ブックタイトル医の倫理

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医の倫理

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医の倫理

パネルディスカッションいだろうか?と検討していくこと。その上で本当だと思われる資料もたくさんありますので、それを私は今日の冊子の中に引用として示しています。これももしかしたらどこかに間違いがあるかもしれませんが、そういうのを確かめていくのが歴史研究であり、なおかつ科学的研究でもあり、知識の探求なのだと思います。私からの意見はこれくらいにさせていただきます。川田原子力被曝の問題を、自分自身が経験した薬害エイズの問題から述べたいと思います。福島の原発事故によって放射能が未だに漏れ出しているという現実があるわけですが、ほとんどの人は既に終わったかのように思われているかもしれません。しかし今も地下水に放射能が漏れ出ていて、汚染水はタンクに溜まっている。実際には海にも大気中にも流れ出しているにも関わらず、この国は、オリンピックをすることを目的に、ある意味その問題から目をそらし続けているというのが現実ではないかと思っています。私は『この国はなぜ被害者を守らないのか』という本を出しました。その中でも触れていますが、やはり薬害エイズと原発事故被害者、被曝者との関連はあると思っています。先ほどの安部英医師の話に出てきた通り、「0.1%の人しか発病しないから大丈夫なんだ」という切り捨てですね。疫学や原発被曝者の問題にも切り捨てがあるのではないか。特に原発事故を収束させようと働いている労働者たちは被曝し続けていますし、現実として福島の住民を住まわせ続けている、そういった切り捨てもあると思います。チェルノブイリの例を出して「4年後でなければ出て来ない」と言っていた小児甲状腺がんの問題もあります。事故前と事故後を検証することは前を測ってなければできないわけですから、事故から20年後にしか子どもの比較はできないということで、結局チェルノブイリの原発事故の被害者も20年経ってからようやく認められたのです。そういうことを今回の福島の事故で繰り返してはいけないと思い、裁判を経なくても医療的な保障を受けられるようにと、「子ども被災者支援法」をつくりました。というのは、薬害エイズ裁判の時に、原告である被害者の側が立証しなきゃいけないということが非常に大変な作業だったのです。子ども被災者支援法は議連法?だったためにまだ実施されていませんので、しっかり実施法まで含めてつくっていかなきゃいけないというのが残された課題です。先ほどもお話がありましたように、3人に1人が癌で死ぬ時代、そしてこれからは2人に1人が癌で死ぬ時代です。だから原発の放射能を浴びて癌化する人は本当にわずかだ、癌になる人はもっと他の原因で癌になる人の方が多いのだから、原発による被曝によって癌になる人の数は対した事ないというところで切り捨てられているのが今の現実ではないか感じています。そこでさらに医療者の人たちまでもそうした立場に立ってしまうと、そこで一般の人がいくら言っても敵わなくなってしまう。医師の免許である国家試験を通ったということが、ある意味科学性を担保することになってしまって、その他の研究者や学者が意見を述べても、専門家が判断したのだからということで一掃されてしまうわけです。それが国の政策のもととなり、とにかく医師の研究会で認められれば「影響ない」ということになってしまう。本当にその医師がどういう立場に立つのか?ということが重要になってきます。先ほど一般の人と同じように倫理道徳を考えなければならないのではないかというご意見がありましたが、医師であるということは、一般の人よりも高い倫理観が必要があると僕は思っています。高次の倫理観を持って取り組んでいってもらわなければならない。ただ、そうはいっても医者も人間ですので、間違いを犯すかもしれない。そこで必要になってくるのが、先ほど先生がおっしゃったヘルシンキ宣言の3番目、IRBです。この倫理審査会は、各施設にあるはずです。皆さんが働いている大学や病院に倫理審査委員会というものがあり、倫理規範をきちんと守っているかどうか、ガイドラインと呼ばれる指針を守っているかどうかがが審査されています。倫理指針というものは日本にたくさんあります。文科省と厚労省がつくったもの、またバイオに関する倫理指針や、いろいろな倫理指針が乱立しているんですね。それらがようやく昨年12月からまとめられつつあります。特に生物に対しては非常に進んだ倫理指針が出ていまして、そういったものをまとめていかないと、それぞれがやっている研究が、どの指針を守っていいのか分からなくなるのです。それは現場の人がわからないだけでなく、倫理審査委員の委員のメンバーの人もわかっていない。そこで、倫理審査委員会というものがどれだけちゃんと機能しているのか?ということを、厚生労働省が昨年1年間の予算事業として調査し、いわゆる認定制度のようなものをつくりました。実際には予算を6000万円つけて下請けに出し、それをさらにパソナのメディカルの子会社の孫会社に出して行なわれたのですが、その指針の審査がようやく3月末にできました。しかしその結40