又は無床)
      医科・歯科開業医会員(病院会員、勤務医会員除く)86,590人(2021年6月1日付)の各10%を対象として、全国51の各保険医協会・医会ごとに無作為抽出した8,659人を調査客体とした。
      調査客体:8,659名(医科:4,978 名、歯科:3,681名)②調査票は医科・歯科別とし、各保険医協会・医会より調査対象会員に郵送した。回答者からは返信用封筒で保団連宛てに返送していただいた。
    3. 回収結果
      ①回収数:2,575名(回収率 29.7%)、うち有効回収数:2,565名。
      有効回収数の内訳
      医科 :1,356 名(回収率 27.2%)
      歯科 :1,209 名(回収率 32.8%)
      合計 :2,565名 (回収率 29.6%)②年齢分布では、医科、歯科ともに「60歳代」が最も多く(36.9%、34.2%)、次いで、「50歳代」が(27.5%、29.4%)。③性別は、医科は男性85.5%・女性13.2%。歯科は男性88.9%・女性10.7%。

 

■性別役割分業は女性医師の7割が反対意見。医科・歯科とも反対意見が上回る

「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方については、医科・歯科ともに反対意見(「どちらかと言えば反対」「反対」)が賛成意見(「賛成」「どちらかと言えば賛成」)を上回った。男女別に見ると、女性は医科で70.9%、歯科で62.8%が反対意見なのに対し、男性は医科で41.5%、歯科で37.6%にとどまった。

 

図1 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について

■女性医師は半数が平日も2時間以上家事労働。男性は「0~30分未満」が最多

1日の家事・育児・介護時間(平日)は、男性は医科46.6%、歯科39.5%が「0?30分未満」で最多だったのに対し、女性は医科45.2%、歯科38.8%が2時間以上だった。

 

図2 1日の家事・育児・介護時間(平日)

■夫婦とも医師・歯科医師でも、家事等時間に大きな差

夫婦とも医師・歯科医師の場合の平日家事・育児・介護時間を見ると、男性は「0?30分未満」が34.2%で最多、女性は「2?4時間未満」が39.3%で最も多く、同じ医師・歯科医師でも男女で平日家事等時間に大きな差があることが分かる。

図3 夫婦とも医師または歯科医師の場合の平日家事時間

■女性医師・歯科医師の「二重負担」

実労働時間を男女別に見ると、女性の方が「7時間未満」の割合がやや高く、「7~9時間未満」が低いものの、「9時間以上」は医科・歯科とも大きな差はなかった。
一方で、フルタイム勤務(実労働時間7時間以上)の平日家事等時間を見ると、男性は医科47.0%、歯科39.2%が「0~30分以内」で最多なのに対し、女性は医科「2?4時間」37.8%、歯科「1?2時間」28.3%が最多だった。
家事等時間と仕事時間を合わせると、女性により多くの負担がかかっていると言える。

 

図4 実労働時間

 

図5 フルタイム勤務者の平日家事時間