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マイナンバー制度、医療情報も紐付け
―10月施行前から利用範囲拡大

(全国保険医新聞2015年9月5日号より)

 

未施行の法案を改定

 日本年金機構の個人情報流出問題で審議がストップしていたマイナンバー法の改定法案が、開会中の本国会で成立する見通しだ。保団連は改定法案の廃案と、マイナンバー制度の施行中止を求めている。
 マイナンバー法ではマイナンバーの利用範囲を、「社会保障」「税」「災害対策」の3分野での手続に限定している。改定法案はこれらに加えて、医療情報である特定健診情報や予防接種履歴などの情報管理等にマイナンバーを利用できるようにする。
 「改定」とはいうものの、マイナンバー法自体の施行は、一部を除き今年10月5日から。未施行の法律の「改定」は異常な事態だ。利用範囲拡大等の措置は「施行後3年を目途に」施行状況等を勘案して検討を加えると定める、マイナンバー法にも反する。
 利用範囲の拡大は今回の改定法だけでは止まらない。安倍内閣の「日本再興戦略改訂2015」(成長戦略)では、マイナンバー制度のインフラを利用して、健康・医療・介護分野の個人情報をデータ化し、民間利用を推進する方針を打ち出した。2018年度から導入する「医療等分野」における番号制度にマイナンバーを紐付けて「患者の医療情報」を一元的に集約する。「医療の標準化」や医療・介護の給付費抑制に利用したり、民間に提供することを目指している。
 政府の方針を実現するためにマイナンバー制度のインフラ整備は不可欠となる。成長戦略には、個人番号カードと健康保険証機能を持たせることを盛り込み、「個人番号カード」の普及を一気に進めようとしている。

制度「知らない」50%超

 しかし、マイナンバー制度に対する国民の理解は進んでいない。
 読売新聞が8月に実施した世論調査では、「制度を知らない」「名称は知っているが内容を知らない」が合わせて52%。「政府は国民に十分に説明していない」との回答が96%にも上った。
 社会保険や年金などの手続にマイナンバーを取り扱うことになる事業者が、一方的に準備を強いられている状況だ。
 利用範囲拡大は止めるとともに、そもそも1月施行を中止すべきである。

以上