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内閣総理大臣 菅  直人 様

厚生労働大臣 細川 律夫 様

文部科学大臣 木 義明 様

2011年4月19日

全国保険医団体連合会

会 長 住江 憲勇

 

被災者への医療提供を確保するため

医療機関の復旧・復興に向けた緊急要請

 

東日本大震災からの復旧・復興に対するご尽力に、感謝申し上げます。

さて、全国保険医団体連合会(住江憲勇会長 103,000人)では、東日本大震災に関して、これまで数次にわたって被災者医療・医療提供体制確保に関する要望を行ってきました。

一部負担金の免除対象者の拡大、定数超過入院・入院基本料施設基準等の特例、概算請求の対象範囲の一部拡大、チラージンSの緊急輸入など、要望の何点かは認められましたが、被災地域の住民の命と健康を守る医療機関の復旧・復興については、残念ながらほとんど手付かずです。

被災者に対する医療提供体制を確保することは、被災地域の復旧・復興のためにも喫緊の課題であり、これを実現するためには国庫補助金の投入や長期・無利子融資の実施、二重ローン・二重のリースの解消などが不可欠です。

ところが、医療機関の復旧・復興に向けて現在検討されている対策は、公的医療機関や救命・救急医療などへの部分的な補助に限られた阪神・淡路大震災時の施策をベースにすると報道されています。

しかし、地域医療は民間医療機関が担っています。被災者医療の確保は、被災地の民間医療機関の復旧・復興なくしてはありえません。

特に今回の震災や津波の被害は、医療過疎地域を襲っていますが、この間の公的医療機関の統廃合によって、へき地医療の多くを民間の医療機関が担っています。

さらに、福島県太平洋岸は、震災に加えて福島原発事故により、避難指示など大きな影響を受けています。

阪神・淡路大震災時の対策では、地域医療が崩壊してしまいます。

地域医療を守るため、民間医療機関の復旧・復興に向け、緊急に次の事項の実現を図っていただけますよう、強く要望いたします。

 

医療機関の復旧・復興に向けた緊急要請項目

 

1 医療施設等災害復旧費補助金及び医療施設近代化施設整備事業の対象について、災害救助法で指定された地域に所在する医療機関等で東日本大震災により被害を受けた病院、有床診療所、無床診療所、歯科診療所、訪問看護ステーション、保険調剤薬局などの医療機関等は、すべて政策医療を担うものとして、補助金の交付対象とすること。補助金の対象、経費の範囲、基準額、補助率を引き上げること。

すくなくとも、医療施設等災害復旧費補助金の対象施設の対象である「へき地診療所」の対象から設置主体要件を外して医科・歯科とも対象とし、護保険の「中山間地域等居住者サービス提供加算」の対象地域(豪雪地帯など)に拡大すること。また、産科医療や小児科医療については、地域や設置主体にかかわらず対象とすること。

2 独立行政法人福祉医療機構が実施する災害復旧のための「医療貸付事業」について、貸付限度額を大幅に引き上げるとともに融資利率を無利子とし、償還期間を10年以上とすること。

3 再建資金とは別に、つなぎ資金融資を無利子で緊急に行うこと。

4 被災を受けたため診療を休業せざるを得なかった医療機関について、診療を再開することを条件として休業補償を行うこと。

5 被災民間医療機関の解体・撤去に対し公的助成を行うこと。

6 政府は災害により住宅を失った被災者が、二重ローンに苦しまないよう、旧ローンの債務免除を促進することを検討しているが、これに加えて医療機関の医療機器等のローンやリース契約についても、二重ローン、二重のリース料の支払いに苦しまないよう、特別な手立てをとること。

7 激甚災害地で震災以降も懸命に医療を提供している医療機関であって、概算請求による請求をせざるを得ないが、患者増や時間外等の診療及び一部負担金等の猶予分が概算請求で定めた額を大きく上回ってしまうケースがあるが、こうした医療機関について特別な報酬を支給すること。

8 震災により医療機関が著しく減少した地域や仮設住宅の設置により人口が急激に増加した地域への仮設診療所の設置が予定されているが、設置箇所及び一定の診療科目(医科の診療科目や歯科)に対応できるようにすること。仮設診療所の設置にあたっては、本人の希望があれば、被災された医療機関の医師や歯科医師を雇用すること。なお、仮設診療所設置費用や設備整備費を公費で負担すること。

9 巡回歯科診療車両の配置について補助すること。

10 福島原発事故による被害について次の対策をとること。

(1)福島原発事故による避難指示地域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域に存在する医療機関については、当該指定が終了するまでの間、診療再開の有無に関わらず休業補償を行うこと。

(2)避難指示地域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域に存在する医療機関については、上記以外に、当該指定によって使用期限切れや放射能汚染により使用不可となった医薬品等の損害、建物、医療機器の損害・除染の費用負担、避難費用など、原子力災害による被害を全額保証すること。

(3)避難指示地域、計画的避難区域、緊急時非難準備区域の外側の地域に所在する医療機関についても、患者減少などによる収入減に対する補償を行うこと。

11 上記の扱いについて、介護サービス事業所についても同様の取扱いとすること。

 

以上