いま、わたしたちの国では小泉内閣のもと、皆保険制度を空洞化させる医療「構造改革」の嵐が吹き荒れています。
 「痛みに耐えれば、明るい未来がやってくる」と言って、4年前に登場した小泉首相が掲げる構造改革の最大のターゲットの一つが、ほかでもない医療分野です。
 政府が企図する06年「医療改革」は、窓口負担増や保険料の引き上げの点でも、公的医療保険の守備範囲を限定していく点でも、かつてないものとなっています。
 今回の「医療改革」のねらいは、
 (1) 新たな高齢者医療制度の創設により患者・国民の負担を大幅に増やすこと
 (2) 医療保険を都道府県単位にして、国の責任を棚上げにすること
 (3)「保険証1枚」あればかかれる医療の範囲を狭め、保険がきかない医療を拡大させること
 (4) 医療分野に市場原理を導入し、医療を大企業の利潤追求の場にすること
の4つにまとめることができます。
 わたしたち保険医は、この動きが国民と医療従事者が築き上げてきた世界に冠たる国民皆保険制度を根底から崩していくものであり、今後の医療のあり方そのものを大きく左右する極めて重大な内容を含んでいると考えています。
 しかし、現在はその内容が、患者・国民のみなさんに十分知らされているという状況ではありません。このままでは、患者・国民のみなさんが知らない間に決まってしまうことになってしまうでしょう。
 わたしたち保険医は、地域医療の第一線で保険による診療に従事しています。日常接する患者・国民のみなさんの暮らしや仕事に則していのちと健康の問題に取り組み、医療保険でだれでも安心して診療を受けられる社会の実現をめざしています。
 このたび、今回の医療改革の全容を多くの患者・国民のみなさんに知っていただくとともに、これからの日本の医療のあり方をともに考えるための一助として本冊子を作成しました。
 ひとりでも多くの方々に一読いただきたいと願っています。




 戦後まもなく安心して医療を受けられる保障として、健康保険の普及と改善をめざす医師たちの自主的な活動が、各地ではじめられました。その後、国民皆保険が実現するなかで、保険医の切実な要求として、診療報酬の引き上げ、医業税制、不当な審査、指導などの改善がさけばれました。こうした保険医の要求を自らの運動によって実現しようと各県の医科、歯科の保険医が、自主的に集まり「保険医協会」「保険医会」を結成しました。
 各県につくられた保険医協会は、設立当初より「開業医師・歯科医師の生活と権利を守る」こととともに、「保険医療の充実・改善を通じて国民医療を守る」ことを目的に活動をすすめています。「保険医協会」とは、保険診療を扱う医師・歯科医師(=保険医)ということで、保険医協会と名前をつけました。
 その後、47都道府県すべてに保険医協会・保険医会が結成され、開業医師・歯科医師の経営、生活ならびに権利を守るとともに、国民医療の向上、医療保険の充実、国民の健康の確保をめざし、医師・歯科医師の団体として活動を続けてきました。
 この間、国民医療を守る立場から、医療・社会保障の充実をもとめる運動にとりくみ、構造改革の名のもとで医療・福祉の切り捨てに反対し、まだまだ先進諸国の中でも低い水準である医療・福祉の拡充を求めて運動をしています。






 保団連のフルネームは、「全国保険医団体連合会」といい、1969年に設立され、全国47都道府県の保険医協会・保険医会が加盟しています。今日では、医科、歯科ともに開業医の過半数を超える保険医が保険医協会・保険医会に加入し、10万人の会員を擁しています。