ブックタイトル医の倫理
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医の倫理
歴史を踏まえた日本の医の倫理の課題ていますから、非常に政策的なものを感じますね。香山今の日本の状況で、こういった問題をジャーナリズムが調査して報じるというのは、やはり難しくなってきているように感じますか?近藤難しいですね。まずそういうスタッフをきちっと組織できるかどうか。若い世代に一からきちっと伝えなきゃならない、それだけでも大変な作業です。青木局でやるというところも大分なくなってきたんじゃないですか?近藤そうですね。昔はまだそういう理解者が結構いましたが、今の50歳前後のプロデューサーは「もういいじゃない」という…青木戦後生まれが現場にいる頃は、やはり何か意識があったんでしょうね。だからできたけれど、10年経って、次の世代になる50代の人は「もういいんじゃないか」と。それと時代の空気って日本でよく言いますが、なんかそういうことには触れたくないという、いやぁな雰囲気がありますね。香山ここ1週間でも中学の教科書に介入があり、慰安婦の強制連行という記述が削られたとか、アイヌの土地が奪われたという記述から明治政府が土地を与えたという記述に書き替えるよう指導されたとか、いわゆる歴史を修正するような動きが権力の介入によって行われています。その中でこういった報道を推し進めるとなると、さらに日本に対して不利になるんじゃないかというような圧力や懸念もあります。逆にテレビの世界はどうなんでしょうか?近藤特定秘密保護法などが行使されると、真っ先に指定されて出て来なくなりますよね。関係者もいなくなってしまう、記録も出て来ない、外国の資料には限度がありますし、アメリカが一番重要なところは出してくれない、となると非常につくりにくい状況になってきますね。香山どうすればいいんでしょうね。私たち、戦争と医の倫理を検証する会ということでこういう活動をしているわけですが。青木やはり地道に少しずつ、あきらめずにやるしかないでしょうね。香山私もこういった会にいると、特に若い世代から、「また日本の名誉を傷つけたいのか」といったクレームみたいなものが来て残念なことがあります。決して日本や医学をおとしめたいと思ってやっているわけではなく、本当に起きた事実に目を向けて、二度とこうしたことがないようにするためにはどうしたらよいかということを考える上で、むしろ、国や医学の尊厳をきちんと保つという意味でも私は必要だと思っているのですが、どうもそうは捉えられない。名誉を傷つけたり、言い過ぎかもしれませんが反日的なプロパガンダに使用されるためじゃないかなどと言われてしまう。青木さんにはそういったプレッシャーはなかったですか?青木そういうのは全くなかったですね。アメリカに住んでいるせいかもしれませんけどね。面白かったのは、カリフォルニア大学バークレー分校に頼まれて、英語で731部隊にかんする講演をやったのですが、中国の学生が来ていて、「よく日本人でこういうことができますね」と驚いていたんです。やはり中国ではできないんですね。近藤ところが今、中国では反日抗日の材料だったらどんどん発掘して、一般公開、開示しようという政策がじわじわと浸透しています。そういう流れになってきていますから、余計に日中関係がこのままでは難しい。青木政治的に使おうとしていますね、明らかに。難しいですね。香山時間が迫っていますので、最後に何かおっしゃりたいことがありましたらどうぞ。近藤一つ感じることは、アメリカとの関係をきちっと踏まえてやらないと、この先開けないなということです。まだクリントンの時代に、大統領を辞める時にハンコついて「日本帝国政府情報公開法」という法律が成立し、ワーキンググループができて、ドーッと資料が出たんですよね。731の。それがリスト化されたりしてアクセスしやすくなったんですが、それでもまだ出てきていないものがあるわけです。かつてOSSやCICという対敵諜報部隊なんかが集めた731関連の資料が、戦後CIAが設立された時にそちらへ移管されているんですね。どうやら非常に肝心なものだけはCIAが保管していて、アメリカのワーキンググループも手が届かないところにある。これに迫るためには、逆に日本からのいろ17