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マイナス改定の認識色濃く
―16年改定方針の審議開始―

(全国保険医新聞2015年10月15日号より)

 

 厚労省の社会保障審議会は9月11日に医療保険部会、同16日に医療部会を開催した。「次期診療報酬改定の基本方針の検討について」が示され、2016年改定の基本方針をめぐる議論を開始した。11月下旬から12月初旬の方針策定を目指す。これまでの基本方針は、改定について、基本的考え方における「基本認識」等に続き、基本方針における「重点課題」「改定の視点」などを示した上で検討の方向を示している。

マイナス改定を示唆

 基本認識で検討すべき点として、▽地域包括ケアシステムと効率的で質の高い医療提供体制の構築に加え、▽超高齢社会における医療政策の基本方向として、「骨太の方針2015」と重なる検討項目も多い「保健医療2035」や、保険収載や保険償還価格の判断に係る「費用対効果の考慮」などを例示している。
 また、▽経済と財政の調和として、社会保障費削減を掲げる「骨太の方針2015」や「日本再興戦略2015」などをあげており、マイナス改定の認識が色濃い提案である。
 費用対効果について中医協では、16年改定より既収載の医薬品や医療機器の一部を対象に試行的導入を目指している。これまでの有効性・安全性が担保された医療技術等は保険収載する基本原則に、コストパフォーマンスによる選別が加味される形となる。今後、保険適用・給付範囲が大きく制限される事態も懸念される。

受診面からも効率化

 改定の視点は、これまでの4つの視点を基本的には継承しつつ、▽地域包括ケアシステムを推進する視点が初めて明記された。多職種連携の強化や質の高い在宅医療・訪問看護の確保などがあげられている。▽患者にとって安心・安全で納得できる効率的で質が高い医療を実現する視点では、新たに「効率的」と追記し、「かかりつけ医の評価、かかりつけ歯科医の評価、かかりつけ薬剤師・薬局の評価」など患者の受診面からも費用の適正化を進める意図が示された。

門前薬局は見直し

▽重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点では、がん、認知症、地域移行等を含めた質の高い精神医療の評価など7点に加え、対象疾病が6倍近くに拡大した「難病患者への適切な医療の評価」があげられた。
▽効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点では、この間大きな焦点となっている「残薬や多剤・重複投薬を減らすための取組の推進」、「門前薬局の評価の見直し」などが示され、調剤中心から服薬管理、24時間対応等のかかりつけ機能を評価する方向を示した。
 改定の視点について、委員からは「少子化対策」や「調剤医療費」にも言及すべきなどの声が出ている。

以上