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残薬解消、後発品促進へ
―医科外来2016年度診療報酬改定―

(全国保険医新聞2015年10月25日号より)

 

 2016年診療報酬改定に向けて、外来・調剤では、医師と薬剤師・薬局が連携して、▽かかりつけ機能の推進、▽残薬や多剤・重複投薬の削減、▽後発医薬品の使用促進などを進め、医療費を適正化(削減)することが検討されている。医科外来における投薬を中心に焦点を述べる。

厚労省の薬局調査では残薬がある患者がいた薬局は約9割。患者調査では医薬品が「大量に余ったことがある」が4.7%、「余ったことがある」が50.9%である(中医協、7月22日)。
頓服薬の余りや体調不良等で予約受診できないなど少し大目に薬を持っていることは日常あることからも、大量に余る約5%の患者が焦点になりそうだ。
残薬の理由では、両調査ともに「飲み忘れ」「自己判断等で中止」「処方日数と受診間隔が合わなかった」が3〜6割と多く、多剤処方や量の多さが2〜3割程度、重複投薬が数%から1割超となっている。自己判断等での中止は、症状のぶり返しや薬剤耐性の発生になりかねず、丁寧な服薬指導が求められる。
薬局での残薬削減のための取り組みでは、一包化や服薬カレンダー等を用いて服用しやすいよう整理することや、処方医へ連絡し服薬回数を減らすなどが50%超と圧倒的に多く(同上)、認知症、要介護者や独居等高齢患者の状況に応じさまざまな対応がされている。残薬解消に向けて、長期処方、服薬指導のあり方から、個々の患者に応じたさまざまな取り組みが要請されそうだ。

長期処方と患者の健康確保

 現在、一部の新薬等を除き、投薬日数制限はされていない。政府の「規制改革実施計画」では、新薬についても制限を緩める方向で検討し結論を得るよう求めている。
 高脂血症・糖尿病等の慢性疾患の投薬日数(院外処方)は、病床規模に比例して長くなる傾向がある。無床診療所で4週前後、500床以上で7週前後となっており、大病院での慢性疾患等の長期処方等のあり方が議論されている(中医協、7月22日)。
 5週以上の処方により「患者の容態の変化に気づくのが遅れたこと」がある医師が2割近く、急性増悪し重篤化したケースもあると日医調査(10年12月)では指摘している。大量の残薬発生との関係の精査とともに、患者の健康確保の観点からも、歯止めのない長期処方については再考が必要である。
 また、「計画」では、医師の再診を受けずに一定期間内に繰り返し使えるリフィル処方箋の導入についても年度内の検討・結論を求めている。リフィル処方箋を使うと、患者は2回目以降の処方では薬局で体調確認等を行い、症状・副作用等問題なしとなれば調剤となる。「薬剤師が体調まで診ることになる。かかりつけ医のど真ん中の役割」として日医は強く反対しているが、引き続き議論される予定だ。

後発品の品質保証など重要

 後発医薬品の数量シェアは年平均49%(13年10月〜14年9月)のところ、「骨太の方針2015」は、17年半ばに70%以上、18年度から20年度末までのなるべく早い時期に80%以上にするとし、診療報酬等の追加措置を講じるとしている。
 外来では、処方箋の「変更不可」や後発品銘柄指定における理由記載の義務・原則化などが検討されそうだ。
 また、3月末より厚労省は、生活保護(医療扶助)について、院内処方の後発品の使用割合が75%未満(数量ベース)の医療機関に講習会・文書等での一般指導を、特に低率の医療機関には個別訪問するよう自治体に求めている。数量目標の引き上げにも関わり動向が注視される。
 14年改定に関する調査では、後発品で処方された医薬品のうち処方箋での「変更不可」(銘柄指定)のチェックが前年度22.8%から44.8%に倍増している。理由として「特定の銘柄以外の後発医薬品の品質(効果や副作用を含む)に疑問がある」(診療所医師22.3%、病院医師18.6%)や「患者の希望」(同上17.8%、同上20.9%)が多い。「患者の体調を診て処方するのは医師。責任を持って後発品の銘柄を指定している」との指摘にもあるように、目標達成ありきの要件厳格化は医師の処方権侵害や患者の健康確保にも関わりかねず問題である。
 後発品の品質・安全性の確保をさらに進めるとともに、品質保証の周知徹底、メーカー・卸による情報提供体制、安定供給体制の確保などに努めていくことこそが求められる。

2016年度医科改定に向けた主な検討課題

以上