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2015年通常国会に提出法案/メニューは負担増ばかり

(「全国保険医新聞」2014年10月15日号)


 政府は、社会保障・税一体改革路線に基づき「給付の効率化」や「療養の範囲の適正化」の名による給付抑制と負担増を計画している。目的は、団塊世代が75歳以上となる2025年に向けて医療費を抑制することである。2015年の予算編成に向けて議論が開始された経済財政諮問会議(議長:安倍晋三首相)では、民間議員から既に社会保障給付の徹底した効率化、重点化や、都道府県別の医療費支出抑制目標、医療費適正化計画の改定などを求める提言が出されている。2015年通常国会に法案提出される項目や、検討を進めている負担増メニューについて紹介する。

入院時の食費 2倍近くに
 厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会では、入院時食事療養費の自己負担について「在宅医療との公平を図る観点から、食材費と調理費相当分を含めて自己負担を引き上げる」とし、一般所得者の食費(1日当たり)780円を1380円へ倍近く引き上げる案を軸に検討されている。
 食事療養費Tは1日当たり1920円であり、患者負担が1380円に引き上がると71・8%の負担率となる。しかも、この患者負担は高額療養費の対象とはならない。1カ月入院した場合、入院時食事療養費の自己負担はこれまでの2万3400円から4万1400円(約1・8倍)に跳ね上がる。これは入院期間の短縮を促す狙いがあり、必要な入院医療を受けられない事態が生じかねない。
 日本栄養士会の小松龍史会長は、入院時食事療養費の自己負担を一律に増やすことは、安心安全な適切な医療を受ける立場から同意できないとし、在宅療養でも適切な栄養管理指導が受けられるようにすることこそ必要だと述べている。
 医療保険部会の議論でも入院中の食事は治療の一環であり、これ以上の自己負担は増やすべきでないとの意見が出されている。

3割負担に定額負担を上乗せ 大病院受診
 医療保険部会では、1〜3割の定率負担以外に、紹介状のない大病院への外来受診時に定額負担を徴収することを検討している。
 厚労省は「病院外来受診時の一定定額自己負担制度導入に関する調査研究」(厚生労働科学特別研究事業)を8月18日に公表した。それによると200床以上の病院を受診する場合の定額負担について5000円以上の負担額を設定すれば、軽症の場合は受診せず、重症の場合は受診すると考えられるとしている。このことから、定額負担の額は5000円以上となる可能性が高く、3割負担を大幅に超えることになる。これは、健保法附則第2条「将来にわたり7割給付を維持する」との規定に抵触する。
 また、財政制度等審議会では、受診時定額負担の導入を引き続き検討すべきとして、例えば外来受診時に定率負担とは別に1回100円などの定額負担を求めることが提案されている。

「保険外し」で医療費抑制
 財政制度等審議会や医療保険部会では、市販類似薬の保険外しの対象として「湿布」薬を名指しであげている。
 また、財政制度等審議会には「参照価格制度の導入」が盛り込まれた。「特許の切れた医薬品の薬価を後発医薬品に基づいて設定し、それを上回る部分は患者負担とする制度」で、1〜3割の定率負担とは別に差額を徴収するものである。
 さらに、一旦保険適用とされた医療技術等について費用対効果が低いものは、保険適用から外して保険外併用療養の一つである評価療養の対象とする「逆評価療養」の仕組みも提案されている。

高齢者狙い撃ち
 今年4月に70〜74歳の窓口負担の引き上げが実施(新たに70歳になる人から順次)されたたばかりだが、高齢者を狙い撃ちするかのような負担増計画が議論されている。
 医療保険部会では「高齢者の患者負担割合引上げ」を議論すべきとして、75歳以上の患者負担を原則1割から2割に引き上げることが検討されている。経済財政諮問会議でも高齢者の負担増が提案されている。
 また、70歳以上の高額療養費制度における外来特例(外来だけを受診した場合の負担上限)の廃止も検討されている。廃止されれば、一般所得者の場合、月額1万2000円の負担上限が4万4400円と4倍近い引き上げとなる。複数科に受診することの多い高齢者にとっては大幅負担増となり、受診抑制は一層深刻化しかねない。政府は外来受診を5%減少させる目標を掲げており、削減に向けた具体的な施策となり得る。
 国民皆保険を守り、充実させていくため、「STOP患者負担増」の取り組みを待合室や地域から広げていくことが喫緊の課題である。