非現実的な保険証廃止 オンライン資格確認を考える③

 骨太の方針2022は、マイナンバーカードの保険証利用などオンライン資格確認の導入義務化を打ち出した。問題点を連載で解説する。第3回は、保険証の廃止について考える。(随時掲載)

骨太の方針は、オンライン資格確認について、医療機関等に2023年4月より導入を原則義務付けるとした上、その状況等を踏まえて保険証の原則廃止を目指すとしている。加入者から申請があれば保険証は交付されるとしているが、原則マイナンバーカードで受診するということである。
国への不信、マイナカード申請の煩わしさなどからマイナカードを申請しない人も多い。紛失による情報漏洩などを懸念してマイナカードを家に保管している人も少なくなく、そうした人に医療機関への持参を強要することには無理が多い。保険証の廃止は非現実的であり、マイナカードを保険証として使うかどうかは個々の患者の任意に委ねるのが自然である。

命を盾にマイナカード強制

マイナカード取得は任意とされる今でも、国は公務員に対して採用可否や人事考課をちらつかせて家族ぐるみでマイナカードを取得するよう求めている。保険証が原則廃止となれば、国や保険者などより加入者にマイナカードを取得して受診するようさまざまに誘導、さらには圧力がかけられていく事態が容易に想像できる。
日弁連は、国民皆保険制度を採用している我が国で、保険証券面を廃止してマイナカードに一本化する施策は実質的に全国民にマイナカード取得を強制するのと同じであると批判している(2021年5月)。命と健康に関わる医療を人質に取って、プライバシー権侵害の疑いも濃いマイナカードを強制するようなことは許されるものではない。

あまりに乱暴で無理筋

加入者から申請があれば保険証は交付されるとしており、保険者には申請意向を確認する実務が課されることが考えられる。
しかし、わざわざ加入者に申請の有無を確認する手間はかけずに、これまで同様、保険証は原則交付してマイナカード利用は任意とする形の方が簡便かつ合理的といえる。
保険証の原則廃止は、マイナポイントや宣伝などでも普及しないマイナカードの保険証利用について、法令(保険証原則廃止)で強制して進めればよいという、あまりに乱暴で無理筋なものと言わざるを得ない。