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共通番号制の問題点C…番号制度はプライバシーを侵害する


弁護士 坂本 団(さかもと まどか)
(「全国保険医新聞」2011年10月5日号より転載)


  番号制度は、さまざまな機関の保有するさまざまな個人情報を情報連携(データマッチング)することを目的としている(当初は社会保障、税分野での利用から開始し、将来的には他の分野にも拡大することを目指している)。これが完成すれば、国家による個人情報の一元管理体制にほかならない。
  また、「番号」で集積・集約された個人情報が外部に漏洩する危険性や、「番号」の不正利用により財産的損害等を受ける危険性もある。
  こうした恐れのあることは政府の「社会保障・税番号大綱」も認めていて、その対策についても論じている。が、いずれも実効性のあるものとはいえない。

  「大綱」が挙げているのは、1つは「第三者機関による監視」である。しかし肝心の第三者機関がどのようなものになるのか、いまだに決まっていない。従前は、省庁から独立した第三者機関(公正取引委員会のようなイメージ)とする方向で検討されていたが、「大綱」では、これが消え、どこかの省庁の一萩ヌに「格下げ」される恐れがでてきている。
  逆に、「番号」が犯則調査または犯罪の捜査等一定の事由を目的として保有されている場合には、第三者機関の調査権限が及ばないことは明記されており、第三者機関が「番号」の取り扱い全般について監視、監督するわけではない。
  また、「自己情報へのアクセス記録の確認」も上げられている。自分の情報へのアクセス記録を自分でパソコン等を通じて確認することによって不正使用等を発見できるようにする、というのである。しかし、そもそもパソコン等で確認できるアクセス記録は一部に過ぎない上、パソコン等を操作しない(できない)人はどうするのか。乳幼児や高齢者等も含め、自分でアクセス記録を確認しない(できない)者は、不正使用等されても、それは自己責任として甘受しなければならない、というのであろうか。
  「法令等の規制措置」や「罰則の強化」も挙げられているが、個人情報漏洩事案の多くは、不注意で発生している。規制や罰則では不注意による漏洩を防ぐことはできない。また、違法を承知であえて行う確信犯による不正使用も防ぐことはできない。

  さらに情報連携の仕組みとして「番号」を直接用いない方式が検討されている。オかし、いくら「番号」を直接用いない仕組みを作ったとしても、各機関は、共通の「番号」を保有し、その「番号」に個人情報をひも付けるのである。別の仕組みを作ったとしても、「番号」を使ってさまざまの機関の保有する個人情報を名寄せできることには違いがない。
  「大綱」の挙げる対策はいずれも不十分だ。番号制度によるプライバシー侵害を防ぐことはできない。