【政策解説】医療費抑制と保険料値上げ
―医療保険制度改革関連法案とはC国保広域化―
(全国保険医新聞2015年4月15日号より)
政府は社会保障・税「一体改革」の中に国保の「都道府県化」を位置づけている。都道府県は国保運営の権限を持ち、地域医療構想での病床削減など提供体制再編に責任を負う。医療費適正化計画では「医療費の費用の目標」を立て各保険者に協力を求める。都道府県を推進役にして医療費抑制を進める仕組みづくりが狙われている。
保険料率算出に 一般会計繰入 見込まず
法案では、「都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険」として、2018年度から都道府県と市町村が共同で保険者になる形である。
都道府県は国保運営方針を決定し、保険給付費の支払いなどの財政運営に責任を負う。都道府県単位で医療費全体を管理したうえで、それに見合う「納付金」の額を決定し、各市町村に割り当てる。市町村ごとの「標準保険料率」も示す。さらに、「市町村が行った保険給付の点検、事後調整」を行うと同時に、不当な給付があった場合、市町村に対して、保険給付の取消勧告も可能となる。
各市町村は、標準保険料率(保険料の「標準的」な算定方式や収納率に基づいて計算。一般会計法定外繰入は見込まず)を参考にしながら、納付金を納めるのに必要な保険料率を決め、保険料を徴収する。
医療費抑制へ新たな仕組み
法案では、各市町村の医療費水準(年齢構成の違いの調整後)が高いほど、都道府県に納める納付金の負担は大きくなる仕組みを導入する。さらに、65〜74歳の加入者の医療費抑制、後発品の使用割合を高める―などに取り組んだ自治体に対する財政支援として、「保険者努力支援制度」(700〜800億円の規模)も創設する。医療費抑制の新たな仕組みをつくることが狙いである。
国の財政調整交付金による「子どもの被保険者数」「精神疾患」など「自治体の責めによらない要因」に対する財政支援(700〜800億円の規模)も盛り込まれた。ところが、市町村が独自に子どもの医療費助成を行った場合、国庫負担を減額するペナルティがあるが、この仕組みは変更していない。ペナルティそのものを解消すべきだ。
払える保険料、 安心の国保こそ
政府は、全国知事会の要求に押されて、各市町村の一般会計繰入の総額約3,500億円(12年度約3,900億円)を解消するとして、2017年度以降3,400億円の公費を投入する。医療給付費等の定率国庫負担(41%)を引き上げないことや、「低所得者数」や「子どもの被保険者数」などに応じた支援なので、自治体によって財政効果はまちまちである。今後、公費投入や標準保険料率をもとに市町村の一般会計繰入を廃止させる指導がおこなわれ、保険料の値上げや徴収強化がいっそう強まることが懸念される。
保険者規模を大きくしても、国保の年間収支との間には相関関係はなく、政令市・中核市、県庁所在地などの大規模な自治体ほど国保会計は厳しいのが実態である。住 民や国保の加入者にとっては、身近で顔が見えて、払える保険料で、安心して使える国保であることが重要である。
以上