ブックタイトル医の倫理
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医の倫理
歴史を踏まえた日本の医の倫理の課題ことになります。主体性のなさが、今も医療界だけでなく医学界全体につながっています。データと引き換えに戦犯免責を得た731医学関係者は無反省のまま社会復帰しました。社会から医学犯罪は闇へーというのは今日のお話にもありましたが、そのような中、GHQの下で1947年に日本医師会が新生します。そして日本医学会はその中に置かれました。1948年頃、日本医師会に世界医師会への加盟勧誘があったそうです。その頃はジュネーブ宣言ができて各国医師会への受け入れ勧誘を始めた頃です。1950年、田宮猛雄日本医学会会長が兼任で日本医師会会長になっています。そして51年に医師の倫理を制定、同年に世界医師会に加盟しています。これは偶然にしては奇妙に一致すぎる。日本医学会の意向を日本医師会に受け入れさせたのだろうと思われるわけです。日本医師会は世界医師会の医の倫理を何とか受け入れないように動いています。医師の倫理制定がそれの始まりだと思います。その医師の倫理であります。これが日本医師会のロゴですが、蛇で乳棒を表しているそうです。薬九層倍といいますが、医術を金儲けに使えというのか、ここには杖がございません。医師の倫理は総則でこのように言っています。“医師は常に人命尊重を念願すべきである。医師は正しい医事国策に協力すべきである。”これはまさにジュネーヴ宣言の9項10項を意識しています。つまりジュネーヴ宣言を無視した医の倫理、それを隠すための医の倫理であろうと。そしてこれが改悪されて今日の医の倫理につながっているわけです。2000年の医の倫理綱領“医師は医療を受ける人々の人格を尊重し”では、「常に」という言葉が消失しました。2008年に改訂された医師の職業倫理指針の序文には、“その倫理は患者の自立性(Authonomy)の尊重を基本にしている”が、“法律の不備についてその改善を求めることは医師の責務であるが、現行法に違反すれば処罰を免れない”と書かれています。さらに2013年、日本医師会綱領が出ました。“日本医師会は医師としての(中略)人間の尊厳が大切にされる社会の実現を目指します”よく読めば時代遅れで、これが戦前であれば素晴らしい発想だなと気づかれるだろうと思います。どうしても「人間の尊厳を守る」と言えない、言わない日本医師会です。第三者の意向が人権問題へハンセン病の隔離については皆さんご存知のことと思います。日本のハンセン病の専門家と政府は世界の流れを無視し、国会で「絶対隔離、断種、逃亡罪の強化」を強行に主張。そして専門家が要らぬ長期隔離に働き、患者の人権問題になりました。第三者である国の意向が、医師や御用学者を介して患者の人権問題になったものと理解できます。薬害エイズに関しては安部氏ご自身の本を引用します。“たとえこれを一番高い発病率の15%とし、エイズを発病した患者は3年以内に87%が死亡するものとしても、残りの85%の抗体陽性者は長く、あるいは一生エイズにならないのである。”だからという理由で発病すれば高率で死亡するであろう15%の患者を切り捨てたわけです。「統計的に極めて低い確率でしかない」と言い切って、血友病患者をエイズ研究の手段にしたわけです。研究者としての意向が、主治医の意向よりも優先されて患者問題になった。さらに製薬企業の意向が優先されて構造薬害になったということであります。だからこそ、日本医学会には731医学への検証と反省を、日本医師会には医の倫理を世界の常識へ、何より我々自身がしっかり意識改革しなければならないのです。医の倫理を日本にもたらしたフーフェランド世界医師会が、医学研究における医の倫理および医療全般における医の倫理をつくりました。その元を遡っていくと、ドイツ人医師のフーフェランドの医の倫理に突き当たります。彼はこう言っています。“その際医師は患者を決して手段として見るのではない。常に目的として見なければなりません。つまり、患者を生物実験の単なる対象として、あるいは単なる医術の対象として見るのではなく、患者を人間として、自然そのものとして見なければならない”これはドイツ語で書かれたものがオランダ語に訳されて日本に入ってきました。それを緒方洪庵が訳して「扶氏医戒之略(ふしいかいのりゃく)」という医の倫理の抄録にしました。その中にはこう書かれています。“その術を行うに当たっては病者をもって正鵠とすべ33