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社会保障費の削減が狙い−−「共通番号法案」
米・韓の動きなど紹介

(「全国保険医新聞」2012年6月5日号) 


  日本弁護士連合会(日弁連)が主催する「いまこそしっかり考えよう『共通番号法案』」の院内集会が5月22日開催され、全国保険医団体連合会の住江憲勇会長が出席して「社会保障個人会計による『負担に応じた給付』の危険性」について基調報告を行った。集会では26人の国会議員(代理出席を含む)が出席するなど50人を超える参加者が会場をうめた。

  政府が2月14日に法案として国会に提出した「マイナンバー法案」は、共通番号制度を法制度化するもので、プライバシー侵害や、社会保障費が削減されるなどの恐れがある。衆議院議員会館で開かれた院内集会で住江会長は「社会保障と税の『一体改革』は、国民側の自己責任を一方的に押し付けるもので、社会保障制度そのものの否定といわざるを得ない。長期疾病や難病患者、障がいを抱える人たちなどが負担に比べて給付が多いという理由で、社会保障制度から排除されかねない。本来社会保障は、基本的人権、生存権を保障する制度である。個人レベルの収支勘定をするものではない」と指摘し、「負担に応じた給付に抑えるためのマイナンバー法案であり、医療人として断固反対する」などと述べた。

  その他、プライバシー・アクション代表の白石孝氏が「成りすまし被害を中心とする韓国の最近の状況」、稲垣隆一弁護士(公認システム監査人)が「セキュリティーと安全保障問題」、水永誠二日弁連情報問題対策委員会副委員長が「共通番号法案の概要と問題点のまとめ」と題してそれぞれ基調報告をした。

  白石氏は韓国では、ここ4年弱で延べ1億1977人分の個人情報が流出している。最も大きな流出事件は、SKコミュニケーションズ会員3500万人分の個人情報が中国に流出した2011年8月の事件で、ID、パスワード、住民登録番号、氏名、生年月日、性別、電話番号、住所、電子メールアドレスが闇市場で売却され詐欺などに悪用された可能性が高いと報告。「米国でも韓国同様セキュリティーは不十分で、日本でも実施されればプライバシーは守れない」と述べた。

  また、白石氏は、「民主党は10年前、盗聴法や国民総背番号制に反対する政策を明示していたのに、どうして変わったのか説明してほしい」と述べた。
  稲垣氏は「マイナンバーは、サイバーテロの標的になる。サイバーテロは単なる思いつきや、遊びではなく、明確な目的をもってシステムに侵入してくるもので『戦争』と同じだ。脆弱なセキュリー対策ではなく、確実な対策の設計、実装、運用、保守の確保がなければ、実施すべきでない」と述べた。

以上