病床20万超の削減
―2025年に向け政府調査会報告書―
(全国保険医新聞2015年7月5日号より)
6月15日、政府の社会保障制度改革推進本部(本部長・安倍首相)の専門調査会は、「医療機能別病床数の推計及び地域医療構想の策定に当たって」とする「第1次報告」を取りまとめた。2025年に向けて病床を現在の約135万床から115〜119万床へ削減すべきとしている。
25年に必要な病床数を盛り込む地域医療構想(構想)を策定する都道府県に対し、推計結果を反映するよう迫るものだ。
最大37万床を抑制・削減
「第1次報告」は、都道府県での構想策定の指針である「地域医療構想策定ガイドライン」等に基づき、2025年に必要とする病床数を都道府県毎に推計して、全国集計したものだ。
現在、全国の一般・療養病床134.7万床を、25年までに15〜20万床削減して115〜119万床を目指すべきとしている。他方、現状のままでは高齢化で152万床が必要と見込んでおり、約37万床と大幅な削減・抑制となる。病床削減に伴う約29.7〜33.7万人は在宅医療等で追加的に対応するとした。
推計方法は異なるが、政府が11年に示した「長期推計」では25年に130万床前後目指すとしており、報告書はさらに削減を求める形だ。
道府県で削減、41%超削減も
回復期を除き、高度急性期、急性期、慢性期は全て現状より削減して病床を縮小して再編される形となる。
地域ごとでは、2次医療圏間での患者移動の有無の仮定と療養病床の入院受療率(※)の低下目標(3パターン)を組み合わせて、6通りの推計結果を示した。いずれの場合も、埼玉、千葉、東京都、神奈川、大阪、沖縄の6都府県のみが増床(13年対比)、他の41道府県では減床となる。富山、島根、高知、熊本など8、9県では30%以上の減床(同上)となる。
厚労省は都道府県別に対して、報告書が示した都道府県別の推計値は、ガイドラインが示す計算方法に、「一定の仮定」を置いて機械的に計算した「参考値」にすぎないとしている。しかし、報告書は、ガイドラインの核となる計算式を基に計算しており、全国で概ね115〜119万床の水準へ削減する方向に変わりないと思われる。
※調査日における人口10万人に対する推計患者数
地域の実情を否定
報告書は、各都道府県が、ガイドライン等に沿って病床を推計する際に、「地域の実情」を考慮する場合でも、人口構造の違いなど「客観的に説明可能なものの範囲」に留めるべきとしている。さらに、「解消しきれない地域差」についても都道府県に「その要因等の公表も含め、説明責任を求め、さらなる是正の余地がないか、チェック・検討できるような枠組みを構築すること」が重要と述べ、極力、地域差を制限・否定するよう求めている。
しかし、風土・文化、価値観から、気候、疾病・産業構造に至るまで多数の実情が複雑に絡み合う中、都道府県にその抽出・説明を求め、変更を強いることは不可能に近く、病床削減ありきの理屈というべきである。
診療報酬で削減推進
18年の医療・介護の同時改定も視野に、病床再編に向けて議論が進められている。
7対1看護病床は4月時点で15年改定時より1.7万床減少したが、急性期病床のさらなる削減に向けて、平均在院日数要件の短縮などが中医協で議論されている。
療養病床については、ガイドラインでは医療区分1の患者数の70%を在宅等で対応(病床削減)するとしており、16年改定で医療区分1の報酬が大幅に下げられる可能性がある。
同様に、在宅移行を進めるとして、療養病棟入院基本料2の対象病床については施設基準・報酬の組み合わせを「老人保健施設などと整合的なもの」にして、医療密度を下げ費用を削減するよう財務省は求めている(財政制度等審議会「建議」、6月1日)。
地域で医療・介護従事者が不足する中、コミュニティの崩壊、認認介護・老老介護の増加など、在宅移行は困難を極めている。病床削減目標ではなく、入院、外来・在宅も安心して受けられる整備目標とその手当が求められる。
以上