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シリーズ  STOP! 医療・介護総合法案C 
介護は負担増のオンパレード

(「全国保険医新聞」2014年4月25日号)



 医療・介護総合法案は団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、医療・介護への国・地方の出費を抑制・削減するのが狙いだ。第4回は、介護保険利用料の負担増について見る。

低所得でも利用料負担2割に
 介護保険制度を財政上「持続」させるとして、これまで1割だった利用料負担を「一定以上の所得者」(所得160万円、単身の年金収入のみで280万円以上)については2割に引き上げる。65歳以上の人の2割が対象となり、うち介護保険利用者の1割(約40〜50万人)が負担増になると推測される。居宅サービスの利用者は負担が軒並み2倍になる。特養入所者は月7000円から1万5000円の負担増となり、全ての要介護区分で3万7200円の負担上限額に達する。
 単身年収280万円の場合、税・保険料の支払を除くと、使えるお金はひと月20万円を割り込む。重度の認知症やがんなどに罹患すれば薬代や通院費など出費はさらにかさむ。施設入所のための貯えなどを考えても、年収280万円以上で負担増は現実を無視したものだ。消費税が増税され、70歳以上の医療費窓口負担が2割となり、さらには年金削減、各種保険料の引き上げなども予定されている。ほぼ一生続く介護の負担増は、サービス利用の抑制のみならず生活崩壊につながりかねない。 

政令で引き下げが可能
 そもそも、被保険者に収入に応じた保険料負担を求めた上、サービスを利用する時にまで収入で差をつけることは、保険給付は平等・公平という原則に反する。高齢者の中に、医療は自己負担が1割なのに介護は2割という不条理な状況も生まれる。
 しかも、「一定以上の所得」の具体的な基準は政令で定めるとしており、法改正以降は、厚労大臣の判断で引き下げが可能となる。なし崩し的に引き下げられ、事実上2割負担となる事態が懸念される。
 高い利用料負担が続く場合に負担上限を設ける高額介護サービス費についても、現役並み所得(医療保険)383万円以上の場合、現行3万7200円から4万4000円に引き上げる。
 保険料の上昇を抑えるためなどと言うが、むしろ国の負担の低さに問題がある。介護保険の導入により、国の財政負担割合(利用料を除く)は50%から25%に半減される一方、国民は所得に応じた利用料負担(非課税世帯は無料)から、利用時の1割負担に加えて、残りの給付9割のうちの50%を保険料で支払う大幅負担増の仕組みとなっている。国庫負担の引き上げこそ必要だ。

預金あれば食費・居住費補助なし
 特養ホームなどに入居する低所得者(住民税非課税など)を対象とした食費・居住費の負担軽減(補足給付)について、支給要件に「配偶者の所得」、「資産」を加える。世帯分離していても配偶者が住民税課税の場合や預貯金などが単身1000万円、夫婦2000万円以上の場合などは軽減対象から外される。省令で基準を具体化する。対象外となれば、年27万円から81万円前後の負担増ともなる。
 さらに、「不動産」(宅地の評価額2000万円以上)がある場合も軽減対象から外すことや、宅地を担保に貸し付けを行い、利用者の死亡後に回収する仕組みの導入なども別途狙う。
 扶養義務の強化に加えて、施設に入りたければ、こつこつためてきた貯金も宅地も差し出せということである。孫子に残せる幾ばくかの財産があるなら、国が身ぐるみはいでしまうということである。

以上