TPPここが問題―薬の知財保護を強化(全国保険医新聞2015年10月25日号より)
TPP交渉は10月5日、交渉参加12カ国による閣僚会合で「大筋合意」に達したが最終合意には至っていない。TPP交渉の協定文書は21分野31章で構成されている。医療分野に大きな影響を及ぼすのが、第8分野「知的財産」、第10分野「越境サービス(国境を越えるサービスの貿易)」、第12分野「金融サービス」、第15分野「投資」、第18分野「法的制度的事項」などである。TPP政府対策本部は5日、「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」を公表した。現時点で明らかになった医療分野への影響について解説した。
特許期間を延長 新薬の開発は、新薬の元になる有効物質の特許の出願を特許当局に行った後に、新薬の開発及び臨床試験を経て、医薬品規制当局(日本の場合は、厚労省「医薬・生活衛生局」)に市販承認申請を行う。当局の審査を経て市販承認されるまで、5年から15年の期間を要するとされている。 データ保護期間は8年 米国は、バイオ医薬品を開発した製薬企業の独占的販売を保障するため、臨床試験データ保護期間を12年とするようTPP交渉の最終段階まで主張していたが、8年とすることで「大筋合意」したと報じられている(図2)。 特許リンケージを導入 特許リンケージとは、ジェネリック薬企業から製造承認の申請があると、政府の医薬品規制当局が、当該医薬品にかかる特許権者(新薬を開発した製薬企業)に通知を行い、特許権を侵害していないか確認することを義務付ける制度である(図3)。 政府は守秘義務を理由にして、全くといっていいほど情報を提供してこなかった。ただちに「大筋合意」の詳細を国民に公表し、議論を尽くす必要がある。 以上 |