ブックタイトル医の倫理

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医の倫理

シンポジウムし。決して弓矢となすことなかれ。”このフーフェランドの考え方はどこから来たか。更に遡るとカントに当たります。この2人には交友がありました。道徳啓上学原論には、「君自身の人格ならびに他の全ての人の人格に例外なく存在する人間性を、いつでもまたいかなる場合でも目的として使用し、決して手段として使用してはならない」と書かれています。全ての人が例外なく、ということが天賦人権説であり、起源だと思います。適塾の塾生であった福沢諭吉は、有名な「天は人の上に人をつくらず、人の下に人をつくらず」という言葉を残していますね。カントの自立論ヘルシンキ宣言では、被験者の人権を守るために必要な3者の役割を決めています。「被験者の主体的な同意が必要」これはまさにインフォームド・コンセントです。「自己決定には十分な説明が必須」である。説明内容の責任は研究者にあり、その説明内容をチェックするなど研究者を支援することが被験者の人権を守ることにつながります。「人権侵害になっていないかをチェックするための相互評価の組織」これがIRBなどと呼ばれるものです。同じ構造が世界医師会の医療全般における医の倫理にもありますし、カントの『永遠平和のために』の構造にも見られるわけです。患者の人権を守るため、世界医師会は医師の在り方、患者の在り方、医師会の在り方をそれぞれの宣言文書で示しました。これを理解するためにはカントのAuthonomyの構造を理解する必要があります。Autonomyは自律と訳されていますが、カントは「神に近づくために、理性による本能からの自立。これが人間の性質を表す。人間性である。そしてこのような人間には尊厳が伴う」と言っています。理性によるSelf-regulation、これは自己規制と訳されることが多いですが、これが常識でいう「自律」です。これによるIndependence(自立)が大事なわけです。福沢諭吉は造語で「独立自尊」という言葉をつくっていますが、独立がIndependence、自尊というのは自己規制であり自分を卑下しない(Self-regulation)ということになるでしょう。簡単にいうと主体性ということかと思いますが、国民を守るため、日本の自立のためにということでこういうことを言っております。自立のための相互評価を世界医師会の「患者の人権を守るための在り方」でも、患者に対してPacient Autonomyという言葉を使っています。自己決定(Self-regulation)による医師からの自立(Independence)が必要であると。これがインフォームド・コンセントであり、自己決定の医療と呼ばれる内容です。これがなかったために薬害エイズの時は、かなり医師にdependentであったと聞いています。また医師に対してはClrinical Autonomyという言葉をあてて、主治医としての判断(Self-regulation)による第三者の意向からの自立(Independence)を述べたのがジュネーヴ宣言でした。そしてここが一番大事だと思いますが、医師会に対して、Professional autonomyという言葉をあてています。相互評価ですね。Self-regulationによる第三者からの自立(Independence)が必要であるが、人は過ちを起こすものであるからこそ、相互評価という組織でもって是正していかなければいけないということです。この本は医療安全にとっては有名な本です。タイトルは『To err is human : making a safer medicalsystem』ですが、ここにethicsを入れると、世界医師会の考え方を表した本ということになります。カントの『永遠平和のために』は、人権を守ろうとする国民、そのような国民を守るための民主的な国家、そのような国家を支援するための国家連合として国連があると示しました。世界医師会の医の倫理は、患者の人権を守ろうとする医師、そのような医師を守るための各国医師会、そのような医師会を支援するための医師会連合ということになり、それが世界医師会の役割であると唱っています。医学会・医師会への働きかけと自らの意識改革を一方、日本医師会は「世界の常識」入国阻止へ動いております。始まりは医師の倫理を制定した1951年ですが、Pacient autonomyに対しては、インフォームド・コンセントを「説明と同意」と訳し、患者の主体性を弱くしました。リスボン宣言の採択時には棄権をしています。また、Clinical autonomyに対しては、ジュネーヴ宣言の9、10項を隠そうとする情報操作をしています。Professional authonomyに対しては、カタカナのプロ34