ブックタイトル医の倫理

ページ
21/48

このページは 医の倫理 の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

医の倫理

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

医の倫理

3歴シンポジウム史を踏まえた日本の医の倫理の課題歴史を踏まえた日本の医の倫理の課題Panelist 1私は今回、医の倫理という観点から見て、15年戦争期に日本の国と医学界が行ったことはどういう意義があるのかをご説明していきたいと思います。私は歴史学者ではないので自分から資料を発掘するというのはあまりありませんが、自分の専門分野において研究方法は学んでいますので、後追いではありますが引用している証拠の裏は取っています。もちろん信用のおけない証言もないわけではありません。そういうものは外していますし、どういう資料に基づいたかを資料に記してありますので、ご自分で調べたいと思われる方は参考になさってください。医療倫理の5つの領域私の専門は倫理学です。同時に大阪市立大学の医学部で必修科目として医療倫理学を10年ほど教えています。そのうちの1回を医学研究倫理にあてて、NHKが放映した731部隊の番組から炭疽菌リポートに関する部分を学生たちに見せています。まず、日本軍の医学犯罪あるいは日本の医学犯罪というのは、医療倫理においてどういう位置づけになるのか。医療倫理というのは少なくとも5つくらいの領域があるだろうと思っています。1つ目は診療、2つ目が研究、3つ目が教育、4つ目は経営、5つ目が政策。私自身は、日本が行った15年戦争期の731部隊等は「戦争犯罪」というより、むしろ「医学犯罪」であると位置づけています。というのは、私は医療倫理学をやっておりますので、やはり医療のことをみるわけです。731部隊で行われたようなことは、戦争がなければ起こらなかったのかというと、必ずしもそうとは言えない。それは医学研究の歴史をみていけば明らかです。あそこまで残虐ではないにせよ、被験者の方を実験台にするこつちや土屋たか貴し志氏(大阪市立大学大学院文学研究科准教授)とは歴史的にかなり行われてきている。それをトータルに見て、15年戦争期が特異だったという観点はとっていません。その辺りの比較研究というのが私の1つのテーマです。医学にとっての臨床研究臨床研究とは、要するに人を対象とする実験のことです。つまり人体実験のこと。これは医学研究に限った話でなく、薬の試験なども含まれます。大事なのは、「医学にとってそれは必要なことだ」というところから医学研究倫理はスタートしているということです。つまり「人体実験はとんでもない」という立場からスタートすることができないんですね。人体実験は医学にとってまさに必要である。ではどういうのが許されて、どういうのが許されないのか?その基準は何か?というのが、現在の医学研究倫理の探求しているところです。それを倫理学的に考えると、要するに「医学の目的は非常に良いものだけれど、その過程ではちょっと良くない手段を使わざるを得ない」ということです。だからこそ医19