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2020年度診療報酬改定特集

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2020年度診療報酬改定に関する歯科談話

※全国保険医団体連合会は、2月7日に答申された2020年度歯科診療報酬改定について、下記の談話をマスコミ各社に送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:235KB])。

 

【談話】歯科医療の危機打開のためにも 歯科医療費の総枠拡大と診療報酬の改善を

 

2020年2月12日
全国保険医団体連合会
歯科代表 宇佐美 宏

1.2020年度診療報酬改定は、本体部分を0.55%プラス、診療報酬全体の改定率は0.46%のマイナス改定となった。医療・社会保障費の抑制政策の中、4回連続の実質マイナス改定である。

2.歯科診療報酬は0.59%プラスで、2018年度の0.69%プラスを下回った。政府はこれまで骨太方針では3年連続で歯科の記述を書き込んだことで「歯科重視」をアピールしていたにも関わらず2018年度さえ下まわる改定率である。これでは、歯科医療の改善どころか、歯科医業経営の厳しい現状を打開することはできない。
 さらに、金銀パラジウム合金(以下、金パラ)の「逆ザヤ」による経費増が歯科医療機関の経営を圧迫している。制度面の緊急対応がなされないままでは、経営が立ちゆかなくなる歯科診療所が続出することは明らかである。

3.今回改定の内容の詳細な分析と評価は、今後の告示や通知を踏まえて改めて行うが、現時点での主な特徴点を指摘したい。
 今回の改定では、主に「口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応の充実、生活の質に配慮した歯科医療の推進」にかかわる項目が盛り込まれた。
 個別項目では特徴的なものとして、(1)歯科外来診療における院内感染防止対策の推進(初再診料の引き上げ)、(2)歯科疾患管理料の見直し、(3)小児口腔機能管理加算及び口腔機能管理加算の扱いの見直し、(4)「歯周病重症化予防治療」の新設、(5)麻酔薬剤の算定の見直しなどがあげられる。
 初再診料については、前回導入された院内感染防止対策のための施設基準の要件に、新たに院内感染防止対策に係る職員研修を行うことが追加され、初診料261点(プラス10点)、再診料53点(プラス2点)となった。院内感染防止対策の費用については、これまで268.16円(2007年中医協)、あるいは約568円(2020年中医協ででた意見)と指摘されている。今回、確かに初再診料の引き上げとなったが、医科歯科格差は解消されず、十分な評価とは言い難い。しかも、前回改定で導入された施設基準・減算制度は継続され、未届けの歯科医院との格差は拡大される。改めて、施設基準・減算制度の廃止を求めるとともに、初再診料の大幅引き上げを求める。
 歯科疾患管理料の1回目の算定について、初診月の場合は、100分の80に減算された。中医協の議論において、「歯管算定患者で、6月~9月の3カ月間に再診がない場合は約50%、医療機関で約25%」との調査結果をもとに初診時の歯管算定の可否が議論となったことからくる対応と思われる。歯科医療費抑制を目的とした、臨床上まったく妥当性のない減算であり、容認できない。本来なら医学管理の重要性を評価し、点数の引き上げが求められるものであり、初診月の減算は行うべきではない。その上で初診月から6か月を超えて歯科疾患の管理等を行う場合は、「長期管理加算」として、か強診は120点、それ以外は100点加算された。施設基準と点数項目に関連性がないこと、同じ医療行為に対する「一物二値」など、「か強診」の問題点をそのままに、さらなる差別化を図り、歯科診療所間の格差を拡大するものである。
 小児口腔機能管理加算及び口腔機能管理加算の扱いの見直しでは、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料として独立点数化し、別日算定が可能となった。これまで加算であったことから算定日が限られ、「必要な治療を十分行うことができない」「算定が困難」との現場の声を受けてのことだと思われる。疾患に応じた点数体系の整備として評価しつつも、改めて点数の大幅な引き上げを求める。
 今回新たに歯周病重症化予防治療が設けられた。歯周病の重症化予防に対し、新たな評価を導入することは必要と考える。ただし、導入にあたっては、不当な包括化を行わないことや、診療現場が混乱しないよう取り扱い等の周知徹底を求める。
 上記のほか、「歯科疾患管理料の初診から2月以内に算定する規定の廃止」「歯科診療における麻酔に当たって使用した薬剤が算定可能に」「CAD/CAM冠の適用拡大」など、協会・医会、保団連の要求項目が一定反映されたことは評価したい。
 歯科技工関連では、中医協では特に議論はなかった。しかし、「令和2年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」では「歯科技工料の調査を踏まえ、歯冠修復及び欠損補綴等の評価を見直す」と記述された。今回、補綴物の技術料についてわずかの点数の引き上げがあったものの、歯科技工料問題の解決には程遠い。歯科技工士の就労改善、歯科技工士の養成・確保のためにも、①歯科技工物の製作にかかるコストを、労働時間等も含めて調査・把握し、原価計算に基づく保険点数の決定プロセスに改める、②保険点数の決定には歯科技工物の製作にかかるコストを積算して行うこと、を求める。
 今回改定の答申では「先天性疾患等起因した歯科矯正の適応症の拡大」が盛り込まれた。この間、子育て世代を中心に「学校歯科健診における咬合異常に対する歯科矯正の適用拡大」を求める署名運動等が展開された。詳細はこれからだが、当事者の願いに応えうる内容になるか注視したい。

4.この間、金パラの価格高騰が歯科医療機関の経営を圧迫している。保団連の「金パラ逆ザヤシミュレータ」によれば、2月10日現在で購入価格平均(税込・30グラム)は、9月5万9276円、10月6万3987円、11月6万5633円、12月6万7900円、2020年1月には7万7535円、2月には8万1397円と、天井知らずである。
 2020年4月の材料価格改定での金パラ価格は、昨年9月の市場価格調査に12月までの価格変動を補正して決定される。価格決定の仕組みとして1月以降の価格変動は反映されない。このままでは2020年4月改定での「逆ザヤ」解消はのぞめない。金パラ「逆ザヤ」の即時解消に向けた緊急対応を求めるものである。

5.この間、全国の保険医協会・医会、保団連は、「歯科医療費の総枠拡大」を求めて取り組んできた。昨年6月の「保険でより良い歯科医療を求める歯科総決起集会」では、350名が参加、国会議員の約7割・504人に要請を行った。昨年取り組んだ「保険でより良い歯科医療を求める請願署名」は、約27万筆を集約、84人の国会議員が紹介議員となった。
 私たちはこれからも、患者さんに寄り添った歯科医療を継続・発展できるよう、歯科医療費の総枠拡大と診療報酬の改善に向けた取り組みを一回りも二回りも大きくしていく決意である。