ブックタイトル医の倫理

概要

医の倫理

パネルディスカッション私は歴史研究者ですから、なぜこんなことになったのか、原因を考えます。いろいろありますからもうお話できませんが、ナチ独裁を成立させたことの恐ろしさを感じます。日本の民主主義が、今いかに危機的であるか。自民党の麻生副総裁が２年程前に「ナチの手口を学んだらどうかね」と公然と言いましたよね。あの真意はよく分かりませんが、そういうことを考えた時に、根本的なところで今の日本の政治がどういう方向に行くのかということも同時に考える必要があると思います。もちろん安倍さんがレイシズムでないことを願いますが、この絶対的な自民党体制の下で、どういう新しい形の政治の仕組みをつくるのか、注意してみていかないといけないと思います。他にも言いたい事はありますがこの辺にします。平岡先ほど虐待の問題が出ていましたが、やはり、日本国民全体の人権意識のレベルの低さが原因としてあるのではないかと思います。それが「人権尊重」という言葉に代表されていると思います。それが「擁護」にならないとどうしてもなくならない。人権の元は人間の尊厳だと思うのですが、それを大事にすることをまず教えなければいけません。患者の人権擁護は国民の人権擁護から。人権尊重の元を探ってみますと、日本医師会医の倫理と同じことが日本国憲法でも起こっています。それは第13条であります。これは先ほどのスライドですが、これを少し書き直しますと、「特定秘密保護法によりますます情報強者になっていく政府が、情報弱者である国民の人権を尊重する」となります。これが現行憲法であります。これでは時に国民の人権問題を起こすだろうし、ましてや、かろうじて歯止めになっていた天賦人権説を否定する自民党改憲案が通れば大変なことが起こるだろう。共にリスペクトを「尊重」と訳しているところが問題であります。第13条、これが日本国憲法として通っています。“全て国民は個人として尊重される。生命、自由、および幸福追求に対する国民の権利については限りがあって国政の上で最大の尊重を必要とする。”何かおかしいものを感じられませんか？国民は「尊重」、それに伴う権利は「最大の尊重」。尊重というのがどうもおかしいのではないか。この２つの文が１つになっていない。それで、英文を見てみました。“respected as individuals.”“Their rightは、shall bethe supreme consideration in～”となっているわけであります。私が訳しました。また下手くそな英語です。「全て国民は個人として尊敬されねばならない。」「国民の権利は最大の配慮を必要とする」。しかしそこで「consideration」になぜ「尊重」という言葉を使ったんだろうか。どうもこれは誤訳または意図的な誤訳ではないかということで、日本国憲法の誕生を国立国会図書館のホームページで見て調べました。そうしますと、46年２月26日の閣議で、ＧＨＱ草案に沿った新しい憲法草案を起草する。そこでこの全文の仮訳が閣僚に配られたそうです。それは載っております。第13条に相当するのが、Articleの12です。“All Japanese by virture of their humanity shall berespected as individuals.”“Their right to life, liberty and the pursuit ofhappiness within the limits of the general welfareshall be the supreme consideration of all law andof all governmental action.”現行憲法の英文はＧＨＱ草案をほぼ同様です。ただＧＨＱにＯＫをもらうためにはそうせんと仕方ない。まだここは合ってるのです。仮訳を見ますと、“一切ノ日本人ハ其ノ人類タルコトニ依リ個人トシテ尊敬セラルベシ。”尊敬という言葉が入っています。“一般ノ福祉ノ限度内二於テ生命、自由及ビ幸福探求ニ対スル其ノ権利ハ一切ノ法律及一切ノ政治的行為ノ至上考慮タルベシ。”私が訳したのとほとんど一緒でした。これは世界の常識だろうと思います。１、２の文章が一対になっている。どのように現行憲法に変わってきたかということで、この仮訳から現行憲法を見ますと、「その人類たることに依り」というのが省かれて、「尊敬」が「尊重」に変わっている。人間性あるいは人間の尊厳の格下げが起きています。その間に、３月５日案あるいは口語化一次案というものが出されたわけですが、英文はほとんど変わりなし。これがＧＨＱに行きますと「個人として尊敬さ42