療養病床の整理・削減に向けて
―3局検討会で議論開始―
(全国保険医新聞2015年9月25日号より)
政府は、療養病床患者数の地域差を解消するとして病床削減を進める構えだ。6月には、政府の専門調査会は2025年に必要な慢性期の病床数は24.2万〜28.5万床程度と発表した。現在34万床の療養病床(医療27.7万、介護6.3万)で比べれば、今後10年で7〜10万床の削減が必要となる。政府の方針を受けて、16年診療報酬改定、18年の医療介護同時改定などに向けて、療養病床の整理・削減に向けた動きが進められている。
抜本的な整理・削減策に着手―省検討会
地域医療構想策定ガイドラインでは、療養病床について、医療区分1の患者の70%は在宅移行、入院患者数の地域差解消を進め、患者数の減少を目指すとしている。18年3月末には、介護療養病床は法律上の廃止期限を迎えるとともに、療養病床(医療・介護)は25対1の経過措置が切れ20対1への移行を迫られる。
こうした中、同時改定も見据えて、厚労省は、7月10日、保険、医政、老健局による第1回の「療養病床のあり方等に関する検討会」を開催した。在宅移行を見据えて、療養病床の再編・削減に向けた政策の整理等を進め、年内を目途に報告書を取りまとめる。
重症者に絞り込み―16年改定
中医協では、医療療養病床は、重症者割合を高める方向で議論が進められている。現在、入院基本料1(看護配置20対1)は医療区分2・3の患者が8割以上とされるが、入院基本料2(同25対1)についても重症度が高い医療区分2または3の患者割合を導入する案が示されている。また、うつ状態、頻回の血糖検査、酸素療法において看護師の定時観察で対応可能とされる者は施設・在宅での対応を促す。報酬減の議論などを含め、省検討会の動向も見つつ、療養病床の抜本的な整理・削減に向けて後押しする改定になりそうだ。
削減病床を病院内施設に
現在、介護療養病床では、転換先とされる老健施設等への移行は進んでいない。こうした中、日本慢性期医療協会は、7月16日の記者会見で、介護療養や医療養25対1等の受け皿として、新しい病院内施設(SNW:Skilled Nursing Ward)を18年の同時改定で導入してはどうかと提案している(表)。
SNW(案)は、病院内にのみ設置し、特定行為の研修を受けた看護師を施設長とする看護職員40対1以上、介護職員30対1以上で、医師の配置は求めない。主な施設基準は療養病床と概ね同様である。介護保険施設とするか、住宅扱いで医療・介護外付けかは状況に応じてとする。
別途サ高住等の建設費用がいらず、病床削減等で空いたベッドの有効活用としている。医師配置もなく、主な人件費は療養病床の半分程度で、病床の1日単価が1.1万円と概ね介護療養病床より2割減で老健施設と同水準と試算する。
表 病院、介護施設、SNW(案)の主な人員・施設基準
医師なし、看護職半減も
SNWの配置基準は、介護療養病床に対して、介護職員は同じだが、医師はなく、看護職員は本則20対1より半減する。医師の配置は求めないが、病院内の医師による患者の急変対応等が想定されている。
現在、療養病床の患者は、要介護4・5は介護療養で約85%、医療療養で42%弱、認知症は同78.6%、同56.9%と高い比率を占め、重度者が多くなっている。今後、認知症が急増し要介護度の重度化も進む中、介護療養病床を基準緩和したSNWにおいて、医療・介護の質や安全性の担保が図られるか懸念される。
政府内で検討か
「骨太方針2015」の具体化を進める政府の経済・財政一体改革推進委員会の委員でもある松田晋哉産業医科大学教授は、政府の専門調査会で「看護師が裁量権を持って管理する療養病床やナーシングホームのようなものを制度化していくべき」と述べている。検討会の開催に際して、二川一男医政局長も「従来の病床施設の類型にとらわれない対応も検討していくことが必要」と述べており、SNWなど含めて検討が進むことも予想される。共働きや少子化、独居が進む一方、24時間対応型介護サービスの圧倒的不足、低い区分支給限度額など在宅介護の充実には程遠い状況にある。療養病床の削減や施設化でなく、人員基準等の整備拡充に向けた議論こそが求められる。
以上