コロナ禍と医療現場 手探りで後遺症外来

 新型コロナ回復後も後遺症に悩む患者の増加を受け、かかりつけ医による後遺症外来などでの治療が課題となっている。コロナ後遺症外来に取り組む神奈川協会の石田仁也氏に現状と課題を聞いた。(神奈川県保険医新聞より転載)

「倦怠感が続き仕事ができない」、「焦げ臭いような異臭がする」……。新型コロナは10日間の療養を終えても治りきらない患者が多い。療養解除後も患者が苦しんでいるならフォローする。それが一次医療機関の役割だ。そんな思いで昨年2月、新型コロナ後遺症外来を開設した。
不安はあった。当時は後遺症の概念さえ不明瞭で、症状も持続期間も様々。普段使う薬の効果が低いので漢方薬を勉強するなど、手探りの状態が続いた。
しかし反響は想定以上。「診療を断られた」との訴えは少なくなく、デルタ株流行時は新患が毎日10人ほど来院した。

入念な検査と休養が大事

経験を重ねて気付いた診療のポイントは検査。コロナ罹患で心肺機能にダメージを受けている可能性も考慮し、血液検査・頭部MRI・胸部CT・心電図検査などを入念に行う。時間はかかるが、甲状腺疾患など別の疾患が見つかることもある。次に大事なのが休養だ。頑張る人と肉体労働者は長引く傾向にある。
ほとんどの患者は1~数カ月で概ね回復し、傷病手当金を必要とするのは当院の場合4割程度。一部報道にある長期休職・困窮に陥る重症者は稀だ。状況に応じて二次医療機関、味覚・嗅覚障害は耳鼻科、抑うつ等は心療内科を紹介している。
今は子どもの後遺症が気にかかっている。ある子は倦怠感で学校を休みがちになり、不登校に。一生を左右しかねない問題だけに、サボりと誤解されてはやりきれない。小児科との連携を一層深めたい。
今後は病態解明、治療法確立、職場の理解促進だけでなく、患者会があると当事者ならではの苦しみを分かち合えると感じている。
地域医療を支えることへの憧れは、開業医である父の背中を見て培った。「病気を診ずして病人を診よ」。この言葉はいつも心に留めている。