ブックタイトル医の倫理

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医の倫理

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概要

医の倫理

シンポジウム学倫理というのは、ちゃんと人を人として扱わなければいけない。動物のように使い倒してはいけないということを学生たちに強調しています。これはもちろん政策についてもそうですし、教育についてもそうです。診療については少し異なりますが、経営についても同じです。研究審査と倫理指針研究審査の問題と731部隊も、全く関係のない話ではありません。そこに文脈をつけることが私の役割だと思っています。医学研究に関して「倫理指針」が2000年頃からたくさんつくられました。最近では臨床研究と疫学研究の指針が統合され「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」が4月から施行されています。これらの指針が出てきた理由は、簡単にいうと、国策です。バイオテクノロジーで日本は遅れをとってはいけない。医学研究を進めるために指針が必要だ。これは実は論理がひっくり返っているのですが、日本ではそのように認識されているところがあります。ではなぜ「研究審査」なんて面倒なことをするのか。実は研究を進めるためではない、ということを私は言いたい。少し細かい話ですが、研究には2通りあります。患者さんに利益がある可能性があるものと、731部隊で行われたように実験台になる人に全く何の利益もない研究です。こういう区別も、一応、研究倫理の分野ではなされています。「診療」と「研究」を区別することも大切なことです。これが、研究倫理にとっては非常に難しところがある。なぜなら実験的治療というのは、一見、診療のように見えるわけです。たとえば生殖医療関係では「臨床研究」という名の下に受精卵診断や遺伝子スクリーニング等が行われていますが「臨床研究」というなら、それは研究であって、診療ではない。なのになぜ患者さんが自費で何十万円も払わされるのか?と思っています。研究倫理の3つのポイント研究不正の防止ということが最近は強く言われるようになっていますが、私が見るところ、研究倫理の重要な目的は3つあります。まずは研究不正の防止です。これは皆さんもご存知だと思いますが、難しいのは実際にはなかなか見つけられないということですね。2番目に、市販される製品で被害を被らないようにするためには、製造過程でしっかりした研究開発が行われなければいけません。そしてそこに承認等の規制が入らなければいけないという考え方です。また、安全だとしても効き目がないのではお金を払う意味がないので、その辺りをきっちり調べるべきだということ。これが消費者保護ということになるわけです。一番主張したいのは3番目です。研究対象者を守るべきだということ。医学だけでなく、一般に科学研究や技術開発の対象になる方を、できるだけ保護しなくてはいけない。731部隊は典型的な例ですが、過去には人権が著しく侵害されてきた例がたくさんあります。なのでそれを防がなくてはいけない。あるいはそれを守るための基準はどこにあるのか?ということを定めなければいけません。それが今日の医学研究倫理ということになります。ニュルンベルク綱領と判定基準ドイツでは医学犯罪が戦後明らかになり、アメリカが裁判をして、今日「ニュルンベルク綱領」と呼ばれる基準が判決文の中に示されました。それに対して、日本では医学犯罪が隠され続けています。実際の制度としては、インフォームド・コンセントを皆さんもご存知だと思います。そして研究審査ですね。これらができてきたのは、アメリカの国内の政策による面が非常に大きいということです。ナチスについては、裁判で医師が裁かれて、実際に処刑もされています。その裁判の判決の中で、基準は何か?ということを示しています。裁判で「この人たちは有罪です」と言うからには、それがなぜ犯罪にあたるのか?ということを当然説明しなければいけない。特に、囚人を使った実験はアメリカもやっていて、ドイツの弁護団がそれを指摘し、アメリカとドイツはどう違うのか?ということを明らかにする必要があった。その判決の部分が「ニュルンベルク綱領」と呼ばれるようになりました。それに対して日本では、虐殺までしたけれども免責されたということです。世界的に行われてきた医学犯罪医学犯罪はいろいろありますが、軍医の訓練のように、一部は教育分野ということもできるかと思います。また吉村寿人が自分で発表したものも見つかっていますし、九州大学の実験については午前中の近藤先生のビデ20