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医療事故調査制度のポイント @「医療事故」
―管理者が判断、罰則等はなし―

(全国保険医新聞2015年7月5日号より)

 

 10月から実施の医療事故調査制度について、ポイントを解説する。今回は「医療事故」の定義について。

 「医療事故」が発生したら、医療機関の管理者は第三者機関「医療事故調査・支援センター」に報告することになる。報告が必要な「医療事故」の定義は、医療法で、「医療に起因し又は起因すると疑われる死亡又は死産」であって、「管理者が予期しなかったものとして省令で定めるもの」とされている。@「医療に起因(疑い含む)」かつA「管理者が予期しなかった」を満たす死亡・死産のみが報告の対象となる。「医療事故」かどうかの判断は、管理者に委ねられる。管理者が「医療事故ではない」と判断して、第三者機関に報告しなかったとしても罰則等の制裁はない。また、遺族など管理者以外の者が「医療事故」として報告する仕組みにはなっていない。

■医療に起因

 厚労省の通知では、医療に含まれない単なる「管理」は制度の対象としないことが明記された。制度の対象とされないものの具体例として、▽施設管理に関連するもの(火災等、地震・落雷等の天災など)▽併発症▽原病の進行▽自殺▽院内で発生した殺人、傷害致死等など―が示されている。

■管理者が予期しなかった

 省令は、管理者が次のア〜ウのいずれにも該当しないと認めていた場合に限り、「死亡・死産を予期していなかった」ものとするとしている。
 すなわち、(ア)医療提供前に、従事者等が死亡・死産が予期されることを説明していた、(イ)医療提供前に、従事者等が、死亡・死産が予期されていることを、カルテ等に記録していた、(ウ)管理者が、従事者からの事情聴取や、医療安全管理委員会等から意見聴取を行い、医療提供前に、従事者等により死亡・死産が予期されていると認めた、の三つ。逆に言えば、医療提供前の「患者への説明」「カルテ等への記録」または「従事者との情報共有」のいずれかがあったと管理者が認めていた場合は、「医療事故」には当たらないことになる。

■センター、支援団体の相談体制

 法律、通知等で判断基準が示されているものの、現実に発生する事案が「医療事故」に該当するかの判断は困難なことが予想される。そのため、センターや医療事故調査支援団体が医療機関からの相談に応じられる体制を設けることとしている。

以上