【政策解説】医療の安全揺るがす
―医療保険制度改革関連法案とはA患者申出療養―
(全国保険医新聞2015年3月25日号より)
政府は医療保険制度改革関連法案を国会に提出した。複数の重要法案が一括で審議される。内容を解説する。今回は、新たな混合診療制度「患者申出療養(仮称)」について。
混合診療は原則禁止されている
日本では混合診療は原 則禁止されている。その理由は、@本来は保険診療で必要な医療が提供されるべきであるのに、患者に対して保険外の負担を求めることが解禁されれば、患者の負担が不当に拡大するおそれがある、A安全性、有効性などが確認されていない医療が保険診療とあわせて実施されてしまうと安全性が担保できなくなり、医学的根拠のない医療の実施を助長するおそれがあるという2点にある。混合診療の原則禁止を前提に、例外的に厚労大臣が認めているのが保険外併用療養の制度における「先進医療」や差額ベッドなどだ。法案では、保険外併用療養のなかに、「患者申出療養(仮称)」を創設し、16年度から実施しようとしている。詳細については今後、中医協で議論し、決定する。規制改革会議が提案した「選択療養制度(仮称)」から、患者申出療養(仮称)へ変わるなかで、当初案と比べれば一定の規制はかけられた。しかし、この提案が現在の保険外併用療養の仕組みとは別枠に位置付けられることで、事実上、混合診療を新たに拡大することになる。
審査期間が大幅短縮
先進医療と同等の有効性と安全性を確保するとしているが、先進医療の対象から外れた患者や、先進医療で実施されていない治療法や未承認薬も対象とされている。
前例がある治療の場合はたった2週間で承認。前例がない治療の場合でも申請から結論まで2週間で判断する。現在、先進医療は原則6カ月かけて審査しており、安全性と有効性の審査がごく短期間で実施されることになる(図1)。想定外の事故や健康被害が起きることが懸念される。
健康被害は患者の自己責任
患者申出療養(仮称)は、保険外の治療法や未承認薬であるため全額自己負担だ。しかも健康被害があっても患者の自己責任になる。
安全性・有効性が未確立なまま実施されている 自由診療や臨床研究にまで、保険外併用療養の範囲を広げ、医療保険の財源が流用される危険性を抱えている。
図1 患者申出療養(仮称)のしくみ
図 先進医療の実績(2011年と14年の6月30日現在)
以上