老人医療費5倍論は本当?

 「1人あたりの診療費が老人は一般の5倍」という数字が報道されています。この数字を根拠に、「老人は一般の5倍も医療費がかかるから、応分の負担をしてもらわなければならない」との意見があります。

 しかしこの数字は、(老人患者の医療費)÷(全老人人口)の数字と、(一般患者の医療費)÷(全若人の人口)を比較したものです。両者の分母を見てみると、(全老人人口)には多数の患者が含まれているのに対し、(全若人の人口)の中には多くの健康な人が含まれていることが分かります。つまり「老人医療費5倍論」は、多くの健康な人を含む若人と、老化により病気が避けられない高齢者を比較した暴論なのです。

 下右図のように厚生労働省の統計によれば、老人患者の1日あたり診療費は、一般患者の診療費とほとんど差がないのが事実なのです。