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シリーズ  STOP!! 医療・介護総合法案A 
安心の介護「受けられない」

(「全国保険医新聞」2014年4月5日号)


 医療・介護の総合的な確保を推進するとして、医療・介護総合法案が国会に提出された。団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、医療・介護への国・地方の出費を抑制・削減するのが狙いだ。第2回は、介護保険について見る。

特養入所は 要介護3以上
 国は、特別養護老人ホーム(特養)は「中重度の要介護者を支える」施設に重点化するとして、入所者を要介護3以上に限定するとしている(既入所者は除く)。要介護1・2の場合は、虐待や認知症等で常時の見守りが必要など「特養以外での生活が著しく困難な場合」に限り特別に認める方針である。
 特養の入居待ちは2009年の前回調査より10万人増え、全国で52・4万人。うち要介護1・2の方は18万人を占める。入所要件を要介護3以上に原則化すれば、大半は特養に入れなくなる。

訪問・通所介護保険給付外に
 要支援者の予防給付について、訪問・通所介護を保険サービスから、ボランティアなどを活用した市町村の独自事業に移していく(2017年4月までに移行)。
 2025年時点で年2000億円の費用削減を目指して、事業費の上限を、予防給付費の自然増の伸び率(5〜6%)よりも低い後期高齢者の伸び率(3〜4%)を目安として設定する。市町村が、これまで通りのサービスを維持しようとすれば、上限を超えて持ち出しとなる。サービス切り下げを織り込み済みの政策である。

市町村移行でサービスに格差
 市町村への移行により、全国統一のサービス内容、人員、単価等の基準もなくなる。事業者への報酬単価切り下げや利用料の1割以上への引き上げなどが可能となり、受けられるサービスに格差が生まれることが懸念されている。事業費に上限を設けて国の出費を抑え、自治体の責任で安上がりのサービスを担わせる狙いだ。
 現在、高齢者の3〜4人に1人が認知症・軽度認知障害と推計されている。市町村への移行に伴う支援の低下は、認知症の悪化や感情の不安定化を招き、かえって介護度を重度化させることになる(図)。認知症への早期対応を進める国の方針とも逆行する。少子高齢化が進む中、2008〜12年で48万人が介護を理由に仕事を辞めている。介護保険の改悪は、介護離職や家族の共倒れを増やす社会問題ともなる。

以上