6章 この国のかたち 世界からみると












 先進5カ国の政府が、公共事業と社会保障に対して、どれだけ国庫支出しているかを、国内総生産(GDP)に占める割合で比較してみましょう。
 日本以外の4カ国が、平均で公共事業2.0%、社会保障7.7%であるのに対し、日本は公共事業6.0%、社会保障3.4%となっています。日本の公共事業は、4カ国平均の3倍、社会保障は2分の1という状態であることがわかります。公共事業が社会保障を上まわっている国は、日本以外にはありません。
 政府のとってきたこの間の政策が、諸外国と比べて異常なものといわざるを得ません。国の財政を国民の暮らし優先に転換し、公共事業も不要なダムや空港づくりから福祉や教育の施設整備や生活関連の土木事業など、国民生活基盤を重視する財政運営に転換する必要があります。また、経済波及効果や雇用効果を考えたとき、公共事業より社会保障の方が高いといわれています。
 本当に改革しなければならないことは、まさにこの逆立ちした財政支出の構造ではないでしょうか。








 サミット7カ国の公共事業費を比較してみると、日本の公共事業費は、サミット7カ国のうち残り6カ国の公共事業費を合算した総額よりも多くなっています。
 「日本は土地代が異常に高いので統計上高く出るのだろう」と思われる方もいると思いますが、国際比較するために今回利用した「一般政府固定資産形成」は、土地代と修繕代を除いたOECDの資料です。とくに、日本の25倍の国土面積、2倍の人口をもつアメリカと比べると、2.7倍であることは驚くばかりです。
 現在行われている公共事業のうち、国民生活に不要な部分を計画的に削減し、医療・年金・介護・福祉など社会保障を充実させる方向に、舵をきるかどうかが、21世紀の日本の分かれ道ではないでしょうか。