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受診控えるが半数近く…被災地の患者アンケートで


(「全国保険医新聞」2013年2月25日号)


 東日本大震災被災者の医療費の一部負担金について、国は全額補助を打ち切っている。岩手、宮城両県では、県・市町村の予算措置で免除を行ってきたが、4月以後も継続されるかは未定だ。岩手、宮城の両保険医協会が被災者を対象に実施した医療費負担に関するアンケートでは、免除の打ち切りで受診を控える傾向が顕著であることが明らかになった。国の責任で被災者の窓口負担免除措置を継続、復活させることが必要だ。

 「これまで通り通院したい」、「できる限り通院の回数を減らすので負担の免除を」、「津波で死ねばよかったと考えるときがある」。岩手、宮城の各協会がそれぞれ実施した医療費負担に関する患者アンケートには悲痛な声が多数寄せられた。

 岩手県内で通院している患者を対象とした「医療費負担にかかるアンケート」(昨年12月〜今年1月末、回答数2654件)では、4月から窓口負担が発生した場合、「通院の回数を減らす」、「通院できない」、「分からない」との回答が49・7%に上り、受診を控える傾向にあることが明らかになった。「収入がない」、「医療費が負担」が理由の上位を占めた。また、「これまで通り通院する」との回答は、前回(昨年5〜6月)の調査時と比べ、70・2%から50・3%に下落した。

 2月14日に行われた保団連とマスコミとの懇談会で結果を報告した岩手協会の小山田榮二副会長は、「復興が進まず、先行きの不安がさらに増大している。国の全面的な責任で免除を」と訴えた。
 
 宮城協会が実施した「一部負担金免除に関するアンケート」(昨年11月〜今年2月、回答数1905件)でも、昨年10月に窓口負担免除措置が終了した患者の約53%が「通院科目・回数を減らした」、「受診をやめた」などと回答。免除の継続、再開の希望は90%を超えた。懇談会で宮城協会の島和雄理事は、「健康問題にとどまらず命に関わる状況。すべての被災者に免除の継続・再開を全額国の負担で行うよう求める」と訴えた。

福島、「震災関連死」が4割
 懇談会では、福島県保険医協会の酒井学理事長と菅原浩哉事務局長が、「震災関連死」が増加していることを報告した。福島では避難の長期化による体調不良や過労、自殺などによる「震災関連死」が県内死者数の4割以上を占めている。菅原事務局長は、福島での「震災関連死」の割合が岩手・宮城と比べて突出して高く、早急な対策が必要だと強調した。

 東北6県の保険医協会でつくる東北保険医団体連絡会と保団連は2月14日、厚労省交渉を行い、安倍晋三首相と田村憲久厚労大臣に、窓口負担の免除措置の継続、再開などを求める要望を行った。